間違われ電話の主④ | LOVELOG

正直言って、何回かかってきたか覚えていない。

数を数えきれないぐらい、かかってきているからだ。


そう。戸塚さんですか? と言う相手から。


戸塚さんに用事があるのか、頻繁にかかってくる時があった。

なので、番号は覚えていないものの、なんとなく

戸塚さんですか? からの電話だと分かっていた。


その時は、相手から言われる事も、アタシが言う事もお決まりなので

電話に出なかったんだけど、出ないと出て欲しいという

恋愛でいうところの、逃げる相手は追いかけたいタイプなのだろうか。

本当に、戸塚さんですか? の戸塚に対する執着がヒドかった。


そう考えると、思わせぶりな戸塚を演じているようで

イヤだったけど、電話に出て同じことを繰り返す方がもっとイヤだった。

アタシはまだ子供だったのだ。


数年後、見知らぬ着信から電話が。ここまで書いたら、相手はおわかりだろう。

言うまでもなく、戸塚さんですか? からだった。


数年も経っていたので、さすがに番号を忘れていたアタシの負けだ。

仕方がなく、今回も「違います」と言い、事を終えたが

アタシは気づかぬうちに大人になっていた。


戸塚さんですか? からの番号をアドレス帳に登録したのだ。

名前はもちろん、戸塚さんですか? だ。


それからは、着信があるとスグに分かるので、出ることが一切なくなった。

初めから、そうしろよと言われそうだが、間違い電話を登録するってのもナンだし

そもそも、この間違い電話が数年にも渡ってかかってくるなんて

予想ができなかったからだ。あの時、アタシはまだ子供だったのだ。


だけど、戸塚さんですか? は一枚上手だった。