『桜の花の咲く頃に』
これは2年前、フジテレビで放送された2時間のドキュメンタリー番組である。
舞台は北海道の東の果て、別海町。
人口一万七千人に対して牛は十二万頭。牛乳生産日本一の酪農の町である。
面積は東京都23区よりも広い。
そこにたったひとつだけある高校、北海道立別海高校。
普通科3クラス、酪農科1クラス。
酪農家を養成するために創設された高校だったらしいのだが、時代の波か酪農科の生徒は減りつつあった。
そこに通う高校三年生とその親たち、先生たちの日常の毎日を一年間追いかけた記録である。
父親を交通事故で亡くし、その現場を高校に通学するスクールバスから見ていた女子バレー部のキャプテン。
病院で助産婦をする母の手ひとつで育った男の子は中学時代から毎日かかさず新聞配達をする。
猟師の後を継ぐと決めた男の子の決意。そして東京から離れて思うその彼女。
両親に負担をかけまいと公立の看護学校のたった一度の受験に挑む猟師の娘。
新しい酪農家の未来を探して大学へ進学する八人兄弟の長男。
別海を出て、たったひとり北海道大学への進学という挑戦をする女の子。
酪農家を育てるため、自分の故郷の良さを伝えるため、帰ってきて酪農科に赴任した男性教師。
一年の期限付きで臨時採用になった教員採用試験に合格しない女性教師。
別海高校に赴任して十年。毎日の日課がコンビ二で少年ジャンプを買う独身男性教師。
抜粋して書いたが、どこといってなにか特別なものではない。
ただ、どのひとも一生懸命なのだ。
それは押しつけがましくもなく、嫌味にもならない。
とにかくひとりひとりの毎日の生活が素直で一生懸命。これにつきる。
臨時採用の女性教師の言葉がある。
「ここの生徒は一生懸命なんですよ。一生懸命だからこちらも一生懸命になる。それにこたえようとする」
塾も予備校もない別海高校の生徒たちにとって受験勉強での頼りは学校の先生しかいない。
生徒も本気だし、先生も精一杯になる。
こんなことを言うと、ひと昔前の学園ドラマか最近の学校問題のようだが、全然そんな無理強いなかんじがない。
親が必死で仕事をしている姿を目の当たりにしているせいだろうか。親に負担をかけないと思う気持ちが強い。
それは別海の生徒にかぎったことではない。だから毎日が、日常が、普通だけれど、その普通を生きることの大切さがしみてくる。
もし、機会があれば再放送してもらいたい。そんな番組だった。