突然原理主義者らしき兵士に襲われ、泥に囲まれた島に囚われてしまった女子高生たち(「泥」)。

村の長老との結婚を拒絶する女は舌を抜かれてしまう。それがこの村の掟。そしてあらたな結婚の相手として、ある少女が選ばれた(「雀」)。

 

アイドルを目指す「夢の奴隷」である少女。彼女の「神様」の意外な姿とは?(「神様男」)。

管理所に収容された人々は「山羊の群れ」と呼ばれ、理不尽で過酷な労働に従事せざるを得ない。

そして時には動物を殺すより躊躇なく殺される。死と隣り合わせの鐘突き番にさせられた少年の運命は?(「山羊の目は空を青く映すか」)。


時代や場所にかかわらず、人間社会に時折現出する、さまざまな抑圧と奴隷状態。それは「かつて」の「遠い場所」ではなく、「いま」「ここ」で起きてもなんら不思議ではない。

本作を読むことも、もしかすると囚われのひとつなのかも――。
何かに囚われた奴隷的な状況であることのみが共通する、七つの物語。桐野夏生の想像力と感応力が炸裂した、超異色短編集。

 

 

 

 

 

●感想レビュー

物理的・精神的に束縛され、奴隷になった人たちを描く短編集。

どのお話も『続く!』の文字がありそうなラストシーンなので印象に残ります。

 

「ただセックスがしたいだけ」は最初は無垢で無欲な青年が性欲に支配され、女性に尽くす事だけを考え、盗みを働く。

シンプルですが印象深かったです。

 

『雀』も少女が醜い男と一緒に都会に向かったのか?・・・気になる・・・

スッキリするようでスッキリしないのが『泥』・・・ある意味で幸せなラストシーンなのか?