テッペキ!12 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「伊東、島津、わかってるな。」

悟られないように指示を出す。
高坂が攻撃に加わるだけで状況は一変する。

小管から蹴られたボールは真っ直ぐに高坂を狙ってた。
「お見通しだよ。」
伊東と島津が二人がかりで高坂をマークする。
唯一の経験者の高坂に小管が合わせて来るのは予想通りだった。

しかし、ボールは急に失速し、高坂まで届かない。
そこにはまたしても中島恵がいた。
「ウソ?またあたし?」
だがディフェンスにはまだ俺が居る。
飛び出し、手を伸ばして余裕でキャッチする俺。
「手を使うなんてズル~い!」

「それがキーパーだよ。残念だったな。」
完全にボールをキャッチしたはずだが
「中島!飛び込め!」
と高坂の声に反応し、ヘディングをする中島。
しかし、大きく「空振り」し、ボールではなく俺の顔面に直撃した。
「痛!そんなのありかよ。」

堪らずボールをこぼし、すぐさまそれを拾いに行く。
伊東のマークを振り切り、島津のクリアより早く高坂がボールに触れる。
しかし、高坂はゴールに背を向け、シュートではなくパスをした。
そこに走り込んだのはキッカーの小管だった。
身体を投げたすようにスライディングシュートでゴールを奪われた。

「小管くんすご~い!」
仲間の女子から歓声が上がる。
だが俺は納得していない。

「待てよ。完全に中島のファールだろ!
それにこれは女子のヘディングの練習で小管が決めるってありかよ!」

高坂に抗議するが、彼女は冷静に
「審判の居ない状況だ。ゴールはゴールだ。」

「だけど今のは…。」
「真田、オフェンス側に接触されない為にキーパーはハイボールを処理する時は膝を立ててブロックするのが基本だ。
しかし、お前は相手が女子だからとそれをしなかった。
敗因はそれだ。

わかったなら居残り決定だ。」

俺は何も言えなかった。
確かに俺には油断があった。
高坂との居残り練習が、最後か…。それも悪くない。
邪魔されず真意を伝えることが出来そうだ。

「まだまだ!腰が高い! キャッチとパンチでステップを使い分けろ!」
厳しい厳しい居残り練習に彼女の手加減は無かった。
そして夜もかなり遅くなり
「ここまでにするか。二人きりの練習、楽しかったぞ。いつまでも居たい気分だぞ。」

「こっちはもう身体がボロボロだ。
ご指導、ありがとうございます。鬼コーチ!」
と言って部室に着替えに行くと高坂も入ってきた。
「私も着替える。」