打点の功罪 | lowverのブログ

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当ブログでは過去何度か打点について書いてきました。
読まれた方の中には、打点は全く無意味だと当方が考えていると誤解されている方もあるかもしれません。
前回記事のように云われない批判も頂いているようです。

そこで今回は、打点という指標が一体どういうものなのかを、良い点・悪い点を含めて見ていきましょう。

まず、打点とはそもそも何か。
基本的には打者が安打や犠飛等の打撃の結果記録された得点です。正確にはダブルプレイの間に入った得点は除くなどの例外規定があります。より正確な定義は公認野球規則の10.04でなされています。
野球を観戦していても、そのプレーでチームに得点が記録されるわけですから、「活躍」したことがわかりやすいプレーです。

では打点が記録されるポイントは何でしょうか?
1つは打者の(特にチャンスでの)打撃力です。安打が多い方が、その中でも長打が多い方が、さらにその中でも本塁打の多い方が打点は増えるでしょう。それだけでなく、ランナーが3塁にいれば犠飛や内野ゴロの間の得点でも打点がつきます。三振をせずに外野に飛ばす、あるいはうまく転がす技術も高い方が有利でしょう。

もう1つポイントがあります。
チャンスで回ってくる打数の多さです。ランナーなしよりはランナーがいた方が、そのランナーも1塁よりは2塁や3塁にいた方が、さらにはランナー数も多い方が、野球というゲームの性質上、打点が稼ぎやすいです。
前回も掲載した2001~2011年のア・リーグの記録を再掲します。


打数打点打点率打率長打率IsoP
ア・リーグ平均得点圏216200(25.17%)841630.3890.2700.3590.089
非得点圏642907(74.83%)296580.0460.2660.3560.090


この表で「打点率」というのは、打点/打数を表します。この欄を見るとわかりますが、非得点圏の打点率は平均0.046なのに対して、得点圏では打率や長打率がそう大きく違わないにもかかわらず0.389へと8倍以上跳ね上がっています
では、チャンスで回ってくる打数が多い打者とはどういう打者でしょうか?
まず、3~5番を任されることが多い、チームの主力打者であることが挙げられるでしょう。事実、2001年~2011年の10年間でアリーグの打点王を獲ったのは、1人の例外を除くとみな3~5番を中心に打った選手でした。(ちなみに例外は2011年のNYYのグランダーソン(主に2番打者))
さらに、チーム全体の打撃力が強いことも挙げられます。前を打つ打者の打率や出塁率が良ければそれだけランナーもたまるでしょうし、後ろを打つ打者も強力であれば、チャンスで勝負を避けられることも少ないでしょう。実際、2001年~2011年の10年間で打点王が所属したチームの平均打率は、アリーグの平均打率を1回の例外を除いてみな上回っています。(ちなみに例外は2006年のボストン・レッドソックス。オルティスが打点王を獲得)

こうして見ると、チャンスが多く回ってきて(例えば強力なチームの中心選手で)、かつ打撃能力の高い(特に勝負強い)打者が上がりやすいということがわかります。
打点というのはこういう観点で評価すべき指標です。そこを逸脱しない限りは、打点も有用な指標の一つでしょう。

しかし、時として打点は本来あるべき観点を超えて用いられ、誤った印象を与える結果をもたらしています
例えば、選手個人の能力を判断したり、あるいはその選手がチームの得点にどの程度寄与しているかを判断しようとしているときに打点を使うと、おかしなことになります。
おかしくなるポイントは2つあります。
(1) 選手個人でなく、前後の選手の能力も含めての評価となってしまう
(2) 得点を決める能力以外の得点寄与能力が評価されない

説明しましょう。
(1)は前半でも説明したように、打点というのは選手個人の打撃能力だけでなく、チャンスでいかに打数が回ってくるかという、その選手以外の能力も含まれた評価になってしまっているからです。
(2)は以前の記事でも説明しましたが、チームに得点をもたらすプロセスに関係します。得点はチャンスを作り、そのチャンスで打って得点を稼ぐことで積み重なっていくものです。打点は後者を評価しますが、前者が評価されません。今回の上の方に出した表でも、非得点圏より得点圏の方が打点率が8倍以上高いことを示しました。これは言い換えると、得点圏にランナーを進める打撃というのは、チームの得点期待値をそれだけ高くしているということになります。これもチームの得点への寄与ですから、評価すべき働きです。
簡単に図式化すると以下のようになります。
lowverのブログ-打点

とかく、打点信奉者の方は、チームの得点への個人の寄与能力として使いたがりますが、それは不適切であることがお分かりいただけるかと思います。

打点に限らず様々な指標について言えることですが、指標を使う場合はその意味を理解して使わないと誤った評価となってしまうのです。
ごくごく当たり前のことを述べているつもりですが、人の先入観とは怖いもので、打点信奉者はここまで言ってもまだ評価を変えないかもしれません。ひとつ、上の図式を見て冷静に判断していただければと思います