正直言って、何回かかってきたか覚えていない。
数を数えきれないぐらい、かかってきているからだ。
そう。戸塚さんですか? と言う相手から。
戸塚さんに用事があるのか、頻繁にかかってくる時があった。
なので、番号は覚えていないものの、なんとなく
戸塚さんですか? からの電話だと分かっていた。
その時は、相手から言われる事も、アタシが言う事もお決まりなので
電話に出なかったんだけど、出ないと出て欲しいという
恋愛でいうところの、逃げる相手は追いかけたいタイプなのだろうか。
本当に、戸塚さんですか? の戸塚に対する執着がヒドかった。
そう考えると、思わせぶりな戸塚を演じているようで
イヤだったけど、電話に出て同じことを繰り返す方がもっとイヤだった。
アタシはまだ子供だったのだ。
数年後、見知らぬ着信から電話が。ここまで書いたら、相手はおわかりだろう。
言うまでもなく、戸塚さんですか? からだった。
数年も経っていたので、さすがに番号を忘れていたアタシの負けだ。
仕方がなく、今回も「違います」と言い、事を終えたが
アタシは気づかぬうちに大人になっていた。
戸塚さんですか? からの番号をアドレス帳に登録したのだ。
名前はもちろん、戸塚さんですか? だ。
それからは、着信があるとスグに分かるので、出ることが一切なくなった。
初めから、そうしろよと言われそうだが、間違い電話を登録するってのもナンだし
そもそも、この間違い電話が数年にも渡ってかかってくるなんて
予想ができなかったからだ。あの時、アタシはまだ子供だったのだ。
だけど、戸塚さんですか? は一枚上手だった。