神戸ファッション美術館考。 | 大石よしのりオフィシャルブログ Powered by Ameba

大石よしのりオフィシャルブログ Powered by Ameba

誠意・敬意・熱意をモットーに、希望の種を蒔き続けています。
大石欣則

 ブログを書く頻度は、ボクの1/100くらいですが、内容の濃さはボクの100倍くらいかな!?


 神戸リメイクプロジェクト 副代表 辻村謙一、けんちゃんのブログから...目



http://blog.livedoor.jp/kgiba/archives/51559786.html


将来を予測する最善の方法は、
 自ら将来を形作ることである。
【ピーター・F.ドラッカー】



先日、あるミーティングに参加した時の事。
地域の活性化に関する事がテーマの、ミーティングでした。
非常に活発な意見交換が出来たのは良かったのですが、神戸市の市会議員の方が集中砲火を浴びせていた対象の一つに、神戸ファッション美術館があります。
日本で唯一つの公立のファッション専門の美術館が、神戸の六甲アイランドにあります。
因みに神戸ファッション美術館の現在の指定管理者は、財団法人神戸市産業振興財団です。

この神戸ファッション美術館の外観は、異様に迫り出した屋根に該当する部分が印象的なのですが、設計された方の意図は未来と現在とを繋ぐシンボルだと聞いた事があります。
イメージはまさにUFO。
動く柱とかのレトリックもあり、かなり斬新な建物である事は間違いありません。
4層の内部を有し、延床面積は1万7千平米というそこそこな規模を誇ります。
竣工は1997年なので、震災後に建築された近代的な施設です。

言うまでもありませんが、美術館や博物館は、貯蔵品を展示して公開するための施設です。
もう一つ大切な役割は、美術品や芸術品等を維持保管するという機能もあります。
しかし、基本的には美術館や博物館は、後者の機能が優先される事が多く、出来る事ならば展示は出来るだけしたくないのが本音なのだとか。
何故ならば、展示すると劣化が多少なりとも進むからだそうです。
展示のために貯蔵している美術品が、展示をするとお客様には喜ばれるのですが、美術品としての価値が逓減して行く…。
二律背反の現実をどのように解消するのかも、美術館や博物館の大きなミッションと言えるでしょう。

従って、幾つかの美術館や博物館は、劣化の進みそうな美術品や芸術品のデジタル・アーカイブ化を進めています。
デジタルデータは基本的に劣化しませんから、その特性を活かして展示物をデジタル化して利便性を高める取り組みも本格化しつつあります。
問題は技術レベルも日進月歩、現時点での最高レベルが果たしていつまで通用するのか。
未来への投資が無駄にならないように、現在も非常に高度な技術革新が進んでいます。
私の勝手な感想ですが、精緻化という観点から判断しても、その映像レベルは現時点で、必要十分条件を満たしていると思います。
更に、デジタル・アーカイブ化は、目視出来ないレベルの小さな箇所をクローズアップ出来るのも、そのメリットの一つです。

基本的に神戸ファッション美術館に貯蔵している美術品は、衣服が中心なので当然ですが立体的です。
それを二次元のデジタル・アーカイブ化する作業を行ったところで、撮影したモノをそのまま展示しても、恐らくは面白くもなければ、値打ちもありません。
しかし、劣化は確実に進みます。

このディレンマを、何とか解決出来ないものか…と考えて、あるプロジェクトがスタートしました。
詳細は端折りますが、時間と手間を非常に必要とします。
私もこのプロジェクトに関わらせて頂いているのですが、完成した時のインパクトは非常に大きい筈なので、その時を夢見て、諦めずに少しずつ歩を進めて行きたいと思います。

先の市会議員の方が仰った意見が、大方の神戸市民の感想なのだとしたら、かなりガッカリします。
神戸市が巨額の資金を投入して作ったやたら目立つ建物に、何か訳のわからない展示を繰り返している場所。
…多分、そんな感想なのでしょうが、チョッと寂しいと感じます。

何といっても神戸は、日本で初めてファッション都市宣言を行なった都市です。
今から37年前の昭和48年の事。
今でこそ、金沢や八王子がファッション(産業)都市宣言をなさっていますが、神戸市はその草分けです。
繰り返しますが、神戸市はファッション都市です。
昭和48年当時の神戸商工会議所や故宮崎辰雄神戸市長が音頭を取って、ファッション産業を服飾に限らず、衣・食・住・遊の各分野において新しいライフスタイルを提案する生活文化産業として把えて宣言したのです。
こんな素敵な宣言をした都市は、他にないと思います。
“株式会社神戸市”と揶揄され、羨ましがられた、神戸市が最も華やかな時代の事ですが、残念ながら繋いで行く…という事を怠ったために、いつの間にか、その素敵な財産の価値の周知が広まらなくなって来たように感じます。
この発想が秀逸だと思うポイントは、ファッションを文化としてのみならず、産業としても捉えている事にあると思います。

