定刻より2時間遅れの10時過ぎにローマに到着。
それでも、ホテルに荷物を置いて、夜中のローマへおでかけしました。
テルミニ駅はムッソリーニが建造させたという巨大なモダニズム建築の現代的な駅舎。
中世の街並みが色濃く残るローマでは、異色にも見える。
街を見て回りたかったので、地下鉄に乗らず徒歩で、スペイン広場へ。
ホテルの人に「夜中に歩いて安全?」と聞いたら「全く問題ない」と返事が来たように、
実際、とっても安全で、予想よりはるかに明るかったです。
前回ローマへ行った時は、子供連れの女性スリや、近付いてくる男の人がいたりして、
夜は怖かったような記憶があったんだけど、そういう人たちはほとんど見なかった。
スペイン広場へ向かう道。観光客も地元民も多くて、多少暗くても安全な感じ。
右はバルベリーニ宮殿
スペイン広場へ行く途中途中は、中世の建造物だらけで、
全部知ってたら面白いんだろうなぁと思いながら、よくわからず写真を撮りながら歩く。
(そのうち、こういった建造物がありすぎて、写真撮るのははやめたw)
将来、中世ヨーロッパ(殊にローマカトリック)に興味が沸いたら、また来よう。
Fontana dell'Acqua Felice(モーゼの噴水) *1
気がつくと、スペイン広場に到着。
はす向かいにスペイン大使館があるからスペイン広場という名前なのだろうか。
夜中だったので、きわめて人が少なかった。翌日の昼は、人で階段が埋まっていたけど。
ローマの休日でアン王女が座ってジェラートを食べた場所に座ってみたり。
夜中だったからか、地元の若者が多くて、ギターの弾き語りをしていたりして、
昼間の観光客で埋まった階段とはまた違った、とっても平和な雰囲気。
さらに歩いて、トレヴィの泉へ。
ここもローマの休日や、後ろ向きにコインを入れることが有名なんだけど、
私の興味は、古代ローマ時代に作られた水道にあった。
ヴェルジネ水道の終点として作られた、トレヴィの泉。
スペイン広場の階段下にあるバルカッチャの噴水も、
ヴェルジネ水道から水が供給されている。
このヴェルジネ(イタリア語)水道は、中世に、
古代ローマ時代に作られたヴィルゴ(ラテン語)水道を再建したものだ。
(少し前に所ジョージ氏の「笑ってこらえて」というテレビ番組で特集をしていたので
見た方も多いのでは。地下水道にボルゲーゼ公園の木の根が張り出したりしていて、
とても興味深かった。)
ヴィルゴ水道は、古代ローマの皇帝アウグストゥスの時代に完成したもので、
ほとんどが地下水道であり、現在でも古代の遺構を見られる場所がある。
遺構(画像の出典:Wikipediaイタリア語版「Aqua Virgo」項目)
ローマ時代の水道において、水を運ぶ仕組みは、高低差によるものだったんだけど、
このヴィルゴ水道の高低差は、水源からローマまで約20kmで、なんと4mだけ。
ものすごい測量・建築の技術が古代に存在していたのがわかる。
ローマ時代、この水道は、ローマ初の大型公衆浴場であるアグリッパ浴場に、
なみなみと水を注いでいたらしい。
アグリッパ浴場は、熱い浴槽、ぬるま湯の浴槽、水の浴槽、サウナ、と
たくさんの施設が完備されていた、まさにテルマエ・ロマエの起源。
(画像の出典:Wikipedia日本語版「アグリッパ浴場」項目)
ローマ帝国の衰退とともに、あれだけ整備されたたくさんの水道は崩壊し、
豊富な水の供給手段がなくなっていったため、
中世のローマの人口は古代ローマに比べて、圧倒的に少なかったと言われている。
このヴィルゴ水道は、帝国崩壊後、かなりの年月が経って、
8世紀に教皇ハドリアヌス1世が修理し、
そして15世紀にニコラウス5世が、ヴェルジネ水道として完全に復活させて、
今では、水道の終点がこのトレヴィの泉になっている。
今でも、このヴィルゴ水道は、他にも多くのローマの噴水に水を供給しているので、
古代ローマの想像をしながら、中世の彫像を見るのもおもしろい。
スペイン広場へ歩く途中にあった広場の真ん中にも噴水があった。
バルベリーニ広場にある「トリトーネの噴水」。ベルニーニの作品。
このトリトーネの噴水は、フェリーチェ水道から水が供給されている。
フェリーチェ水道は、中世のローマ法王が完成させたものだが
やはり古代ローマ時代のアレクサンドリナ水道の水源から取水し、
これまた古代ローマ時代のマルキア水道の跡を使って導水管を通したらしい。
(以上、全く出来ないイタリア語を読んで書いているので、間違いの可能性あり。)
帰って調べてわかったことなんだけど、
この記事の画像3枚目のモーゼの噴水(*1)は、フェリーチェ水道の終点だそう。
fontana chiavica del bufalo
ローマ市内には至る所に噴水があり、中世の立派な彫刻の噴水もあれば、
古代の噴水の遺構もあれば、蛇口だけが出ている水飲み場のような場所もあって、
夏の暑いローマで、市民や観光客が、手を洗い顔を洗い、ペットボトルに水を汲み、
とても親しまれていることがわかる。
千数百年以上経っても、同等以上の水道システムが作られなかった、
古代ローマの水道システムの素晴らしさが伝わってくるよう。
以上、ローマ到着日の様子でした。
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『水道が語る古代ローマ繁栄史』 中川良隆
建築・工学の専門家である著者による古代ローマの水道についての書籍。
古代ローマのきわめて高い技術のみならず、
インフラ整備から読み取れる優れた政治思想についても、
大変楽しく面白く興味深く読める。
興味深い内容の一つが、江戸の上水との比較を行っており、
上水についても丁寧に解説をしているところ。
古代ローマについて、たくさんの本を買い込み、読みかけな本が大量にある中で、
おもしろくてあっという間に読み終わった一冊です。
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ローマの噴水については、Wikipedia イタリア語版が詳しい。
http://it.wikipedia.org/wiki/Fontane_di_Roma