奇跡の出逢い。
恵美子の家と僕の家。
5件しか離れていなかった。
5歳という歳の差のせいか、お互いの事は知らなかった。
近くの駅まで同じ道を歩いてきた二人。
親近感がお互いに沸いた。
ませていた僕と子供の様な素直さを持つ彼女の組み合わせもお互いに年齢差を感じさせない。
荒れていた僕も彼女の前では素直になれた。
僕は彼女の猫の様な瞳にいつも吸い寄せられていた。
ある日、僕は某雑誌の読者モデルを依頼される。
誰でも知っている雑誌。
内容はお洒落なカップル紹介。
僕は迷わず恵美子を誘った。
彼女の返事はOKだった。
「あの写真は衝撃だった。」
後に「しの」に責められた写真。
僕達はいつの間にか周り公認のカップルになっていた。
恵美子に出会って変わった自分。
前向きに働いた。
順調な仕事。
当時の年齢では考えられない収入を手にした。
しかし恵美子という彼女がいながらも派手に遊び回わる。
門限が10時というお嬢様だった恵美子。
僕は毎日の様に恵美子を家まで送り、そのまま夜の街へと繰り出した。
僕の笑顔を取り戻してくれた恵美子。
溺愛していた。
しかし僕の遊びは絶えない。
成功し続ける仕事。
世界の頂点に立った様な気分。
毎夜ディスコのビップルームでどんちゃん騒ぎ。
腐るほど女が寄って来た。
僕の誕生日パーティー。
数百人がディスコに集まる。
「私、こういう所は苦手。」という恵美子の手を引きエスコート。
ビップルームには関係がある女性が5人、いや10人。
しかし僕の目にも、周りの目にも恵美子が一番輝いていた。
僕と恵美子の近くには僕の側近しか近づけない異様な雰囲気が自然と出る。
幸せだった。
「リョウ君はいつもこういう所で遊んでるんだね。私は門限も有るし付き合ってあげれない。ごめんね。」
愛している実感。
愛されている実感。
「恵美子の為に昇れる所まで昇ってやる。」
不安そうな顔で恵美子は微笑んでいた。
「でも、気をつけてね。無理しないでね。」
恵美子の言葉はいつも僕を癒してくれた。
「しの」との引き裂かれた恋から生まれた世の中に対する憎しみ、恵美子に対する愛から生まれるパワー。
相乗効果で絶好調な日々。
僕が絶対に破らなかった恵美子との約束。
「出来る限り一緒にお昼ご飯を食べよう!」
アパレルショップを辞めた後に彼女の働いていた会社。
隣には東急インがあった。
僕達は1階にあるシャングリラというレストランで毎日の様に恵美子の昼休みを共に過ごした。
僕の目覚めは何時もラブホテル。
時間ギリギリに目を覚ます。
隣にはいつも女がいた。
「悪いけれど行かなきゃならない。俺は先に帰る。」
知ってる女、知らない女。
毎夜の様にとっかえひっかえ・・・。
最低な男。
恵美子にいつも言われる。
「リョウ君、今日も浮気してきたでしょ!」
僕はいつも答える。
「そんなはず無いだろ!」
恵美子はいつも笑顔だった。
「また慌てて来たでしょ!今日も襟に口紅がいっぱい付いてるよ。肩口なんてファンデーションだらけ!」
笑顔で指摘される。
「ごめん・・・。」
いつも謝る僕。
「浮気ぐらい良いんだよ。私は夜はあまり付き合ってあげれないし・・・。でもね、リョウ君。私の事は傷つけても良いけれど人の事は傷つけちゃダメだよ。」
恵美子のいつもの言葉。
嘘偽りの無い笑顔で僕の浮気を毎日の様に許してくれていた恵美子。
人の事ばかりを気遣っていた恵美子。
「お前は最低の男だよ・・・」
周りの声。
そう。
僕は最低の男だった。
どうしても消えない僕の夜の顔。
時に酔い恵美子の前で何度も口にした言葉。
「俺は最低な男だ・・・。君の事を裏切ってばかり・・・。君の事を傷つけてばかり・・・。君に相応しく無い男だ・・・。最低の男だ・・・。」
恵美子は優しかった。
「リョウ君はリョウ君。何をしていても。何をしても。私の大好きなリョウ君。リョウ君が何をしても私はなんとも思わない。」
きっと僕は想像もできない程の愛を恵美子から受けていた。
相変わらず順調な仕事。
東京進出。
遠距離恋愛となったが恵美子と別れる事は想像できなかった。
22歳の時、僕は順調過ぎる仕事を放り出した。
「飽きた!」
後に東京でブラブラしていた僕に対して祖母が強引に就職先を決めた。
「リョウ!お茶でも飲みに行きましょう!」
僕はおばあちゃん子だったので普通の出来事。
行った先。
某上場企業の社長室・・・。
騙された。
社長から一括。
「いい若いもんがブラブラしてちゃいかん!直ぐにでもうちで働け!」
電話を取った社長。
「人事部長と課長を呼べ!」
僕は成功者の迫力に押される。
「来週からうちで働くリョウ君だ!」
僕が殆ど声を発する間もなく就職が決定した・・・。
恵美子との遠距離恋愛は途絶えなかった。
ある時、東京に遊びに来た恵美子。
「私、東京は苦手・・・」
関西弁で口にする。
恵美子が帰る新幹線のホーム。
最終電車。
抱き合った。
キスをした。
出発のベルが鳴る。
少し寒い夜だった。
恵美子が泣き出す。
中に入った恵美子の涙は止まらない。
閉まったドア。
恵美子がガラスに手をあてた。
僕は手を合わせた。
僕は歪んだ顔で笑った。
新幹線の赤いテールランプはすぐに見えなくなってしまった。
僕の頬を涙が伝った。
ホームには同じ様な人々がいた。
恋人の見送り。
最終電車の時間ギリギリまで愛を確かめ合ったのだろう。
僕と恵美子の様に・・・。
恵美子と共に過ごした三年半。
僕の目を前に向けてくれた恵美子との間には喧嘩をした思い出が一度も無い。
最終の新幹線のホームが、僕達の共に過ごした時間の最後となった。
その時は恵美子に対する気持ちが変わる事など想像できなかった。
僕が恵美子を裏切った。
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