藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。

視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。

 

ここはどこなんだ? 傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。

「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」

 

それは、血で血を洗う凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。

『黒い家』で圧倒的な評価を得た著者が、綿密な取材と斬新な着想で、日本ホラー界の新たな地平を切り拓く、傑作長編。

 

 

 

 

●感想レビュー

kindleでおススメで見つけましたが、面白かったです。

『黒い家』や『黒い経典』とは違い、バトルロワイアルのようなデスゲーム。

 

『クリムゾン』というのは真っ赤な台地、迷宮というのは入りくねった国立公園の地形を表していました。

物語では『火星の迷宮』という架空のRPG小説をモデルにした舞台設定が面白かったです。

 

オーストラリア大陸にあるバングル・バングル公園を舞台に集められた男女がデスゲームを開始。

協力すれば一緒にゴールできるかもしれない・・・

当初はそんな期待を参加者に匂わせていましたが、中盤からデスゲーム展開で殺し合いが行われます。

 

こうしたデスゲームでは賞金や脱出といった目的のために殺し合いが行われますが、参加者を知らず知らずのうちに薬物投与し、グールのような悪鬼に変貌させる設定が面白かったです。

 

また、バングル・バングル公園の地形や自然をきちんと調べているのか?

サバイバル内容に臨場感があり、飽きさせない展開が面白かったです。

 

こうしたデスゲームでは、主催者の協力者がゲームに紛れ込んでいるのが定番。

定番は崩れる事なく、ゲームマスターという司会進行役、カメラマン役の2名が参加者としてゲームに紛れ込んでいます。

 

主人公と一緒に行動していた女性が組織側の盛り上げ役というのは定番ですが、ラストで主人公と再会しないのは意外でしたね。

 

また、能登や和倉温泉といった場所がラストシーンで出てきたのは素直に驚き!

タイムリーな場所ですからね~