後半47分ロスタイム。2-1で浦和のリード。
ロスタイムに1点を返して猛追しているホームのマリノス。ホームで首位決戦で敗れるわけにはいかない。全員攻撃で同点を目指し猛反撃を見せる。
しかしマリノスが1点を返してわずか1分後…。
これで終わりだ
同点にむけて激しい攻撃を見せるこの試合最後の『横浜の時間』に終了を告げるホイッスルのように、長谷部選手がゴールにボールを叩き込む。
その昔キャプテン翼で見たホイッスルと同時のゴールような豪快なシュートで、マリノスサポーターの最後の望みを断ちきったシュートだった。
難攻不落の横浜の城、『日産スタジアム』に試合後、勝利に沸く赤い大旗がいくつもそびえ立つその光景は浦和レッズが横浜城を陥落させたその瞬間でもあった。
「浦和?ゼロに抑えたい。ロサンゼルスとか気をつけないと」
浦和の大黒柱ワシントン選手をロサンゼルスとわざといい間違えた首位横浜DF栗原選手。首位チームのセンターバックの挑発は『絶対、点を取らせない。逆におれが取る』と同じセンターバックを守る闘莉王選手にも向けられる。『浦和はいい状態で来ると思うのでしっかり準備したい』と冷静に述べた同じDFラインを守る中澤選手とは対照的だった。
一方の浦和は首位決戦に向けてどこまでも冷静だった。『横浜は選手のクオリティが高いチーム。だから相手がいつも以上自分たちの力を引き出してくれる』(鈴木啓太選手)、『選手層が厚くポジション争いが激しいマリノスは良い緊張感をもってやっている。』(長谷部選手)、『相手はしっかりしたチームなので、難しいゲームになる』(山田暢選手)と冷静に相手の強さを認めて備えていた。
1人1人の秘めた思いはサポーターにも当然伝わっており、本拠地は違えどダービーマッチの様な静かでそして熱い戦いを予感させた。
Jリーグ ディビジョン1 第5節 (日産スタジアム)
ホーム
横浜F・マリノス(神奈川県横浜市)
VS
浦和レッドダイヤモンズ(埼玉県さいたま市)
ビジター
50,572人。
青く澄んだ晴天の横浜・日産スタジアム。
多くの青いサポーターに見守られてチャレンジャーを迎え撃つホームチームの首位横浜F・マリノス。そしてアウエーでも『ホームのように戦える』(長谷部選手)というように多くの赤いサポーターに後押しをうけた浦和レッドダイヤモンズ。首位決戦を行う上でこの上ない最高の舞台が整った。
両チームのスターティングメンバーはいつもとかわらない。
久保選手とマルケス選手を頂点に置いた横浜の4・4・2に対して浦和もワシントン選手を頂点に置いた3・6・1。得点能力の高い両チームである一方、リーグ2位の守備力を誇るお互いである。どんな試合になるのかは全く予測がつかない中で試合は始まった。
ワシントン選手の決定的なヘディングなどがあったものの、『先制点は渡さないように守りからはいる』(都築選手)と試合前に語っていたように、ブラジル人トリオと久保選手で怒涛の攻撃を見せる横浜を相手に浦和はまずは守備を堅実に行い、1人1人の役割を確認しながらの試合への入りとなった。
マルケス-マグロン-ドゥトラという左のブラジル人トリオでチャンスメイクをしたい横浜。対して浦和は前節のセレッソ大阪戦で驚異的な能力を持つブラジル人MFゼ・カルロス選手を抑えきった山田暢選手を筆頭に、鈴木啓太選手、堀之内選手で対応をする。このエリアを制したものが今日の試合のイニシアチブを握る事は明確だった。
前半は両チーム共に相手を意識しすぎていたのか、ガチガチに固くなってうまく試合を運べず、パスミスも目立った。横浜の右サイド、浦和の三都主選手のいる左サイドと、相手のストロングポイントを消しあう形なのでボールが繋がらない。しかも両チームのDF陣がかなり高い位置でプレーをした結果、お互いのDFが30m以内でプレーするという極めて珍しい状態になり、前線との距離を意識してなんとかポゼッションを取ろうという強い気持ちが見て取れた。『前半は相手のプレッシャーが速くて、中盤とディフェンスでボールをうまくつなげなかった。』と試合後の長谷部選手のコメントからもいかにお互いが高い位置でプレスをかけていたのかがわかる。
そしてお互い何本か良いシーンを作りながらも無得点でロスタイムを迎えようとしていた前半43分。ポンテ選手の蹴ったコーナーキックが試合前に浦和を挑発していた横浜DF・栗原選手にあたり、『ボールがおいしい所にきた』(山田暢選手)とアシストする形になっての山田選手のシュートが横浜ゴールネットを揺らした。『マルシオ(マグロン)が山田のマークを外してしまった。』(榎本選手)と悔やんでも悔やみきれない失点だった。
『こういう試合はセットプレーがお互いにとって重要』と鈴木啓太選手が試合前に話していたように、セットプレーを確実に決めた浦和が先制して前半を終了した。
