まず温泉文学について触れていこう。
手塚治虫や石森章太郎の"世界的進出"とはまったく逆に、日本国内の、
きわめて土俗的な、民俗的世界を旅するような「マンガ」が、その頃、
一方では描かれていたのである。

そのもう一方のマンガによる「旅」の話を描いたのは、つげ義春である。
石森章太郎とは一年生まれが早いだけの一九三七(昭和十二)年生でほぼ同世代。
しかし、石森章太郎は、高校時代から天才といわれ、
手塚治虫のアシスタントとして呼ばれるほど早熟であり、
デビュー早々から人気漫画家、売れっ子漫画家として活躍し、
『世界まんがる記」の序では、羽田空港から外国旅行に飛び立つぎりぎりまで、
〆切に追われていた売れっ子ぶりをカリカチュアライズして書いているほどだ。