取り敢えずキズの手当てはしないと、後で痛むだろーしなぁ。アタシはともかく、この子はちゃんとしてあげないと。腕やら膝小僧やらおでこにほっぺた、さっき転んだ時のヤツも入れると、擦り傷イッパイあるし。
さっきの連中の事は気にはなるけど……ま、なるよーになるっしょ。
今度は首にまわされた腕を引き剥がし……足まで使ってしがみつかれてたからしゃがんで、ちゃんと立たせて改めて服の汚れを払い、手を引いて歩きだす。
木の真横のフェンスをくぐり、図書館の裏口―――事務室に入りながら、
「スイマセーン。救急箱貸して下さぁい」
パソコンに向かって仕事中の司書のオジサンに声を掛ける。
ホントは部外者立入禁止なんだけど、正面玄関に回るの面倒臭いし、本より今はこっちのが入り用だし。
いつもながら大量の蔵書候補(納入直後だったり寄付されたばかりで仕分作業が済んでない)が積上げられた部屋を、注意しながら奥へと進む。救急箱、確か突き当たりの棚の上に置いてあった筈。
アタシの声にパソコンから顔をあげてこっちをを見て。壁際の流しにタオル片手に向かいながら、脇のソファに座るよう身振りで示してから。
「何したの?ケンカ?」
足元の本の山に阻まれて、ソファの処まで辿り着けずにもたついてるアタシ達に呆れたような苦笑いを浮かべ、濡れタオルと消毒液を差し出す。……うわ、信用なーい。
「違います。……ちょっと木登りしただけです。一人で降りられないみたいだったんで」
アタシか登らせた、とは言わないほうがいいよね。怒られそうだし。
礼を言いつつ受け取って、まず顔を拭き、次いで腕、足の順番に拭っていく。傷口がタオルでこすれるたびに痛そうに顔をしかめるけど、当然無視。バイ菌入ったら大変だもん。
一通り汚れを拭い、タオルを裏返して今度は自分の手足を拭いていく。あ、結構ヒリヒリする。
白かったタオルが血と泥と埃で茶色の斑模様になっていく。思ったより汚れてたみたいだ。