先制された横浜は『攻撃のアイデアを持って出していこう。1点は仕方がない。気持ちを切り替えていこう』(岡田監督)と本来目指す左サイドを軸に右サイドを有効に使うスタイルを強調する。右サイドの吉田選手にも『どんどん前に上がれ』と指示を出し、首位堅守&独走に向けて追撃体勢を整える。一方の浦和は『リードされた事で点を取らないといけなくなった後半はF・マリノスがさらに攻勢をかけてくるだろう。それにしっかり対応してカウンターのチャンスを狙っていこう』(ブッフバルト監督)とあくまでも守備を徹底してのカウンターに備える。ここまで浦和がカウンターを狙うというのは今年初めての事で、それだけ横浜に対して慎重になっていた。そしてそれが後半も効果を発揮する事になる。
後半開始早々、横浜の攻撃を防いだ後のカウンターでポンテ選手からのパスに反応したワシントン選手が松田、中澤の両ディフェンダーを引き連れながらシュートを放ち、浦和2点目を獲得する。『ワシントンに(昨年の)ゼロックススーパーカップと同じような形でやられてしまい、悔しい。』(中澤選手)と、ワシントン選手がヴェルディ時代に中澤選手を引きずりながらゴールを決めたあのシーンを彷彿させる、日本を代表する2人の名DFとの2対1を制してのゴールだった。
2点をリードされた横浜は早さのある田中選手、清水選手を投入して全体のスピードをあげて高い位置へ相手を押し戻そうとする。一方2点をリードした浦和はそれまで横浜DF松田選手と一進一退の攻防を繰り広げていた三都主選手が左サイドの高い位置を確保し始め、一方の右サイドも山田選手がブラジルトリオの間をするすると抜けて高い位置を確保しはじめる。両サイドを制され始めた横浜は前半とはうってかわって次第に低い位置に下がり始め、『プレッシャーがきつく、足が止まってしまった』(岡田監督)というように、浦和の止まらない攻撃に横浜が押されはじめた。
また、自慢のブラジルトリオも『横浜は外国人選手がいいのでそこを潰さないといけない』(長谷部選手)という浦和の厳しいマークに耐え切れず『中盤のプレッシャーもきつくて、ボールが回せなかった』(ドゥトラ選手)、『普段のサッカーができなかった』(マルケス選手)と、下がりはじめ次第にDFラインに吸収されて守備に専念する時間が増えていき、反撃のきっかけがなかなかつかめない。
『本調子までまだ時間は必要だ』(岡田監督)と頼みの久保選手も坪井、闘莉王の両DFにフィジカルで完全に負けて中でプレーができない。自慢のサイド攻撃も徹底したサイド潰しでクロスをあげさせれてもらえず、次第に久保選手も右サイドに追いやられて中央に飛び込む選手がいない状況で、全てのエリアで完全に手詰まりの状態になった。
この状況を打開しようと横浜は後半の終盤に大島選手を投入し、更に攻撃性を高めようとする。また、三都主選手に制された左サイドを捨てて松田選手をSBから中盤にポジションチェンジさせて中央からの突破も目指す。それが効を奏したのか、後半44分マルケス選手からのクロスに三都主選手に乗っかる形で大島選手が頭で合わせて1点差に迫る。
この得点で『まだいけるとは思った』(松田選手)ホームで負けるわけにはいかない横浜は同点を目指し盛り上がる。
しかし横浜の最後の望みを断ち切ったのはこの男だった。
『相手が点を取らなくてはいけないということで、3バックが開いてしまい、中央のスペースが空いていたのでそこを突いた。』
日本代表MF 長谷部誠。
●横浜F・マリノス 1-3 浦和レッドダイヤモンズ○
(浦)山田暢、ワシントン、長谷部
『個々での勝負がポイント』(鈴木啓太選手)、『1対1でも、ことごとくボールを奪われた』(榎本選手)と組織力で4連勝を飾ってきた横浜に対して、同等の組織力を徹底してそこから1対1の個人の力での打開を試みてそれを制した浦和が横浜に今季初黒星をつけた。
浦和と横浜の差は個人の能力もさることながら、『ボールがうまくつながらない時間帯も、みんな切れずにしっかりと守備をやった』(坪井選手)、『相手の集中力が上回っていた』(中澤選手)という苦しい時間帯でも途切れなかった強い精神力の差が決定的な差だった。前半の高い位置の奪い合いの中で高い集中力を発揮して横浜のブラジルトリオを封じたキャプテン山田暢選手の作り出した流れは大きい。
そして最後に、久保、マルケスという両FWへのハイボールをことごとくクリアして仕事をさせなかった闘莉王選手のクオリティの高いパフォーマンスを試合後の両指揮官はこう称した。
『言いたいのが闘莉王のことだ。彼はディフェンスをよく統率して素晴らしいパフォーマンスをしてくれた。ヘディングでは一度も相手選手に負けなかった。日本のベストディフェンダーだろう。日本代表監督にも、ぜひ分かってもらいたい。』(ブッフバルト監督)
『今日のレッズのディフェンスは、本当に素晴らしかった。』(岡田監督)
青く澄んだ晴天の横浜の空を赤く焦がした赤い悪魔達が日本の頂点にたった日となった。
編集後記はコチラ → 『3月26日 編集後記』
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