ウィンブルドン:マレー対フェデラー決勝を振り返って | マレー・ファン@ラブテニスワールド

マレー・ファン@ラブテニスワールド

英国テニス・ナンバーワン選手のアンディ・マレーを応援しながら、
ロンドンでの暮らしを綴るブログです♪
マレーがついに2012年ロンドン五輪で金&銀メダリストとなりました。
一緒に応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!

日曜日は泣いて泣いて、涙が乾ききったところでこのブログを
書こうと思っていたのですが、昨日も書き始めると途端に涙が
わいてきてしまい、何度も中断。結局今日となってしまいました。

とにかく今日は、記録として、できるだけのことを残したいと
思います。


日曜日は国民が大泣きしました。

フェデラーの勝利の瞬間とともに国中に張り詰めていた期待の
緊張の糸が切れ、それらが一つの大きな波となり、多くの人々が
涙を流しました。




いまでも様々な思いやシーンがよぎって涙が溢れてしまいます。

日曜日、早朝にウィンブルドンの会場の前を通ったとき、雨の
振る中、明るい笑顔で何千人もの人たちが列を成していたこと。

マレーがグランドスラム決勝で初めて1セット目を獲得したときの、
国中の喜びぶり。


雨で屋根が張られることになり、フェデラーが最も得意とする
インドアで決勝が終わると分かったときの国民のショック。


最終ゲームで、マレーが生き残りをかけて椅子から立ち上がった瞬間、
国中がこれ以上はできないというくらいマレーに送った大歓声。


授賞式を待つ間、椅子に座って空を見つめていたマレーの姿。

そしてマレーの第一声…


どんなに冷静に振り返ろうとしても、このイギリスの感情の
ダイナミックさはとても感情的にならずにお伝えすることは
できそうもありません。

なので今日は記録だけを残します。

***

マレーの試合後のスピーチ

「まずは、ロジャー優勝おめでとう。

 準決勝のあと、いろんな人から「これは君のベストチャンスか?」
 と聞かれた。ロジャーは30代に入ったからね。
 (ジョークまじりで)でも30代にしては彼はちっとも
 衰えていないよ。

 彼は素晴らしいトーナメントを行い、背中の怪我を負いながらも
 戦い続けた。本当におめでとう。君が優勝をして当然だ。

 (マレーの家族と友人たちを指して)彼らを見るとまた涙が
 出てしまうので見ないようにするけど、あそこに座っている
 人たちが僕を支えてくれた人々だ。この大会は本当にタフ
 だったけど、素晴らしいサポートをくれて本当にありがとう。

 最後に(観客に向かって)みんなありがとう。

 誰もがウィンブルドンで僕にかかるプレッシャーや、それが
 どんなに重いものかを語るけど、応援する人々がその重圧を
 かけているわけではなく、逆にみんなの応援が僕の試合を
 より助けてくれているんだ。

 みんなの応援は本当に素晴らしかった。だから、ありがとう」

***

授賞式の後、恒例の写真会が行なわれましたが、マレーは準優勝の
シルバートレイを椅子に置いて早々に退場。

センターコートを、伝説の選手ロジャー・フェデラーだけのために
譲りました。


***

これで再びロジャー・フェデラーは世界第一位に返り咲きました。
またウィンブルドン優勝7度という快挙を成し遂げ、ピート・
サンプラスの記録に肩を並べました。


授賞式のあと、マレーはセンターコートで泣いてしまったことを
フェデラーに謝りました。

フェデラーはただ笑って、こう言ったそうです。

「試合の後のスピーチは試合をするより簡単だと思われているけど、
 実際は(スピーチの方が)試合よりもハードだったり
するよね」

***

今年のウィンブルドン決勝では、BBC視聴率が、なんと最高時では

1億7千万世帯 にのぼりました。

これほどまでに国民の関心がテニスに集まったのは、1990年
ボリス・ベッカーステファン・エドバーグの決勝以来の出来事と
なりました。


***

イギリス国中の大きなプレッシャーを浴びながらも、史上最高選手の
一人であるロジャー・フェデラーを相手に戦い抜いたマレーに、
ツイッターでも世界中から感動の声が寄せられました。

