テッペキ!11 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「サッカー小僧」

これほど高坂瑞穂を喩えるのに的確な言葉は無いだろう。
行動、言動、そして体型さえも「少年」そのものであり、俺は俗に言う「妹の様な存在」よりも「弟」の様に見ていた。
しかし、コーチとしての彼女は違う。

個々の能力と適性を見抜き、それぞれの課題と練習方法を提案をするのだった!
「武田!そこは左足を振り抜け!利き足じゃない方も鍛えろ!」

「榎田!勘に頼るな!シュートを撃たれる前のポジショニングで勝負は決まってる!」
今日も彼女の檄が飛ぶ。
部員もそれに必死でついてきた。
彼女を慕って入部した、中島恵を含める4人の女子部員も気持ちは同じだった。

「初心者の最初の壁がヘディングだ。
ボールを頭で合わせることを怖がり、身体が縮こまり、強烈なインパクトを与えれない。
しかし、一度自信がつくと、視線が上がり視野が広がり、体幹が強くなり攻守に利点を生む。
そこで今から私がコーナーキックを蹴るから女子4人はなるべく頭で合わせるように。
ディフェンスは伊東と島津のセンターバック二人。キーパーは真田だ。
4vs2だが相手は初心者の女子だ。
気を抜くなよ。」

4人を二人でマークするのは基本不可能だ。
しかし、経験も体格もない女子なら話は別だ。
ゴールマウスに立つ俺は伊東と島津に特定のマークはせず、右半分、左半分をゾーンで守る指示を出した。
高坂から蹴られる前に、必死にフリーなろうとする女子4人。その中で、最も伊東と島津から離れることに成功した中島を高坂は見逃さなかった。
「えっ?あたし?」
「怖がるな!飛び込め!」
蹴ると同時に高坂の声が出る。
反射的に頭を振り抜き強烈なヘディングを放つ中島恵。
俺は反応はしたが、指先に触れるだけで、ボールはネットを揺らした。

「凄いじゃない恵~!」
「イヤ、瑞穂が私の頭にボールを置いてくれた。私は来たボールに合わせただけよ。」

オイオイ、どんだけピンポイントなキックだよ。
改めて高坂瑞穂の凄さを感じた。
「今のは自分でも上手く行ったと思う。
だが、真田は止めれたかもしれんな。
もう一度だ。
今度は私がシュートする側に入る。
真田、次も決められたら私と居残りだ!」
どんだけ鬼コーチなんだよ全く。
「え~瑞穂がシュートするなら誰が蹴るの?」
主将の武田かな?と思ったが、
「お前ら二人きりで居残りさせるか~。」
なんて邪念の塊の武田には無理だな。唯一真面目な一年の小管に任せた。