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93歳の歴史家が回想する
30年代のドイツは
「トランプのアメリカ」と
不気味なほど似てる


アドルフ.ヒトラーと初めて
目があったとき、
エドガー.フォイヒトバンガーは
5歳だった


1992年のこと
少年がミュンヘンの自宅の窓から
顔を出すと


未来のドイツ首相が
黒塗りの車から降り立ち
目をあげて少年を見た


その途端
乳母のロージーが窓を締め
少年をベッドに追いやったのだった


フォイヒトバンガーは振り返る


幼い頃、近所に苦手な大人が
いた経験は誰にでもある
  

29年当時
政権掌握に向けて着々と
地歩を固めつつあったヒトラーは


少年の家のすぐそば
プリンツレーゲンテンプラッツ
16番地の高級アパートに
居を構えた


「彼は良くない隣人だと
子供心にもわかった」と彼は言う


少年は今、93歳
アドルフ.ヒトラーを間近に見た
数少ない生存者の一人だった


長じて著述家.歴史家となった彼
イギリスのサウスハンプトン大学で
30年間講義を行った


専門分野は
19世紀ヨーロッパ帝国の研究だが、
新著「ヒトラー、私の隣人」
で個人的な体験をつづっている


日本風の断片で構成されているものの
30年代のドイツを活写した
稀有なポートレートだ


子供目線で歴代の
雰囲気を描きながら
歴史家の視点で細やかに忠実にも
目配りしている


やがて、
少年は黒い口ひげをはやした
隣人を恐れるようになった


少年たちは自分たち一家が
ユダヤ人だと
ヒトラーが気付くのではないかと
ヒヤヒヤしていたのだった


アパートには
ナチス関係者が出入りし
通りではナチスとそれに講義する
人々の暴力的な衝突が
繰り返されていたのだった



33年ヒトラーが首相に就任
事態は急変した


世論の熱狂的な支持を受けて
ナチスは議席を伸ばし
ユダヤ人の公民権を奪う
ニュルンベルク法を成立させた


少年の父親は出版の職を奪われ
大好きだった乳母のロージーも
出て行った


ユダヤ人が
「純血ドイツ人」の
乳母を雇うことは法律で禁止
されたからだった



少年の父親は
38年に拘束され
ダッハゥ収容所に送られたが
奇跡的に処刑を免れた
同年12月に釈放されたのだった


14歳になった少年は翌年
イギリスに単身で渡り


その後、両親も移民ピザを手にいれて
息子の後を追い
一家は新天地で生活を始めるのであった



この本に描かれた
当時のドイツは、
ドナルド.トランプが米大統領選に
勝利する直前の
アメリカと不気味にも重なる


少年の周りの大人は
ヒトラーが権力を握ることは
あり得ないと思っていたからだった


少年の伯父で著名な
小説家. 劇作家の
リオン.フォイヒトバンガーは
ナチスが政権を取ることなど
「不可能だ」と断言していた


「この国の世論は
はるかに共和主義的だ」


30年代ドイツと
現代アメリカの対比は



この本は
米大統領選よりかなり前に
書かれた本で
著者が意図したものではない


フォイヒトバンガーは
かっての伯父のように
米大統領選の結果には
心底驚いたと話す


今もイギリスに住む
フォイヒトハンガーは
アメリカの状況以上に
懸念しているのは


E U 離脱をめぐる国民投票を
受けてイギリスで
排外主義が高まっていることだ


「悪いことは
何でも移民のせいにされる
あの投票をきっかけに
そういう雰囲気が生まれた。
とても残念だ」


フォイヒトハンガーは
今も精力的に各地を回り体験を語る


伝えたいのは
良識ある人々まで巻き込んでしまう
偏見の恐るべき伝播力だ


「心して掛からねば」と彼は言う

「偏見はいつだってわれわれの
そばに潜んでいる」



                  励ましのことば
                やまびこのように響き                             
                その声が
                  あなたの心も
                 私の心も動かす
                 不思議な力