誕生日の思い出は数知れずあるけれど
一番幸せだった誕生日はいつの誕生日だったかな?と考えると思い浮かぶものはない
けれどきっと一番寂しい誕生日は間違いなく今日だと思う
俺は誕生日に彼氏と過ごす為に彼氏のアパートまで来たけれど、家に人の気配はない
今日は俺の誕生日だって事は知ってる筈なのに・・・
一緒に過ごそうって言った筈なのに
部屋の外で俺は待ち惚けだった
2月の空は雪が舞い散り酷く冷えた
俺は手を擦り合わせ、体を揺すって寒さを紛らわす
いつまでも帰らない男を待って馬鹿みたいだと思う
それでも帰る事が出来なかった
一人の誕生日は嫌だもん・・・
でも、分かってるんだよな
別の男がいる事も本当は知ってるんだ・・・
諦めろって思う
って言うか諦めたい
よっぽどこんな誕生日より、一人の誕生日の方がいいと思う
絶望的だと思った
その時
「僕があなたを奪うから泣かないで」
それはまるで白馬に乗った王子様が現れたみたいな出来事だった