原宿で夜に同窓会があるので、その前に美術館にでも行ってみようかと昨夜調べました。
浮世絵で有名な太田美術館に前々から行ってみたかったのですが、今の特別展示が「お化け」。浮世絵のお化けは気持ち悪いものが多くて敢えて見たくない💦またの機会にしましょう。
それで、小さな写真の展示会ですが、興味があるものを見つけました。
阿部裕介 写真展「Shanti Shanti」
インド・バラナシの変わりゆく街並みと、そこに暮らす人々の変わらない眼差し。
激動の時代に生きる彼らの日常を捉えた作品が展示されます。
父が若いころにインドに駐在していたので、旅行会社のツアーへの参加の形でしたが、母と大学生の私を連れて行ってくれたことがあります。
バナラシ(かつてはベナレスと呼びましたが)にも訪れ、そのガンジスの沐浴の聖地には衝撃を受けました。
遺体を葬っている人、その横で身を清めている人、病をいやすために浸かっている人(皮膚病と思われる外見の人も)、洗濯をしている人…暑さと喧騒と匂いとで正気ではいられない世界でした。
そのバナラシを写した写真展。15枚だけというけれどぜひ行ってみたいと思いました。
場所は「ライカ表参道店」
聞いたことがありませんでした。2024年4月12日にオープンしたてのようです。
表参道から一歩入った隠れ家的なエリア。建物自体にも興味あります♪
ライカ表参道店が2024年4月にオープン! ライカギャラリーも併設 | CAPA CAMERA WEB (getnavi.jp)
キャットストリートを一本入った静かな一角にありました。
本当に小さな展示会。
そして、混沌としたこの世とも思えないようなショックな写真が展示されているのかと思っていましたが、違いました。
ありきたりな日常の風景でした。
阿部さんはもっと衝撃的な状況を見ているはずで、そういう写真をとれたのではないかと思いますが、敢えてそうではない被写体を写したのは何故なのかな?
ガンジス川の風景も、裕福な観光客が記念写真を撮っているような場面です。
沐浴の風景も、必死でこの聖地にたどり着いて神にすがって祈りながらという緊迫感がありません。
川の手前の通りでは、日本では見ないような5人乗りとはいえ比較的裕福な家族が写されています。
印象に残ったのは、この2枚。
この写真は私が見た光景に少し近い。でも、きちんとした身なりの人が多いので実際の緊迫感はありません。
上の写真のように、阿部さんは全体的な状況よりも、一人一人の表情に注目しています。
インド・バラナシの変わりゆく街並みと、そこに暮らす人々の変わらない眼差し。
激動の時代に生きる彼らの日常を捉えた作品
とこの展示会の副題にありましたが、携帯まで写っている作品もありました。今のバナラシで人々の生活は変わっているのでしょう。でもそのまなざしは変わらないところに注目し、写真に残したのだろうと思います。
この展覧会の名前は「シャンティ(Shanti)」。サンスクリット語で「平和」「平穏」「静寂」などの意味を持つ言葉です。心の癒しをもたらす言葉として知られています。また「内なる心の平穏」や「世界の平和」を願う祈りの言葉としても使われます。
現地で混沌とした世界を見た阿部さんだからこそ、そのような状況でも微笑んでいたり、目が輝いていたりする人々を撮ったのかもしれませんね。
傍らに置いてある本に、展覧会で飾られている写真以外の作品が載っていました。
こちらのほうが、わたしが見たかった情景がありました。
私は単純に自分が訪れたときのベナレスを見たいという目的だったので、私にとってはこちらの方が懐かしく、いろいろ思い出させてくれる写真でした。
◆阿部 裕介 Yusuke Abe
写真家。1989年東京生まれ。青山学院大学経営学部修了。大学在学中より、アジア、ヨーロッパを旅し、写真家として活動を開始。女性強制労働問題が残るネパールで撮影した「ライ麦畑にかこまれて」、パキスタンの辺境に住む人々の生活を写した「清く美しく、そして強く」などの写真展を開催。
2019年刊行よさこい祭り写真集「ヨサリコイ」。インドの電車旅の記録とバラナシの街を撮影した最新写真集「Relagaadee」、「Shanti Shanti」を発売中。