神戸ファッション美術館は決して悪くない。
それを活かさない事こそが功罪なのです。
今からでも遅くないので、活かしていくための活動を始めるべきです。
精一杯利用する方策を考えるのは、市ではなく市民の筈です。
市民は受動ではなく、常に能動的に活動しなければなりません。
そして、実は当該施設には活用するだけの物的人的資産があるのですが、それを理解して頂けていない事こそが、最大の問題点だと思います。
これは、管理者のお仕事ですよね。
何よりの問題は、管理者である神戸市の関係者がファッション美術館の貯蔵品への愛情の欠如と、認識不足。

歴史的資産を“古着”と言う愚かな方が、残念ながら未だいらっしゃるのは、とても悲しい現実です。

さてさて。
神戸ファッション美術館の優位性は以下の3つに集約されると思います。
*施設設備
*学芸員
*貯蔵品

これを活かさない手はありません。
施設設備や学芸員の優位性は直接訪問して頂ければ、直ぐに理解して頂けると思います。
貯蔵品に関しては、殆どが貯蔵庫に眠った状態ですので、外部の方には全くわかりませんが、これは前述の事情から。

私は幸いにも、その殆どを目にした事があるのですが、ひと目見てその作品の素晴らしさを理解するのは困難です。
ジックリと目を凝らして初めてその壮絶な技法や、制作に携わった方々の想いに圧倒されながら、その服を着ていた方々の事や、その時代等を想像しながら暫しその場に佇んでしまいます。
特に刺繍やレースに、それは凝縮されています。

レース(Lace)とは、簡単に言ってしまえば、糸を使って模様や布状に仕上げた作品の事。

レースの歴史は非常に古く、紀元前1500年頃のエジプトでは、網状のレースや刺繍レースが使用されていたそうです。
長く、模様や飾りのような実用的な用途で使われていたのですが、16世紀のイタリアで従来のニードルレースに加えて、ボビンレースという手法が開発され以来、格段にその技術が進歩しました。
フランスや英国に飛び火します。
しかし、英国で起こった産業革命により、機械織りのレースが普及し出すと、手作りのレースは殆ど出て来なくなりました。
従って、現存する芸術的な技法で編まれたレースは、1800年前後を最後に消失した技法の貴重な痕跡なのです。

しかし、今も手編みのレースを作る人たちは少ないながらも残っています。
今年の7月9日~11日に、OIDFA世界レース大会が神戸で開催された時に、沢山の国々から神戸にお越しになられたレースファンの多さに驚かされました。
その際にも多くの方が、ボビンレースによりレースを作るパフォーマンスをなさっていらっしゃいました。

他方、刺繍の世界も奥深いと感じます。
古代中国の刺繍は3000年近い歴史を持つと言われております。
周の『礼記』に、養蚕や刺繍に関する記載があるそうです。
各国に独自の刺繍技法があり、それをあたかも画家による技法の違いを楽しむが如く、愛でる事も可能です。
特に王様のいらっしゃった国では、独自の刺繍が発達したようです。

王様が、自分の服を作るためだけに、刺繍職人を住まわせていた程ですから、技巧的にも恐ろしく凝っています。
手間も物凄くかけています。
恐らく、1着の服を作るのに複数の職人の手により、十年以上かかかっている筈です。
それだけの痕跡を目の当たりにすると、その衝撃は想像以上です。

それだけ、国王は権力と財力を保持していたのですね。

その痕跡や証が、神戸の美術館の貯蔵庫に眠っているのです。
それを古着という言葉でしか表現できない人の、何と悲しくも哀れな事か。

先日、中国の明の時代の刺繍に触れる事が出来ました。
手織りと手縫いと手刺繍と、更には手書きとがブレンドされた実に不思議な存在感を有する作品でした。
現有する作品も少なく、一着辺りの価値はビル一棟に値するのだとか。

これらの作品の本当の価値を、可視化出来たら素敵だな。
見たい人が見たい時に見る事の出来る状態にしておく事が出来たら、喜んでもらえるに違いない。
そう信じてプロジェクトに参加しています。

見栄えと費用対効果の高さだけが値打ちの、ファスト・ファッションに席巻された現状に対して、辟易している私はこの作品を…この作品の技巧や価値を次世代に残す事で、現状へのアンチテーゼとなればと思って、この活動を続けていくつもりです。

本当に凄いんだから。

--------------------------


  同感です。


 近日中に、神戸リメイクプロジェクト 

 サポーターズ倶楽部優先企画を実行します走る人


神戸は、きっともっとずっと素敵になる瀬里花マーク

神戸リメイクプロジェクト 副代表

メラメラ大石よしのりメラメラ



大石よしのり 「神戸は、きっともっとずっと素敵になる!」

ペタしてね