マイケル・オーウェン(サッカー選手)
「素晴らしい決勝だった。マレーは頭を高く掲げるべきだ。
 伝説の選手に敗れただけだ」

トニー・パーソンズ(英国の作家)
「アンディ・マレー:試合には負けたが国民の心を勝ち取った」

タイガー・ウッズ(ゴルフ選手)
「素晴らしい戦いをしたマレーに脱帽」

マシュー・ペリー(『フレンズ』俳優)
「これですっかりマレーのファンになってしまったよ」

ユアン・マクレガー(俳優)
「ブラボー、アンディ・マレー。
 ウィンブルドン決勝進出という凄い成果を成し遂げた。
 君は素晴らしい試合をし、僕たちが誇りに思うことができた。
 おめでとう」

ギャリー・リネカー(スポーツ解説者、元サッカー選手)
「今年も芝に一歩踏み込んだ!
 来年マレーが勝ったら、もっとどんな凄いことになるか
 想像できる?」

ピアース・モーガン(CNNホスト、元英デイリーメール編集長)
「マレーが無感情などと二度と責めるな。
 彼はすべてを出し切ってがんばった。誇りに思っている」

ラッセル・クロー(俳優)
「アンディ・マレー、僕の目には君がチャンピオンだ。
 君に必ずその日が来る」

などなど、取り上げたらきりがありません。

***

さて…

マレーがこれまでぐっと歯を喰いしばって耐えてきたマスコミや
世間一般からのバッシング。

これが今回のウィンブルドン決勝進出でどう変わったのでしょうか…?


英ガーディアン紙では、『Andy Murray: the fans’ tears
(アンディ・マレー:ファンの涙)』と題し、

「今回マレーは負けたが、彼が勝利する日が来ると信じる人々が
 増えている」

と報じました。

ウェールズ・オンラインでは、

『Andy Murray: How he became an unlikely hero for all  
 corners of Britain
(アンディ・マレー:イギリス全土で、どのようにして彼が
 意外な
英雄となったのか)』

と、マレーマニアがイギリス中にどのように広がっていったかを解析。

テレグラフ紙は、

『Tearful Andy Murray loses on court, but wins the 
 nation's heart
(涙のアンディ・マレーはコートでは負けたが、国民の心を
 奪った)』

と、マレーがついに国民に認められたことを報道しました。

でも…

ウィンブルドン熱が冷めて次の大会がやってきたら、再び
マレーにはプレッシャーがのしかかり、さらに厳しい道のりが
待っています。

なぜなら、次に国民が期待するのは…もちろん優勝です。

しかも20日後には、いよいよオリンピックが待っています。

私がここで思い出さずにいられないのは、マレーと同じく
英メディアや国民からのバッシングとプレシャーを経験した
デビッド・ベッカム

ベッカム自身、国中からのバッシングを受けた経験があります。
1998年、ワールドカップのアルゼンチン戦でベッカムがレッド・
カード退場宣告を受けたあと、イングランドはPK戦で敗退。


この敗退後、英メディアはこぞってベッカムを吊るし上げました。
また国民も激怒し、ベッカムの首吊り人形が街角に飾られるなど、
普通の選手だったら消えてしまいかねないほどの叩かれぶり。


でもベッカムは黙々とサッカーのプレイで世間を黙らせ続け、
2000年にはイングランド・キャプテンを務める国の主要選手と
なりました。

そして2002年のワールドカップ進出を決定するギリシャ戦で、
ベッカムが試合終了間際のフリーキックを決めた瞬間、
1998年の出来事は完全に過去のものとして葬り去られました。

ベッカムとマレー、二人に共通するのは、とにかく世間から
何といわれようと、いつか必ず自分が勝利を導く力があると
がんばり続けること。

それがベッカムだけでなく、マレーにも備わっているパワーだと
信じています。

余談ですが、マレーの試合開始前にデビッド・ベッカムが

「テニスはサッカーのようなチーム競技と違い、一球ごとが
 ペナルティーキックと同じくらいの重みを持つ」

と個人競技であるテニスのプレッシャーの大きさを語りましたが、
イングランドの過去のPK戦を思い出すと、さらにずしーんと
重みが増してくる言葉です。

***

最後に、決勝前も後も多くのメッセージ、本当にありがとう
ございました。お返事が遅れていて申し訳ありません。今週から
サポーターを外す時間を少しづつ長くしていっているので、
PCが使えるようになる日ももうすぐだと思います。

