天才・高坂瑞穂の弱点を探せ。
女子サッカー部設立は男子サッカー部にも影響をおよぼした。
可愛い女子部員達と別々になったのは勿論、高坂瑞穂が毎日指導に来なくなった。
そればかりか、ひとつのサッカーコートを女子と分け合う為に、水曜日は女子が、木曜日は男子がフィールド外でのフィジカルトレーニング専門の日となった。
そしてそのフィジカルトレーニングをコーチするのは女子サッカー部の顧問・三好先生だ。
それは男子サッカー部にとって地獄の木曜日となった。
「はぁ、はぁ、陸上部より走ってるんじゃね?」
「サッカーでこんな上半身鍛えるかよ!?」
容赦ない三好先生の特訓に悲鳴が上がる。
特にテクニックはあっても身体の線が細い一年生の小菅には相当ハードだった。
「3、2、1 はい、真田くん、榎田くん(他の部員の前では勿論『徹』と呼ばない)小菅くんタイムアウト~。
クリア出来なかったから全員で階段ダッシュね。」
「またかよ小菅~。お前いい加減にしろよ~。」
「すみません先輩…。」
「気にするな小菅、お前の骨格は成長途中なんだ。辛いのは今だけだ。これを耐えてこそエースだろ!」
「…真田先輩。」
「俺達キーパーは足が遅いのは普通だが、お前が早くなった分チームは強くなる。」
「…榎田先輩。」
「ハイ、お疲れさま~。今日はここまでよ。男が情けない声出さないの。
女子だって毎週頑張ってるのよ。」
「高坂ちゃんは先生と交代でコーチしてるから、フィジカルトレーニングしないんじゃないですか?」
質問が飛ぶ。
「私が女子を見てる時は男子のコーチをしてるから…。けど、彼女は自主トレを怠らないわ。」
「高坂先輩は基礎を疎かにする人じゃありません。プレーを見たらわかります。」
息を切らしながら小菅が言う。
確かにダッシュも早いし、スタミナもあるし、150センチ丁度しかない身長を補うジャンプ力や、細い身体を補う体幹の強さや柔軟性がある。
テクニックのみの天才ではないようだ。
練習後の議論は高坂の弱点について、になった。
必ずしもハイボールやパワープレイに弱いわけではない高坂の弱点は?
主将の武田が言った。
「俺、高坂ちゃんがフェイントかけてきた時に、『おおっ、胸は全然揺れてない!』って言ったら恥ずかしがっててボール奪えたぞ?」
うん、どうやら貧乳コンプレックスらしい(笑)。でも女子同士の試合なら意味ないから無敵だし。