「選ばれたニーチェ、選ばれなかったキルケゴール。選ぶまでもなく、たたずむへーゲル。」
と言うことです。
第一次世界大戦での敗北を経験することにより、ドイツには英米の植民地主義と科学至上主義が、誤ったキリスト教解釈の負の産物だとの考えが蔓延してました。
そりゃ悔しいでしょう。
キリスト教を掲げる英米に自国の領土を荒らされたら、キリスト教を憎く思って当然です。
そこでドイツ人の精神世界のヒーローとして現れたのが
ニーチェ

と
キルケゴール

です。
ニーチェは「神は死んだ」
の言葉を残しました。
キルケゴールは「死は単独者にやってくる」
の言葉を残しました。
ニーチェは発狂死しました。
キルケゴールは形式ばかり重視する教会との闘争途中で信仰に殉じました。
キルケゴールの意志を継いだ実存主義のヤスパースはナチスに迫害され、同じく実存主義に分類されるハイデッカーは(彼自身は実存主義者であることを否定)ナチス内の権力闘争に破れ失脚。
選ばれたのはニーチェの虚無主義でした。
キルケゴールがデンマーク人。
ニーチェは自国のドイツ人と言うのも大きいでしょう。
しかし、
「神は死んだ」
は敗戦から立ち上がりと、英米への復讐を誓うには、これほど単純明快なスローガンはありませんでした。
そしてニーチェには
「超人思想」と言うのがありました。
ニーチェは
「イエスとキリスト教は分けて考えるべきだ。
イエス個人は素晴らしい。
しかし、神そのものは人間の思考から生まれたものに過ぎない。
『今こそ教えられた形式上の神は死んだ』と区切りをつける時だ。
大切なのは一人の人間としてイエスの様に立派な『超人』になることで、人間は自分自身を『超越』して行くことが使命だ。」
これがニーチェの超人思想です。
しかし、ヒトラーもムッソリーニも
「神は最初からいない。力こそすべて。」
と勝手に解釈するのでした。
「個人個人が見たい様に見ている自由」を国家が認めると、統治体制が揺るぐと考えられ、実存主義は葬れたのかもしれませんね。
しかし、ドイツにはそれ以上の
ドイツ観念論

がありました。へーゲルです。続く。