あれは確か、ニューヨークの「9・11事件」の約一年後の
フライトでした。こんなことがありました。
飛行機が目的地に向けて、最終着陸態勢に入りました。
機長からのアナウンスではあと約10分後に到着。
「皆様、当機は○○空港に向けまして、最終の着陸態勢へと
入っております。お使いになりましたお座席の背もたれ、
テーブルは元の位置までお戻しになり、安全ベルトを
お閉めください。」
私はビジネスクラスの残りのご飯をパーサーと共に食べてました。
ドスドスドスッ!!!!
な・・・なんや?
すごい足音と共に、エコノミーで働いている外国人スッチーが
ギャレーのカーテンを開けた。彼女の顔は、恐怖で真っ青。
パーサーの「どうしたの?」という問いかけにも、過呼吸になって
うまく話すことができない。
非常事態やね・・・・・(@-@)
「ああ、あの、あの・・・・・あのね、あの、、、」
落ち着いて・・・・・!!頼むから・・・・(:-:)
「あのね、今、ドア3にあるトイレ入ったら・・・・・あの、あのね、
入ったら、コンセントにプラグ差し込んであってさ、その先が
生理用品入れてる引き出しあるやん?あの中の何かに
つながっててさ、それでね、引き出し開けてん!!!そしたら、
携帯電話が入ってるねん!!!!!!!!しかも、しかも・・・
光ってるのよ!!!」
そういって、おばちゃんスッチーは泣き出した。
え・・・・・それは、携帯電話の充電をしてるんじゃないの?!
そう思った私。けど、それを聞いたパーサーも、恐怖感でいっぱいの
表情になりすぐに機長に連絡し、飛行機は到着を見合わせ、目的地
の空港の上空を旋回することになった。パーサーは、機内の乗務員に
電話。状況を伝えた。
充電やろ?え・・・?ちゃうの?爆弾装置なん??(@-@)
コクピットから機長が降りてきた。パーサーと機長、そして私もついて来い
と言われ、そこのトイレに向かった。トイレの引き出しをそ~っと機長が開けた。
確かに外国製の二つ折り携帯電話が、充電されているような状態でピコピコ
点滅している。機長とパーサーが対策を話し合っている隙に、近くにいた他の
スッチーに聞くことにした。
「ねえ、みんななんでそんな深刻なん?」
「あんた、知らんの?!こないだロシアのへんで飛行機落ちたやん?
テロかどうかは、判断中やけど。あの時、同じ様に携帯電話がトイレ
で充電されてて、それが起爆剤やってんよ!!!」
うゎ・・・・死ぬん・・・・もう死ぬん・・・(:-:)
近くのギャレーの中では、乗務員達が遺書を書き始めたり、家族の写真を
ポケットにそっとしのばせたり、それぞれが「それ」に向けて準備をしていた。
まじ・・・?!私もしよう。。。でもなにしよう・・・
冷静に見れば、ただ携帯を充電しているという状況であるが、
パーサーと機長のひっかかりポイントは、「何故、この到着の
アナウンスがあってからコッソリと置かれたのか」「何故、
この携帯電話は引き出しの中に隠してあるのか」という
2つ。コクピット内のもう一人の機長から電話がかかってきた。
「今、地上の緊急時、対策本部に連絡を取った。彼らはまず
持ち主はいないかアナウンスをしてみるように言っている。」
うんうん、私もそう思う!!アナウンスしよーよ!
機長とパーサーは、もし犯人(?)がバレたことを知って、起爆剤の
スイッチを今、遠隔操作で押したらどうしよう・・・ということで会議に
なった。
ここに集まってる時点でバレてることは分かるんちゃう?!
パーサーもそう主張した。しかし、機長の意見としてはこうだった。
「我々がここに集まっている時点で、普通に充電が目的の人なら
自分の携帯です、と言い出すだろう?言い出さないっていうことは
やはり、おかしい!」
あ~、そうかも・・・・
アナウンスは取りやめられた。それからは、機内で起爆剤が
見つかった場合の、マニュアル通りの作業が始まった。まず、
携帯電話の周りを、ナイロン袋で覆う。その上に、濡らした枕
や毛布、そして座席のクッションなどを出きるだけ分厚くかぶす。
できるだけその覆いがまとまるように紐をかける。トイレの中は
毛布と枕で満杯になった。
私は、その様子を横目で見ながら、ギャレーの中で小さなメモ帳に
家族宛に遺書を書き始めた。一文字目から、涙があふれてきて
何を書いたらいいか分からず、一言「今までありがとう」とだけ
何度もなぞって太い文字で記した。
パーサーに呼ばれた。仕事である。
「地上の緊急時対策本部が言うには、これは着陸の衝撃で
起爆する物だろう・・・ということよ。本部がお客さんには、このことを
アナウンスをするなって。混乱を招くから。到着地には、消防車と
救急車が配備されたわ。到着したら、緊急脱出になると思うから、
アナウンスの用意お願いね。」
(:-:)私、そのころアナウンスできるかなあ?生きてる??
機長よりアナウンスが入った。
「当機は、確認事項があり旋回をしておりましたが、これより再び
最終着陸態勢に入ります。」
パーサーと機内前方の自分達の席に向かっていた。2人とも涙目
である。。。そんな時、通路を歩く私たちを一人のフィリピン人女性
(推定年齢30歳)が呼び止めた。
「ねえ、、トイレ行っていい?今!」
パーサー 「もう最終着陸態勢だからダメよ。時間が無いわ。」
「あそこのトイレに行きたい。だって、あなた達が何かしてたから、
あそこに行けなかったのよ。」
パーサー 「あのトイレに何の用事があるの?」
「え・・・ちょっと忘れ物しちゃって・・・エヘヘ・・・」
パーサー 「まさか、携帯電話じゃないでしょうねえ?!(怒)」
「イエス。イエス。充電させてもらってて、もう家にかける分
ぐらいは充電できたはずだから~・・・」
よ、よ、よかった~~~~♪♪♪♪♪神様ありがとう!!!
その後、パーサーが機長にすぐ電話。また旋回することになり
旋回中に、フィリピン人は乗務員みんなに怒られながらもヘラヘラ
笑いながら、携帯電話をトイレから出してきた。トイレの前で
濡れた枕と毛布を受け取りながら、私は思った。
この仕事。。。こわ~~~(:-:)もっとお給料
もらってええんちゃう?!