じーじの妄想。
「腹が痛い。」
「お父様、まぁ大変。私がお腹をさすってあげますわ。少しは痛みが和らいだでしょうか?」
「腹が減った。」
「お父様がいつでも召し上がれるように準備いたしておりますよ。さあ、どうぞお召し上がりください。」
「もう、食べれん。」
「お父様、申し訳ございません。お口に合わなかったのですね。
すぐに、もっと食べやすいものをお出ししますね。」
「うん○漏らしちゃった。」
「お父様、さぞ気持ちが悪かったことでしょう。今すぐにきれいにいたしますね。
何も心配はいりませんよ。お年をとれば誰にでもあることですから。」
歳をとって呆けてからは、大事に育てた一人娘と同居し、
娘から大切に扱われ、人生の終末期を平和に心豊かに過ごし、
そして、あの世に旅立ってゆくのでした。
ちゃんちゃん。
現実。
「腹が痛い。」
「病的に腹が痛かったら、そんなふうに座ってなんかいられないし。
だいたい、夜中に古いまんじゅうとか食べたんじゃないの?
うん○が出たら治るから、寝てな。」
「腹が減った。」
「私は魔法使いじゃないの。仕事から帰ってきて、すぐに俺の飯を用意しろって言われても無理。
できるまで待ってて。」
「もう、食べれん。」
「はぁ?人が一生懸命食べやすいように作ったご飯が食べれないの?
ありえないでしょう。ちゃんと栄養も考えて作ったんだから、食べてよね。」
「うん○漏らしちゃった。」
「お尻拭いてあげてるんだから、動かないで。汚い手であちこち触らないで。
どうして汚れたパンツ隠すの?なんで靴下でうん○拭くの?」
歳をとって呆けてからは、大事に育てた一人娘と同居し、
毎日怒られ、罵声を浴びせられ、娘夫婦に気を遣い、居心地の悪い思いをし、
そして、まだ当分生きて、この生活が続くのでした。
ちゃんちゃん。
う~ん、こうやって書くと現実でもやることはやってるじゃん、私。
ただ、言い方は悪いけど。
じーじ、すまないね。妄想はあくまでも妄想ってことで。