健康食品の販売を始めるシステム会社の部長と打ち合わせがあった。
13時からだったが、予想以上に長引いた。終わったのは15時前。場所は西麻布の交差点。お腹を空かして近くをうろうろしたあげくゼストというダイニングカフェに入った。『ようこそ、いらっしゃいませ!』と歯切れのよい健康そうな女性店員の声が颯爽と響く。顔の小さな可愛い子だった。
店内の雰囲気は一言でいうとウッド基調のウエスタン風。ランチセットのタイカレーとサラダ・ドリンク・スープバーが一つになったものを頼む。
建物の二階にあるお店は窓が全て開かれていて涼しげである。一瞬で気に入った。タイカレーは、まろやかさとパクチーの風味とピリ辛が合わさったような味がした。
帰り際、勘定を済まそうとすると、先ほどの元気な女性店員さんが声をかけてきた。『お味はいかがでしたか。辛くありませんでしたか』。実に自然な雰囲気で、すぅっと入り込むように。
『美味しかったです。ご馳走さまです』と返事をするとビックリする出来事が起きた。普通釣り銭はレシートを添えて手におくものだが、彼女は両手で僕の手を包み込むような形をとった。それは、半分手を握ってるいるとも言えるくらいだったのである。軽く笑みを浮かべながら。
内心ドキッっとした。大人なので顔には出さないように気をつけた。階段を降り店を後にしようとすると『本当にありがとうございました。お仕事お疲れ様です。頑張ってくださいね』とそれは丁寧な口調だった。
トドメの一言である。
僕はここまで丁寧な接客は久しく受けたことがない。お店は空いていた時間とはいえ一人のお客さんにここまで対応できるとは…。居酒屋で働いていたことがあるので僕は飲食店の接客や対応はいつも見ているし、口うるさい方だと思う。それがすっかりこの店と彼女のファンになってしまったのだ。
いいお店には店の雰囲気、料理もさることながら、必ずいい店員さんがいる。
改めて強く感じさせられたのだった。