酒にこころあり-越の華酒造【前編】 | 酒サムライ・かずえの日本酒一合一会

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酒サムライ、にいがた観光特使、きき酒師・日本酒学講師。新潟の女性日本酒コミュニティー「にいがた美醸(ビジョウ)」を主宰しています。

本日は、お世話になっている方からのご紹介で、越の華酒造さんを見学してまいりました。過去のブログで取り上げましたがビストロSMAPにゲスト出演された妻夫木聡さんが勝利したチームに贈っていた日本酒が越の華酒造さんのものでしたね。


ご案内していただきましたのは、小野寺社長です。伺ったのは9時半頃。丁度お米が蒸しあがるお時間だとのことで、その工程から見せて頂くことができました。見学をする過程は、目で見ることや耳で聞くことは勿論、お米を触ったり、匂いを嗅いだりと、まさに「五感をフル稼動」させる体験でした。説明を受けながら、酒造りに対する情熱と真摯な姿勢が感じられ、心が打たれました。本当に今回の見学では沢山のお話をお聞かせいただき、勉強になりましたし、大大大大大満足でした。コンパクトにまとめきれなくなり<前編・後編>としてアップいたしますので、お付き合い下さいませ!


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米を蒸す


到着して間もなく、お米が蒸しあがったようです。さぁ、これより見学です。お米を蒸す釜がある施設からスタートです。大きな和釜からは蒸されたお米が引き上げられています。蒸し米を実際に触らせてもらいました。外は硬く、内は柔らかい「外硬内軟(※1)なお米です。米同士がくっつくことがなく、パラパラとしています。食べてみたら・・・硬くて美味しくないですねぇ。飯米とは違うので当たり前ですね。さて、ここで注目すべきは「和釜」です。米を蒸す蒸気には「ウェット蒸気」と「ドライ蒸気」があるとのことで、「外硬内軟」な米が出来上がるには「ドライ蒸気」が必要であるとのこと。そのためには和釜が重要な役割を果たしているとのことでした。蒸し米は太いホース(エアーシューター)を通って麹室へ運ばれます


麹つくり


新潟在住・きき酒師の酒Life
「一麹、二酛、三造り」と言われるほど、酒造りには麹が重要なのですが-麹室へ到着した米は、床(とこ)と呼ばれる場所に広げられ、水分を飛ばし、適温まで冷まされます。次に種麹をふりかけ、米を手で混ぜます。麹は2日ほどでできあがるとのことですが1日経過した麹を見てみました。ところどころ白く菌がついているのが確認できます。指先を差し入れてみると温かいのです。これは菌が増殖するときに放出するエネルギーなのですね2日経過した麹は1日目よりも粒が小さくなってるように見え1日目よりも白くなっています。食べるとほんのり甘いのは、米の中のデンプンが麹菌により糖化したからなのですね 。

小野寺社長曰く、良い麹の条件とは-

・サラサラ

・栗の香り

・握ったときに押し返すような弾力


なのだそうです。実際に触ったり匂いを嗅いだりしてみましたが、全ての条件に当てはまっています。


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酒造りは微生物の成す技なのであり、ミクロの世界です。朝食に納豆を食べた蔵人が、麹作りをしながら喋ったりしていると、米に納豆菌がついて繁殖してしまい、麹がべたべたになったり、納豆の香りがしたり、握っても弾力が無かったりするのだそうです!そのようなことがあるために、造りの間は朝食に納豆を食べないのだとのこと。なんとも興味深いエピソード!


酒母


次に酒母室です。酒母は、蒸し米・麹・水・乳酸菌・酵母でつくります。タンクの中央にはタンク内を暖めるための器具が付いており、発酵を促進しています。


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発酵が進んでゆくと泡がたちますが、泡の立ち方で健康状態を判断したり、日数がわかるとのこと。以下の2枚の画像、左は酵母が活発に活動し、泡が盛んに発生しています。中央にあるのは泡消しのプロペラです。右は10日程度経過し、泡が渦状になっている様子です。

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通常、酵母は協会でつくっているものを使用することが多いとのことですが、こちらの酒造さんでは、独自の酵母をつくっておられるとのこと。無菌室、そして培養室なども見せていただきました そして、次に貯蔵タンクの並ぶ施設へと進んでゆきます 。

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※1:外硬内軟(がいこうないなん)-蒸した米の、外側は硬く、内側がやわらかくなった状態をいいます。上質なお酒をつくるうえで、もっとも理想的な状態といわれるのですが、麹づくりの際、やわらかく水分の多い米の内側に向かって麹菌の菌糸が伸びます麹菌のだす酵素が、米の中心の上質なデンプンを優先してブドウ糖に変えます(糖化仕込みにつかう蒸米も、内側のやわらかく上質な部分から溶けてお酒になるわけです。

     


                                                ***後編へ続きます!***