見るもの全てが新鮮なのだろうか?
パンダやペンギンなどの人気動物じゃなくても、ありすは人一倍はしゃいでくれた。
「これじゃまるで親子だな。」
逆に少し安心した。デートと意識し過ぎずに単純に動物園と、動物園を楽しんでいるありすを堪能できた。
「ケイ様ぁ~。次はこっちですぅ~。キリンさんですよー!」
無邪気なありすは天使そのものだった。
僕を不幸にする悪魔なわけがない!…そう信じたかった。
その時ありすは僕の耳を疑う言葉を呟いた。
「この子達は…同じ檻の中でも見られることで世の中と繋がっている。私とは違う…。」
この娘にはどんな秘密があると言うのだろうか?
あいつー山田か田中か鈴木か最早どうでもいいがーが言っていた言葉が重くのしかかる。
「君はありすを愛せない」
きっとその秘密にたどり着ければ真にありすを愛せるのだろう。
「檻の中」
ありは閉じ込められた生活をしてるのだろうか?
だとしたら誰が?何の為に?
余計にありすが愛しくなってきた。
ある作家が
「人は他人の長所のみを愛するとは限らない。」
と言った言葉を思い出した。
だがそのことでありすを追い詰めたくはなかった。
せめてこのデートが終わるまで…。
夢の様な一時は一瞬で過ぎ去り、ディナーを終え、本来ありすが帰る時間が近づいてきた。
「そろそろ話してくれないか?」
「何をです?」
「何故、動物園だったんだ?『同じ檻の中でも』ってどう言うことだ?」
ありすの表情が凍りついた。あの時の寂しそうな表情だ。
「聞いていたんですね。いいですよ。こっちももう、『誤算だらけ』ですから」
…初めてありすの泣いた顔を見た。しかし彼女は笑おうとしていた。
どちらが言い出すわけでもなく、僕のアパートに行くことにした。
もうこの時点でありすも「覚悟」していると思いたかった。
部屋の灯りをつけようとする手をありすはさえぎり、
「動物園の動物はね、みんなに生きていることを許されているんだよ。
だから一度見ておきたかったんだ。
でもね、動物園に『モルモット』は居ないんだよ。」
真っ暗な部屋でありすはメイド服を脱ぎ捨てた。
夢にまで見たありすの一糸まとわぬ姿。
理想通りの計画は彼女の方から進めてくれた。
しかし…僕はありすの姿を正視できなかった。
「貴方だけには私の全てを知ってほしっかたから。
それが私の誤算」
百万の言葉以上の真実がそこにあった。