下位に低迷するも、日本代表FW佐藤寿人選手を擁するサンフレッチェ広島を埼玉スタジアムで迎え撃つ浦和レッドダイヤモンズの見ごたえのある試合です。
Jリーグ第23節 埼玉スタジアム2002 39,123人
浦和レッドダイヤモンズ 2-1 サンフレッチェ広島
(浦)田中マルクス闘莉王、山田暢久
(広)ウェズレイ
佐藤寿人とウェズレイの脅威の破壊力
浦和の失点の少なさはリーグで断トツなのは有名な話ですが、この試合に関しては
その自慢の3バック(闘莉王、坪井、堀之内)もこの2人を扱うのに苦労していました。
特にウェズレイ選手の突破力にはさすがの坪井選手も苦しそうでした。
ウェズレイ選手の良さはボールを受けた後の速さと重さではないでしょうか。
ボールを受けてから、相手DFとボールの間に自分を入れて突破の姿勢を作るのですが
その時の腕の使い方が素晴らしいですよね。心の中でうーん・・・と唸ってしまいます。
DFからみたら、ボールと自分の間に鉄の壁が存在していてボールが遠く見えるので
はないでしょうか。
そこでボールがキープできて落ち着くため、佐藤寿人選手の走りこむスペースが出来て
いきます。この試合でもやはりウェズレイ選手がタメを作って佐藤選手に・・・という
シーンが何度もありました。しかしそこには浦和のMr.マンマークの堀之内選手がきっち
りついているシーンが多かったので、佐藤選手自体はこの試合で何ができたかというと
むしろ完封されたという印象が強いでしょうね。
しかし監督交代によってサンフレッチェのサッカーには連動性というものが出てきました。
いわゆる『たたみかける』サッカーというやつですね。ウェズレイ・佐藤の2枚FWにまかせっきり
だったサッカーが目立った結果の前半戦の成績でしたが、この試合では終盤こそスタミナ切れ
を起こしましたが、前半からFWが潰れたあとの寄せというものが森崎選手を中心としたMFで
やれていました。
現在の順位にいるサッカーではない事は確かです。後半戦の広島はもう少し巻き返せる
内容のサッカーができていますので、完成されていない今の段階で広島と戦えたのは浦和
にとってはラッキーだったかもしれません。
とにかくウェズレイはやばい。
3バックを攻略しようとした2人
この試合、浦和レッズはウェズレイ、佐藤寿人の2枚看板を封じる為に(1)中盤でのポゼッション
をあげて支配する事で広島のカウンターの回数を減らす。(2)出場停止の鈴木啓太選手の
穴は酒井、三都主、長谷部の3人で埋めて常時3バックを維持し、場合によっては4バック
状態で守る。(3)我慢。という事が大きなテーマでした。
Jリーグ最強の守備を誇る浦和レッズであっても、広島の2トップをいかに脅威に感じていたか
は浦和の守備からも垣間見る事ができます。
まずこの図をご覧ください。
佐藤寿人、ウェズレイの2人が3バックの隙間に入り込む形でポジションをとっています。
これがこの試合の基本的な形でした。浦和も1対1を作らずに常に2対1で佐藤、ウェズレイ
を見る形を取り、この位置関係はどちらにとってもポジティブなポジショニングと言え、
この形によって好結果がでるかどうかは、双方の狙いによる部分が非常に大きいと考え
ました。
まず、浦和としては佐藤、ウェズレイが素直に突破を狙いにきてくれればさほど怖くなく、
彼らにパスが入ってシュートという流れであればほとんどが防げる状態です。実際、
変化のつかない流れで佐藤、ウェズレイにボールが入ったシーンでは難なくクリアし
ていました。
しかし、変化をつけるのは当然といえば当然なのですが、この試合で佐藤、ウェズレイ
が見せた浦和の3バック攻略は面白いというか、ちゃんと事前に対策を考えているな
と思われるものでした。
まず、浦和DF3人に対して、佐藤、ウェズレイが2人で数的差を壊しにいきます。上の図のように佐藤寿選手が堀之内・闘莉王間から抜け出して坪井・闘莉王間の裏に入ります。この坪井・闘莉王間には既にウェズレイ選手がいるため、この時点で2対2になるうえ、DFとしては嫌な前後の関係になっている為に2対2で完全に佐藤、ウェズレイが数的有利にたっています。また、広島は佐藤寿選手を利用してウェズレイ選手で決めようという狙いもあったようで、佐藤選手がバイタルエリアを空けるためにDFを引き連れた動きをしていたのに対して、ウェズレイ選手はそのバイタルエリアを狙う動きをしていましたね。
しかし、浦和がこれを我慢できたのは坪井、闘莉王の2人が踏ん張ったというのもありますが、このようなシーンで堀之内選手が佐藤選手につられていかなかった事も大きかったと思います。ここで堀之内選手が佐藤選手によって少しでもつられてしまう事で右サイドがガラ空きになり、広島の森崎選手をはじめとした2列目の選手が飛び込んでワンチャンスで山岸選手と1対1になってしまいます。佐藤寿選手の狙いとしては数的有利を作り出す事+自分の動きで2列目のスペースを作り出す事ですからその点で堀之内選手がよく我慢していたなというのは感じました。
そしてそこを見ていたベンチからの指示なのか、選手の意思なのかはわかりませんが、要所要所で三都主選手が下がり目のポジショニングで駒野選手を見つつ、4バック気味にしていたので佐藤、ウェズレイの2人が数的有利なエリアを作ろうとしてもなかなかそうはいかなかったというのもありましたね。
