自らの短所を知った高坂瑞穂の行動
俺は忘れていた。イヤ、目を背けていただけかも知れない。
高坂瑞穂は思いついたら即行動で、自分の本能に忠実だってことを。
「…真田。私を思う存分罵ってくれ!お前の好きなだけ罵倒してくれ!!」
平和な昼休みの教室が凍りつく。
高坂に一歩遅れて俺達の教室に入ってきた中島さんが緊張を壊した。
「ちょっと瑞穂!真田くんにそのまま伝えたら絶対誤解するから……って…手遅れみたいね。」
「瑞穂!自分が言ってることわかってるの?あんたいつからそんな淫らなプレイに…。」
京子が高坂を追い出そうとする。
京子に限らず、他の女が自分の彼氏にこんなことを言ったら恐らく同じ行動を取るだろう。
「邪魔をするな京子!三好先生は私に弱点を示してくれたのだ。
これにより私は更なる高みを目指す!」
「ごめんなさい内藤さん、これには理由があって…。落ち着いて、瑞穂!もう、サッカーのことになると見境無くなるんだから。」
「お願い中島さん、わかるように説明して。」
ことの発端は、男子サッカー部の連中で先日
「高坂さんは貧乳コンプレックスだ。」
って話で盛り上がってたことを伊東の奴が妹にして女子サッカー部の茉奈ちゃんに話したことが原因だ。
茉奈ちゃんは高坂と中盤でコンビを組む中だ。
それを聞いた高坂は
「どんな形にせよ、武田にあっさりボールを奪われたのは間違いない」
とひどく落ち込み、三好先生に相談に行ったそうだ。
先生は
「暴言や悪口だってラフプレーの延長よ。
試合で相手だけが悪いなんていつも通用するとは限らないわ。
それが嫌なら訓練して克服するしかないわ。」
と厳しく突き返されたそうだ。
「確かに私は足を掛けられたりの肉体的なラフプレーには慣れてるが、言葉のやりとりは…。」
呆れた顔で京子が言う。
「全く三好先生ったら!そんなこと言ったら瑞穂がこういう行動に出るのわかってるじゃない?」
「俺がPKで勝てたのも心理的に追い詰めたからだもんな。『言葉のラフプレーに弱い』を克服したいわけだな?
よし、俺が相手…。」
「駄目よ、まー君のバカ!私がそんなの認めるわけないでしょ!まー君が他の女の身体を言葉責めするなんて絶対に嫌!!武田くんの得意分野でしょ!」
「あたしだってダーリンにそんなのさせたくないわよ!」
今度は中島さんが嫌がる。
「適任者が居るわ、あの女なら…。」
と京子が笑った。