今日も備前屋さんで仕事をした小藤次さん。
近所のおかみさん達が持ってきた刃物を研いだり、
包丁鍛冶の研ぎを手伝ったりと忙しい一日です

長屋に戻った小藤次さんは、駿太郎くんと勝五郎さんと
3人で銭湯へと向かいました。
しかし、ここでもお金を盗もうとした浪人さんと遭遇

見事捕まえた小藤次さん。
勝五郎さんは仕事のネタになるかもしれない
と、
難波橋の秀次親分を呼びに行った後、
空蔵さんの元へと走っていきました

湯へ入ると大家のお麻さんのご主人・桂三郎さんが入っておりました。
後から来た秀次親分も加わります
話題は事件の話から、小藤次さんの芝居見物の話に。
小藤次さんの知らないところでどんどん騒ぎは大きくなっているようで、
当日は奉行所から警固の人数も繰り出されるとか。小藤次さん複雑な気分です。
帰り道、桂三郎さんが不意に、
「私には赤目様のお気持ちがよく分かります。
ただの芝居見物がかように大仰になっては、芝居を楽しむどころではありませんよ。」
と言いました。
「なんとも複雑じゃな。」
しばらく沈黙して歩いていた桂三郎さん、
「昨日、うちの長屋に猪牙舟で押し掛けてきた一団がいたそうでございますね。
赤目様の名が江都に高くなればなるほど、この輩は跡を絶ちますまい。
芝居小屋で何ぞ起こらねばいいが。」
小藤次さんは、不意を衝かれた気持ちでこの言葉を聞きました

長屋へ戻ると、小藤次さんに待ち人が。
御鑓拝借以来の馴染みの方々、
赤穂藩の古田寿三郎さん、臼杵藩の村瀬朝吉郎さん、
丸亀藩の黒崎さん、小城藩の伊丹さんの四人でした。
小藤次さんは、駿太郎くんをお麻さんに預け、
四人を近くの店へと連れて行きます。
あの事件から数年、皆さんちょっとのことでは動じない
中核の家臣に成長されております。
小藤次さんは先日襲ってきた一団について話し、
「桐村」と言う人物が家中にいないかどうかを尋ねます。
3家に該当する人物がいない中、
赤穂藩の古田さんだけは心当たりがありそうです。
「ござらぬと返答するにも、ございますと言い切るにも、
いささか情報が乏しゅうございます。
赤目様、一両日、時間を貸して頂けませぬか。」
と答える古田さんの顔は険しいものでした
5人は2時間ほどをそこで過ごし、それぞれに帰途につきました。
さて、今日は久慈屋さんで研ぎ仕事。
しかし、店先で仕事をしていると小藤次さんの評判を聞きつけ、
人だかりが出来るようになってしまいました…複雑な小藤次さん

橋下に研ぎ場を変えようと考えていたところで、
大番頭の観右衛門さんに声をかけられました。
研ぎ仕事が一段落したら、掛取りにお付き合いいただきたいという観右衛門さん。
大番頭自ら掛取りに出向くということは、金額が大きいか、
長年支払いが滞っているかのどちらか
そして小藤次さんに気分転換をさせようという
観右衛門さんの気遣いでもありました

さて、小藤次さんが研ぎ場を移そうとしていると、
小僧の国三さんが小藤次さんの使っていた藁の円座と
筵を抱えて追いかけてきました。
「赤目様、いよいよ明日ですね。」
「なにが明日じゃな。」
「なにがって、芝居見物ですよ。」
「おお、そうであったな。ああ見物人があったのでは、それどころではないわ。」
いいな、と国三さんが呟きます。
荷運び頭の喜多造さんから叱られたにもかかわらず、
国三さんは芝居見物を諦めきれない様子です。
「それがしに願うたところでなんの役にも立たぬぞ。」
「酔いどれ様が最後の頼みなんだけどな。」
と小藤次さんを上目遣いに眺めました。
注意すべき時を失したかと悔やんだ小藤次さん、
「国三さん、どうやらそなた、心得違いをしておるようじゃ。
久慈屋で働く奉公人はまず仕事が大事。
芝居見物など二の次どころか四十過ぎて考えればよいことじゃ。
まず今は、しっかりとご奉公することじゃ。今の国三さんは気が散っておる。
そのような時は、大きなしくじりをするものじゃぞ。」
と叱ります。
これに、ぱあっ、と立ち上がった国三さん、
「もういいです。」
と言い残すとその場を離れていきました。
次回へ続く
- 杜若艶姿〈新装版〉―酔いどれ小籐次留書 (幻冬舎文庫)/佐伯 泰英
- ¥630