●あらすじ

斉藤真琴は小学6年生。ある日、死んだはずの祖父・熊岡獅子之介から真琴の家に1枚のハガキが届く。

そこには、今年の夏で旅館をやめる、とだけ書いてあった。

 

不思議に思った真琴は、夏休みに一人で、九州の秘境にある祖父の旅館を訪ねることに。羽田から福岡への空の旅を経て、列車を幾度も乗り継いだあと、ハプニングが起きた。

 

なぜか、祖父の旅館があるねじまき温泉行きの路線がなくなっていたのだ。
途方に暮れていた真琴は、いつしか祖父が若い頃の時代、今から38年前のねじまき温泉郷に迷いこんでしまう。

 

この温泉郷は、神秘の祭りである「臥龍の大祭」をやめてから人気が低迷していた。

「この祭りの復活こそがこの町を救う! 」

 

----子ども時代の父・虎之介とまちがわれているぼく・真琴は、同級生のツグミと共に大人たちを説得し、「臥龍の大祭」の復活に挑む。温泉郷の未来をかけた、子どもたちの町興し物語。

 

 

 

 

●感想レビュー

ひと夏の冒険、夏休み、タイムスリップ・・・

こうした要素が楽しめますが、個人的にオチが腑に落ちず、途中まで楽しめた作品でした。

 

廃線したはずの線路を走るSLに乗り、38年前にタイムスリップし、父親の子供時代に間違われ(父親は家出中)、旅館で暮らすうちに母親を死に追いやった祭りの復活に臨む。

 

主人公はかなり賢く、冷静で喘息がある以外は健康的、性格も良いのですが・・・『誰か父親と違うんじゃないか?』と気づかないのかぁ~

 

まあ、父親の子供時代と瓜二つという設定ですから誰も指摘しなかったのかもしれませんが・・・

冒頭で登場する父親は祖父と同じような大胆不敵な性格。

主人公と瓜二つでも誰かが違いを指摘し、矛盾点を主人公が頭の回転を駆使し、切り抜ける設定がないのが不自然。

 

それを抜きにしても38年前の温泉街で過ごす主人公は読んでいて面白かったですが、祭りの復活への子供たちの熱い想い・・・

個人的にここが物語のピークですね~

 

 

 

 

温泉手形という未来の情報を駆使しますが、これくらいしか未来人としての知恵を披露しません。

(せっかくのタイムスリップなのに・・・)

 

また、主人公の母親は祭の事故で死亡しますが、復活した祭でも同じ事故が起き、ヒロイン枠がピンチに陥ります。

母親の事故は自然発生したモノだから誰も悪くないという設定。

ヒロインの時は舞を駆使し、炎を退け、生存しますが・・・それなら母親が死亡したのが疑問。

 

母親の舞の技量が足りなかったのか?

ただの事故にするならヒロインが舞で炎を退けた理由も

今回だけファンタジー要素で助かる事故だったのか?・・・この矛盾点はモヤモヤ。

 

主人公はSLに乗り、現代に帰還しますが・・・このSLの詳しい説明は最後まで無し。

さらにタイムパラドックスも『バックトゥーザフューチャー』で主人公の記憶は改善させず、周りだけ影響を受け、主人公は発展した温泉街や路線に困惑しつつも、父親と祖父の関係改善、母親の生存(違う人物と結婚したワケじゃない)と確認し、家に戻る。

 

・・・なぜ、父親が旅館を継がないオチの説明がない。

冒頭では母親が祭で死亡し、その祭りが復活せずに人間関係が破断し、旅館を継がなかったですが・・・過去と未来が変化したなら父親が旅館を継がず、別居してる理由がないのが不明。

 

主人公の活躍によってヒロイン枠と恋愛関係にならないのは跡取り問題で理由がありそうですが、父親が旅館を継がないのは疑問。

 

『少年がタイムスリップし、ひと夏の冒険を駆使する』という流れや雰囲気だけ残し、問題点が多く残っていると感じ、モヤモヤする・・・まあ、児童書ですしね~