ハギが愛読しているWeb雑誌 <日経ビジネスオンライン>に、映画監督 是枝裕和さんのインタビューが3回にわたって掲載されました。
是枝監督、と聞いてわからない方も、福山雅治の 『そして父になる』 の監督、と言えばおわかりになるのではないでしょうか。
是枝監督が、伊藤忠商事の企業CM制作を引き受けられたので、このインタビューが実現したのですが、内容がとても興味深く、日本の映画業界の現状などもわかるため、ヨンウニムも読みたいかもしれない?! と勝手に思い込み、先日来、せっせと韓国語に翻訳しております。
インタビュー記事に書かれた内容と、ハギの知る限りにおいての韓国映画業界の事情を重ね合わせて考えるとき、ヨンウニムがなかなか次の作品を決められない事情についてもわかるような気がしてくるので、ちょっとここらでまとめてみようかと思います。
是枝監督のインタビュー記事はこちら。(全文読むには無料の読者登録が必要かもしれません)
第1回:
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/252773/090900005/?n_cid=nbpnbo_fbbn&rt=nocnt
第2回:
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/252773/090900006/
第3回:
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/252773/090900007/
この記事を読んで、ハギがまず驚いたのは、「日本の映画監督は映画以外のお仕事もたくさんやるんだ」ということ。そういえば、もう少し身近なところで三谷幸喜監督など、映画以外にさまざまなことをやってらっしゃるのは、特別に映画ファンでなくてもよく知るところかと思い至りました。ウィキで調べると、本当にみなさんいろいろなことに挑戦されていて、「映画監督」という枠に収まらず、「アーティスト」として表現の方法を模索されている感じがします。
それに対して韓国の映画監督をググっても、映画以外の情報はほとんど出てきません。映画監督は映画一筋です。
俳優さんもそうですね、日本の俳優さんの方が、本業の他に得意なことをみつけていろいろやっていらっしゃる印象があります。(詳しいわけではないので、単なる印象レベルですが) 韓国の俳優さんはお店を出すなど事業に手を出す人は少しいらっしゃいますが、他はあまり聞かないような気がします。
是枝監督は、キャスティングは必ず自分で行うとおっしゃっています。『甘殺』 のソン・ジェゴン監督も「ミナはチェ・ガンヒ以外に考えられない!」と猛アタックをかけられた話が先日UPした特典映像の中でも語られましたが、「制作会社等の意向に従わざるを得ない」ケースも少なくないようです。『イケてる悪夢』 の主演がヨンウニムではなくソン・スンホン氏に決まったとき、ファン友のSちゃんが言ってました。「ソン・スンホンとヨンウニムに集客力の差があるとは思えない」って。つまり、そういう観点から主演のキャストを選ぶことが、一般的に行われているということなのでしょう。
第3回で、大手シネコンの話が出てきますが、韓国のシネコン独占率は日本をはるかに凌ぐ状況です。日本でもインディーズ映画(独立映画)と呼ばれる作品を上映してくれる映画館はそれほど多くないし、個人経営の映画館も窮地に立たされているのは同じですが、韓国はそれ以上だと思います。全国で2700ほど(だったと思います)のスクリーンのうち、8割が大手シネコン3社が掌握していて、興行収入の得られそうな作品を優先的に上映します。歴代集客数第2位(今もそうかしら?)を記録した 『鳴梁(バトルオーシャン』のときに、1500近いスクリーンで上映されたと話題になったり、ソウルロケの入った 『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』 では1800を越えるスクリーンで上映されたとかで(数字はちょっと記憶があいまいです、ごめんなさい)問題視されていました。
一方で、『アトリエの春』 のような秀作はほとんど上映してもらえない現状はみなさんよくご存知のとおり。少し前にもカンヌ映画祭等で注目を集めた 『マドンナ』 の上映館が確保できないともめていました。
どんなにすばらしい作品を創っても、上映してもらえる見込みがなければ成り立ちません。儲からない映画にお金は出せない、という制作会社の苦しい立場もわかります。そういう板挟みの状態で、『スタントマン』 は残念ながら途中で制作中止に追い込まれてしまったのでしょうね。
つまり、「優れた作品を演じたい」というヨンウニムの希望は、韓国の映画市場の現状と相容れない部分が大きいのではないか? ハギは日々それが心配です。
それなら、小さな劇場で手弁当ででも、演劇をやったり自主映画を製作したりしてはどうか? と思うのですが、先に書いたとおり、そういう作品を上映する映画館がまた少ないことや、「商業映画で主演級の俳優があんな小さな映画館で」という目で見られてしまう体面的な問題もあるのだろうと推測されます。
日本人も周りの目を気にしやすい国民性があると思うのですが、韓国はそれ以上だと感じます。常にマイペースで、周囲の評価が全く気にならない性格のハギとしては、じつに窮屈そうに見えて可哀想に感じてしまいます。
話は変わりますが、是枝監督の最新作 『海街diary』 で主演を演じた広瀬すずちゃんは、共演者の先輩女優さんたちに上手に魅力を引き出してもらった、と語られていて、監督はそのことにとても満足しておられるようです。
このくだりで、以前、北野武監督のインタビューを読んだことを思い出しました。「監督である僕に、こうしたらいいんじゃないか、この方がよくないかって意見してくる俳優がいるんだよ。僕はそんな俳優とは二度と一緒に仕事しないね。だって映画は僕の作品だから」みたいなことをおっしゃっていたのです^^
世界の北野!らしい発言だとは思ったものの、ヨンウニムの姿勢とは真っ向から対立します、よね?! ヨンウニムは常に監督とどんどん意見交換して、よりよい作品を目指したい人なので。
何が言いたいかというと、やはり監督と俳優との相性、みたいなものもあるんだろうな、と。どんなタイプの監督が韓国映画界に多いのかわかりませんが、商業性におもねる、とか、俳優の意見を認めない、とか、ヨンウニムと合いそうにない監督もきっとたくさんいらっしゃるのでしょう。
。。。と、こんな徒然を書くのに時間を使っていたら、続きの記事を楽しみにしてくださっているみなさんに申し訳ないのでこのくらいにしておきます。
同じ趣旨で、数字の裏取りはしていません。すべてハギの記憶によるのでかなり怪しいものです。ご勘弁を!