2026/05/31②
潤side独特な緊張感が漂う────────今まで味わったことの無い緊張や、みんなの元気な雰囲気。数え切れないほどのスタッフが走り回り、開演を待つ観客の俺らを呼ぶ声を受け止めながら、これが本当に最後なんだという事実が、じわじわと身体の奥底に染み込んでくる。喉の奥が乾くような、今までに味わったことのない重い緊張感が、楽屋の空気を支配していた………準備してる間にLINEの通知に気づく。2件入ってて1件は、れいから。ほかのメンバーも今日はれいがどこにいるって知ってる。張り詰め空気の中で、その空気をどうにか変えようと「今日、あそこだよね」と目配せしてくるのが、少し気恥ずかしくもあり、、れいがいるって分かってることが、どこか心強かった。2件目は、リュウからだ。《こんな顔で向かわせました。たぶん会う頃にはメイクも落ちてるだろうからここだけ写真送っとく。》ケープしてて全身は見えないけど髪型と、メイクでガラッと雰囲気が変わる。いつものれいより、、、ちょっと気が強そうなのは濃いめのメイクかもしれない。れいの顔を見たら、気持ちが少し切り替わる。次にメンバーの顔みたら、だんだん普段の俺らの空気になっているうな気がした。スタッフを交えた最後の円陣。気合い入れて、ステージに向かう。マネージャーに頼んで、関係者席ではない一般の席のすぐ横に確保してもらった。れいは俺から見たら、右側にいる。客席は色とりどりのペンライトが揺れていた。これが、最後に見る風景なんだなと、、、そう思うだけで胸が詰まる。本番が始まって曲が進むにつれて、客席の熱気はどんどん上がっていった。曲中にはれいの近くにいくたびに、メンバーも、もちろん俺も、何度もファンサをした。俺は、今嵐だから出来るファンサをれいにする。その一帯が俺の煽りで悲鳴みたいな歓声がドッと湧き上がった。その凄まじい熱量の中で、俺とれいの視線だけが一瞬、バチッと合う。俺に直接ファンサされたれいは、周りのファンと同じで俺に手を振ってくる。写真で見た通りのいつもと違う大人っぽい髪型だった。ここでようやく気づく。着ているのは俺が選んだ服だった。何万人もの観客に囲まれた広い会場の中で、俺が選んだ服を着て嵐に手を振っていた。ライブも終盤、ラストの挨拶。マイクを持って、何万人の前に立って言葉を紡ぐ。「普段の俺のことを知ってる家族は、ここに立つ俺を別人だと思うだろう」口にした途端、心臓が跳ねた。……あ。これ、れいの思考回路のままだ。話すことはある程度準備してたけど、まさかここでれいが俺によく言う言葉を口にするとは思ってもいなかった。普段から、れいに言われてる言葉をそのまま自分で言ってることに気づいて、客席の右側に一瞬だけ視線を走らせた。でもこっからじゃ、れいの顔は見えなかった。そして、本当に最後の曲。ラストの歌。ここでれいの方にライトが向いたとき、偶然、俺はその瞬間にれいを見ていた。そこにいたのは、タオルで顔を覆っている姿だった。見間違いじゃない。服はれいだから。コンサートが始まってから、あいつが泣いている姿を見たのはこれが初めてだった。いつもは俺を「別人」として一歩引いて見ていたあいつが、今、嵐としての俺との最後の時間に涙を流してくれていた………すべてが終わった後、メンバーやスタッフたちと最後の打ち上げに足を運んだ。これまでの思い出を話したり、全員でやり切ったという熱い余韻に浸ってた。長年一緒に走ってきたメンバーとの時間は、どこか寂しくもあり、温かかった……何度も抱きしめあった。何度も何度も。打ち上げを終え、静まり返った部屋に帰ってきたのは、もう外が明るくなりかけた朝方だった。***れいちゃんは起きてるかな、寝てるかな。