本当はもっともっと書きたいことがあるし、もっと抜粋したい
記事があるのですが、今はまだ感情的にこれが限界です。

もう少し日数を置いて、また少しづつ振り返ろうと思います。

***

最後に、マレーのコラムを全訳します。

マレー自身の言葉が一番ですから…

アンディ・マレーのウィンブルドン・コラム
『I'm determined more than ever
 (今まで以上に闘志を
燃やしている)』

グランドスラム決勝で、しかもウィンブルドンで地元の大きな
声援を受けながらイギリス人選手として負けることが、どれほど
辛いことかを言葉にすることはできない。

ファン、自分のチーム、大会のスタッフにお礼を言い、相手の
健闘を褒め称えるために、冷静に振舞おうとすること。

それが簡単だったらどんなにいいことか。

ありとあらゆる努力を尽くし、信じられないほどのサポートを
受けたあとだけに、感情をコントロールするのは難しい。
どんなことがあっても泣くまいと思っていたけど、
どうしようもなかった。

今大会、観衆、家族、友人、すべてが僕には大きな存在だ。
次こそは絶対に僕がトロフィーを掲げると決意している。

僕が最初のグランドスラム優勝に近づきつつあるのは明らかだし、
前回3度の決勝ではストレートで負けたが、日曜日はロジャー・
フェデラーを相手に1セットを奪うことができた。

また僕は初めてウィンブルドン決勝に進出することができた。これは
芝で僕が確実に進歩している証拠だ。またグランドスラム決勝で
ベストの試合ができ、コート上でもこれまでにない気持ちで、
落ち着いて試合をすることができた。

決勝の日の朝もそれまでの大会の流れも好調な気分で迎えた。
だから希望が持てる傾向はたくさんあるし、認めるのは大変辛いが、
過去に比べるといろんな状況をうまくハンドルすることが
できるようになってきた。

日曜日の夜は、僕のチームのメンバーは打ち上げを行なった。
彼らは楽しむ権利があるから、僕のせいで場を台無しにしたくなかった。
だから僕は家に帰り、いろんなことを考え、頭の中で物事を整理した。

オリンピックが近づいている今、次の10日間が非常に大事だ。
とはいえ、今週はテニスラケットを握るつもりはないし、
イギリスで
じっとしているかどうかも分からない。

太陽のまぶしい場所を探そうかと思う。マイアミかヨーロッパの
どこかに、
ガールフレンドと犬たちと一緒に飛ぶかもしれない。

無念さは長い間僕の中を駆け巡ると思うが、慌ててその気持ちを
ぬぐい切ろうとは思っていない。時にはコートにすぐに立つことが
助けに
なるかもしれないが、それが反対の効果となることもある。
僕の身体と気持ちが回復するのに、十分必要な休養をとるつもりだ。

全仏オープンでは背中の故障を負ったが、今年はいいプレイをしてきた。
ブリスベーンで優勝し、全豪オープン準決勝でノバク・ジョコヴィッチと
接戦をし、ドバイとマイアミの決勝に進出し、全仏を含め3回の
クレイコート準決勝に進むことができた。

これらの結果を前向きに考え、日曜日の試合から学ぶべきレッスンを
かね合わせれば、僕はオリンピック、全米オープン、そのあとの大会で
いい結果を出せると自信を持っている。

また1月にイヴァン・レンドルが僕のコーチとなって以来、彼の貢献が
プラスになってきた。特に、冷静に対処しなければならないとき、
多大なプレッシャーのかかる状況や、重要な試合での緊張の瞬間などを
乗り越えなければならないときに、彼が多大な助力となっている。

僕がグランドスラム大会を準備するに当たり、これまで自分が必要とし
自分に欠けていると思っていた面を、彼が大きく変えてくれた。
すべていい方向に向かいつつあり、これからもさらにそれは続くはずだ。

オリンピックで僕が再びウィンブルドンに戻ってきたときに、それが
実を結び始めることを願っている。日曜日は辛い日だったが、金メダルを
勝ち取るための戦いを思うと、すでに僕の中には闘志が湧き起こっている。

                    ~アンディ・マレー


次はマレーの笑顔が見られますように…