ばーばは四点杖の二刀流で、辛うじて自力歩行が可能となっている。
その二本の四点杖のうち、一本はじーじが歩行が不安定になってから使っていたものだ。
テプラで作った、じーじの名前のシールが貼ってある。
最近はすっかりじーじの「死」を受け入れたばーば。
じーじが使っていた杖に向かって話しかけている。
立ち上がる時には
「じーじ、トイレ行くで支えとってよ。」
デイに行く時には
「じーじ、一緒に行くよ。」
こんな感じで話しかけている。
私は、これはいいんじゃないかと思う。
杖になったじーじも、しっかりばーばを支えてくれている。
そのおかげか、単にちょっと涼しくなったからかもしれないが、ここ数日、夜中もポータブルを使うことなく、ちゃんと歩いてトイレに行っている。
『じーじはあの世に行っても、ばーばが心配で杖となって支えている』
いいじゃない。
こんなふうに考えたって。
そして、また、ばーばは杖に向かって話しかける。
「じーじが90歳まで頑張ったで、私も90歳まで頑張らなかんわな。」
少しずつ意欲的になってきている。
うん、いいことだ。
独り言のしめくくりは
「さっき晩ごはん食べだけど、あんこのお菓子が食べたいわ。」
この食欲は、生きていることの証。
食べることは、生きようとする意欲につながりますね。