初飛行 | 新♪ここだけの話♪♪ ~スッチー編~

新♪ここだけの話♪♪ ~スッチー編~

空の上のおもしろい話、つつみ隠さずぶっちゃけます♪

今日は、こんなことがありました。


飛行機が、離陸する瞬間というのは、私たち乗務員も

席について衝撃防止体制をとっています。離着陸の

30秒前後(・・・・つまり、離陸する前30秒、離陸してから

30秒。もしくは着陸する前30秒、着陸してから30秒。)

この30秒間がもっとも危険な時間だそうです。


今日は私はビジネスクラス担当だったので、一番前のドアの

ところに座っていました。


離陸して後輪が地上を離れてすぐぐらい(=まだ機体は超ナナメ)

そんなときに機内後方から人がすごい勢いで前方に走ってくるのが

見えました。


    え・・・・・すっごい斜めやのにあの勢いは・・・・なに?

    こわいかも?テロ?テロリスト?


私はまだ衝撃防止体制中。席を立つことは誰であっても許されてない時です。

横に座ってるパーサーに、


 「ね、ね、ねえ!!!!あのね、人が前に向かって走ってくる!

 すごい勢いある!怖い。。。。」


     「なんだって?こんなときにか?こんな時には、席から立ち上がる

     のも’G”がかかって大変だぞ。ましてや、走ってるだなんて!」


 「え・・・え・・・なんか・・・私に向かってきてるんかも・・・(t-t)

  日本人やし・・・」


      「武器は?武器は持ってないか?」


 「わからないけど、かばんを前にかかえてる!!他の乗務員の

  手をふりほどいた。女性みたいよ!!!」


      「よし、オレはコクピットに電話する。お前は、あそこのミールカート

      を引っ張ってきて、通路をブロックするんだ!OK?」


彼女が私のところに到着するのと、他の乗務員が彼女を後ろから捕まえる

のと、そして私がミールカートで通路をブロックしたのは同時ぐらいだった。

彼女の顔は真っ青後ろから男性乗務員に羽交い絞めにされている



    「む・・・む・・・むりなんです!!!ムリなんです!助けて!!!」


「どうしたんですか?」


    「降りたいんです、飛行機!!」


「え、ご気分が悪いですか?」


    「あ、あの、息が苦しくて、耐えられないんです。」


「酸素、お渡しします。」


    「いえ、ここの空間がムリなんです!助けて!」


と言って泣き出した。彼女の意識がもうろうとしてきているのは、

分かった。とりあえず、お医者様を探すことにした。


「お客様の中で、お医者様、もしくは医療に従事されていらっしゃる方、

もしくは看護師の免許をおもちの方いらっしゃいましたら、機内前方まで

お越しください。」


彼女を一旦、ビジネスクラスの席に座らせた。彼女は


        「降ろして!降ろしてください。ムリなんです!!!」


と、言い続けている。お医者様は今日のフライトには乗ってないようだ。


     ・・・・・・あ・・・・これはもしかして・・・パニック障害?!

    

私も、MRIという機械に入った時、暗い金属の中で固定されている

自分の状況に怖くなって息の吸い方が分からなくなってきて息が苦しくなった

ことがあった。


「お客様、失礼ですが・・・・パニック障害になられたことはありますか?」


        「はい。薬飲んでます!もう、飛行機に乗ったときから

        ムリだったんです!ドアが閉まったらもう、息が・・・・」


     それは、大変や!私もMRIから一旦出してもらわないと息が苦しくて

     死ぬと思ったもん!!これは、降ろしてあげるしかない!!


機長とパーサーに、彼女の病気の説明をした。


「いや、しかしねえ・・・君は医者でもないんだから、君の判断だけで

空港に引き返すのはできない。」


飛行機というのは、着陸するための燃料の量というのが計算で割り出せる

らしく、今引き返すとなると相当な量の燃料を空中に捨てないといけないらしい

そして、着陸料も一回80万から100万するという。


そこに別の機長がコクピットから降りてきた。説明を聞いた彼は、こう言った。


「実は、僕の娘もパニック障害なんだ。。。。だから、僕はなんとしても

彼女を救ってあげたい。この状況で発作が出たら死に至る危険性があるんだ。

僕がすべての責任を持つ。今から管制官に連絡する。いいね?」                                     

                                                                   飛行機は下降体制に入り始めた。私は彼女の手をずっと握っていた。

無事到着し、パーサーが地上の人と救急隊員に状況を説明している

間に、先ほどの機長が降りて来た。彼女の手を握ると彼は優しく彼女に

話しかけた。


「僕は、パニック障害である娘を、僕の運転する飛行機に乗せてあげる

ことが夢なんだ。。。。今日は娘を乗せている気分になったよ。娘は、

飛行機に足を踏み入れようともしないんだ。だから、君の勇気は

すばらしい。怖かっただろう?もう大丈夫だよ。」


そう言って、機長は彼女に初飛行の記念として、今回乗った飛行機の機体

と日付、パーサーと機長のサインが入った「First Flight証明書を渡した。

彼女は泣きながら笑っていた。


いつの日か彼女と、そして機長の娘さんが元気になって私の便に

乗ってくれたらいいな・・・・・・・