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小川洋子の『密かな結晶』は今の時代を
予見するかのように日常が少しずつ壊れて
いく世界を描くコロナ禍を映すデイストピ
ア小説という記事です。日本人作家の小川

が書いた本作(日本での出版は1994年。英
訳は昨年でたばかり)作品の舞台は名前のな
い鳥。その島では、物が一つずつ消えてい
く。リボン、鈴、エメラルド、スタンプ、

香水...初めのうちは、なくなってもやり過
ごせそうな物が消えていき、やがて鳥や花
が消えた。大きく悲しみを伴うものだ。

ほかにも、例えばカレンダーのように暮ら
しに欠かせない物が消えた。物語の語り手
である小説家も、「小説」の消失を経験す

る。体の部位が消え始めるという過酷な展
開も待ち受ける。どうして消えるのか、人
々が消えた物のことをなせ忘れるのか。そ
れらの点は明らかにされず、消えた物を覚

えている人間を取り締まる「秘密警察」も
存在している。多くのデイストピア小説と
同じく、『密かな結晶』にも「オーウェル
的」という形容詞が添えられることが多い

多くを語らない小川のスタイルは、カフカ
や安倍公房に近く、中国の武漢やイタリア
ミラノなど新型コロナ禍の中心地の状況は

映画「コンティジョン」のような疫病を描
いた作品に近いのかもしれない。だが、今
の時点で、筆者の住むワシントンでは『密
かな結晶』の方がしっくりくる。
 つづく        (2020.4月記事)






 ▪2020.4.29(水)▪
チューリップオレンジ一つのことがダメでも、
またその先にきっと違う道があるチューリップオレンジ
   ~link 癒~