また、三都主選手が下がり気味の位置を取ることでサイド攻撃の威力が半減し、全体が下がり気味になるんじゃないかという不安もありましたが、逆サイドの平川選手が常に高い位置を取ることで広島の左サイドが思うようにあがれず、堀之内側への負担を減らす&積極的な攻撃で全体を押し上げるという徹底さもチームとしての戦術の徹底という点ではとてもよかったと思います。
広島としてはFWの2人の狙いがよかっただけに、それをフォローする選手の動きが後半の半ばからきえていったのが惜しまれるところでしたね。
シュートを打つロブソン・ポンテ
今年は昨年までの豪快なシュートチャレンジが鳴りを潜めていた浦和の背番号10・ポンテ
選手ですが、この試合では積極的にシュートを打ちに行く姿勢がみられました。
浦和はワシントン選手の加入によって、彼へのラストパスをする為の動きを全員がしてし
まっていた部分があり、これまではワシントン選手が期待にこたえているために表面化し
てはいませんが、ワシントン選手が不調になった場合の時の事を考えると手放しで喜べる
状態ではありませんでした。
しかし、この試合では田中達也選手と交代で出場し、フォーメーションも3・5・2から3・6・1
となり2列目からの飛び出しを果敢に狙い、チャンスがあればシュートを放つという、3・6・1
の2列目の役割をきちんと果たしていました。この動き、意識は昨年天皇杯制覇までかけ
あがったシーンと同質であるため、このようなプレースタイルがポンテ選手に帰ってくれば
非常に大きな武器を浦和は取り戻したと言えるかもしれません。
他選手と被る小野伸二
個人的に気になるのが、小野選手と他選手のポジションの被りです。
普段から長谷部選手のストロングエリアで被って長谷部選手を中盤の底に閉じ込め
てしまっている感も強いのですが、この試合でもトップ下でスタメン出場をした小野
選手ですが、田中達也選手のポジションと被るシーンが非常に多く見受けられました。
3・5・2における1.5列目としての役割というよりも、この動きはむしろ3・6・1の2列目の
動きのままで、小野伸二という世界へ飛び立った選手がこのフォーメーションの差を
わからないわけがなく、もしかしたら『代表』という部分への強い思いが彼にそのような
動きをさせているのかもしれません。
昨年と今年を比べてみると、昨年は中盤の底からワイドに展開して連動で組み立てて
行ったのに対し、今年はワシントン、小野と新加入の選手による前線の圧力+闘莉王
選手で勝利を奪っている感じがあります。
今年のほうが強いチームの形ではあると思うのですが、個人の力に偏りすぎていく
リスクも背負っており、あくまで個人的な考えではありますが昨年の形もオプション
の1つとして残していく必要があると思っています。
このフォーメーションの良さは、前線に張る選手特有のエゴイストであるワシントン&ポンテ
が前線で暴れる所に『カバーリング』の上手な山田暢選手を入れる事で前線のバランスが
よくなる所にあります。昨年もマリッチ&ポンテが動き回ってできたエリアに山田選手は顔を
出していました。また、左の三都主選手が深い位置に食い込んだ際の左サイドの守備もで
きる上、攻撃時の長谷部選手のエリアを壊さないという点でも良いのかなと思います。
極力堅実に勝ち点を取りに行く必要がある後半戦では重宝してもいいフォーメーションだと
思います。
山田暢選手の運動量が落ちてきたら、そこに田中達也選手を入れるのも面白いかもしれ
ません。田中達也選手の場合は、前の3人の位置をどれでもこなせるユーティリティ性が
あるので、完全復調まではスーパーサブの起用でもいいのではないかと思います。
あれだけの長期にわたる大怪我休養の後にこの過酷日程では、調子を落とすだけだと思い
ますので。
秋~冬は暢久の季節
夏場の暑い時期を過ぎて涼しくなり始め、いよいよ1試合1試合が重要になってくるシーズ
ンになると必ずやってくる男『山田暢久』。1歳上の地元の偉大な先輩であり、近所の子
長谷部くんと共に強力に応援している選手です。
多少贔屓目に見てしまっている部分がありますが、この試合も1-1で終わるかと思われた
後半40分過ぎに三都主選手のクロスに1番外を回ってあわせてゴールを決めました。
3・6・1の2列目の働きとして見事でしたね。この試合、途中出場でしたが豪快なミドルも
枠に行っていましたし、長谷部選手へのゴール前での浮き球パスも見事でした。
恐らく代表には興味がないと思われますが、この無欲感がシンプルに浦和の勝利へ向
かっているために、周りを活かせるMFとしての存在感をこれから増してくると思うのです。
山田選手だけではありません。黒部、岡野といった代表を最優先目標としていないベテラ
ンは浦和の優勝に全てをつぎ込んできますので、涼しくなっていくこれからはベテランを
もっともっと重要なシーンで起用していくのではないでしょうか。
同時に、優勝争いをしている各チームも、ベテランの働きが重要になってくるのは言う
までもありませんね。
最後に、この試合でお互いが正面衝突をするくらい(実際は何度も衝突していた)、体を
張ってゴールを守り続けた坪井・闘莉王の気迫に敬意。