近々、私もOJTを受け持つことになった。
OJTとは、新人さんに付きっ切りで仕事を教えながら、
お手本として自分の仕事を見せるのである。
思い出せば○年前、私もOJTを受けたことがもちろんある。
そのときは、南の島に行く便だった。
「この便は毎回、一人はお客様が飲みすぎて倒れるからね。
あまり飲ませすぎないようにね。」
「どうやって言うんですか?」
「気圧の関係で、アルコールが何倍にもまわって倒れるお客様が
多いので、気をつけてくださいね~って言うねん。それから、この
便は日本人のお客様が多いだけに問題のオンパレードやから、
あまりいろいろ教えてあげれないかもしれないけど、ずっと私の後ろ
付いててね。」
搭乗が始まった。ここまで忙しいか?!というぐらいに、最初から
ほんまに問題のオンパレードだった。
「すみません、彼と席が離れてしまったんですけど!(怒)」
「周りが子供ばっかりなんですけど、もっと静かそうな席ないの?」
「この荷物、重くて上にあげれないんですけど!!」
「スポーツ新聞もってきて!!」
「なんか子供用のゲームとか無いんですか?!」
「通路側の席がよかったのに空いてないって言われたんですけど、
ほんまに空いてへんの?」
「手術したばっかりで足が痛いから、ビジネスクラス、いける?」
「隣の席の外人さんがすっごいデブやから席が狭いねんけど、
他に空いてる席ない?」
「この荷物、上の棚に入らないみたいやからビジネスのとこにでも
入れといて!」
・・・・・・すごい(@-@)
そして、フライトも中盤に入った。先輩と私は、やっとのことでご飯を
食べていたところに、こんなアナウンスが入った。
「ただいま、体調の悪いお客様がいらっしゃいます。お客様の中で、
お医者様、看護師の方、医療に従事されていらっしゃる方いらっしゃい
ましたら、機内後方のギャレーまでお越しください。」
まじで?!ほんまに人が倒れるんや!(:-:)
先輩と私は、ご飯をほって機内後方に向かった。向かう途中、一人の
おじさんに声をかけられた。
「すみません・・・・気分が、わるい・・・・」
そう言いながら、おじさんは席から床に倒れこんだ!
「だ、だ、だ、大丈夫ですか!?」
反応が無い。。。。。私は5秒ほど、固まっていた。
「どいて!!」
先輩の声がした。先輩の手には、酸素ボトル、救急箱、冷たいタオルが
握られていた。タオルをお客様の額に当てるとお客様の意識が戻った。
「気分悪いですか?お酒は飲みました?」
「うん。」
「たくさん飲みました?」
「ビールとワイン。」
「1本ずつですか?」
「うん。」
「薬とかは飲んでませんか?」
「飲んだ、風邪薬。」
「ああ、それですね~。機内で風邪薬と一緒にお酒を飲まれるて、
こうなるお客さま多いですからね。じゃあ、酸素吸いましょっか。
寝たままでいいですからね。」
そう言いながら先輩は、おじさんの汗を冷たいタオルで拭きながら
「水をお持ちしてください。」
と私に言った。水を持って、席に戻ったころには、おじさんは自分で立って
いた。
・・・・・・・すばらしい・・・・( ̄∇ ̄+)
結局、その日は3人のお客様が飲みすぎて倒れた。
先輩たちの対応の仕方、野次馬のさばき方、そのすべてが素晴らしく、
私は自分の無力さを感じた。
その後も先輩は、それからも倒れたけどもう元気になったお客様達のところに
気が付けば足を運んだ。
「大丈夫ですか?お水、お持ちしましょうか?たくさんお水飲まれた方が
いいですよ。」
でも、その席に向かう途中にも、たくさんの問題が起こるのである。
「この席、壊れてて倒れないんですけど!!」
「あっちの子供うるさくて寝れないから何か言ってもらえません?」
「子供がジュースこぼしたんですけど!タオル!!」
「入国書類、書き方分からへんから書いてくれません?」
「上にある荷物、降ろして!」
「さっき、免税品買ったんですけど商品変えてもらえます?」
子供のこぼしたジュース用にタオルをギャレーに取りに行く途中にも、
いろいろ頼まれるのである。「少々お待ちください」ばかり言ってられないので
その優先順位を自分で考えて、すべての問題をきっちり、そのフライト中に
終わらせないといけないのである。
着陸態勢に入り、私は、見ていただけのくせにヘトヘトだった。
先輩は、席が壊れていたお客様に、パーサーからマイレージのマイルクーポン
をもらって来て、謝りながら差し上げていた。そうして、先輩が最後のお客様の
対応を終えて一緒にジャンプシート(乗務員用席)に座ったときに、ハッキリと
こう言ったことを覚えている。
「・・・・私には・・・・自信がありません・・・・」
先輩は優しい笑顔でこう言った。
「できるようになるよ。私も最初そうやって自信なんか無かったよ。
最初からできる人なんかいないから、ね♪そんなことより、この仕事は
楽しい仕事だって分かってくれたらそれでいいよ。」
私は、自分の「無力さ」と、先輩の優しさ、すばらしさに自然に涙があふれた。
「お客様の前で、泣いてはいけません。」
「はい。」
それから着陸までの数分間、果たして自分はこの仕事が楽しいと思える日が
来るやろうか・・と考えたら不安で、あふれる涙をこらえるのに必死だった。
飛行機が着陸し、先輩と一緒にドアのところでお客様をお見送りしていた。
倒れたお客様たち、問題があったお客様方、全員が先輩に「ありがとう。」
と御礼を言っていた。そして、私が「大丈夫ですか?」しか言えなかった、
倒れたおじさんが先輩のところにやってきた。
「どうもお世話になりました。ありがとう。」
私のほうをチラッと見て、
「がんばんなさいよ。」
と笑った。私は、先輩に怒られながら、笑顔のまま泣いていた。
そんな私がもう、OJTを受け持つような年数になった。あの時に私が感じたような
思いを、新人さんにも感じてもらえたら・・・・・・その新人さんもきっとこの仕事が
もっともっと好きになるはずである。。。。。。