玉響 ひとときの空想Time -9ページ目

玉響 ひとときの空想Time

未熟で拙い文章ですが、読んでくださった方、何らかのコメントを頂けると嬉しく思います。




指輪 ~赤い石~



 その日、とてもいい天気で、ふらっとドライブに金城埠頭まで出かけました。つけたFMからは今日のような良いお天気に、海辺へドライブするにはぴったりな曲名も分からない古い曲が流れていました。金城埠頭ではフリーマーケットが開催されていたので一人で入ってブラブラしていました。

フリーマーケットなんて今まで数える程しか行ったこともなく、どちらかと言えばイベント事など、ゴミゴミした場所を嫌う私は避けるような場所なのですが、その日は何故なのか行ってみよう、という気になったんです。

チケット購入窓口の長い列に並び、一人分のチケットを購入してやっと中に入れました。
普段だったらイライラしてしまうような長蛇の列も、不思議と何も気にならず、どこかワクワクした気持ちすら湧いてきていました。

中に入ると、やはりすごい人ごみで、犇めく様に並んだブースでは様々なものが売られています。
はっきり言って私にはいらないものばかりが並んでいるのですが、その日の私は気持ちに余裕があったのか、自分でもよくわかりませんがニコニコしながら、少し興味のあるものは手に取ってお店の方とお話したりして一店舗ずつゆっくりまわっていました。

その中に石を扱うお店がありました。
原石から天然石、宝石までいろいろ置いてあるようです。
私は、やはり今までに装飾品にはなんの興味も持っていなかったのですが、真ん中に置かれている「赤い石のリング」が飛び込んできて、目が釘付けになっていました。

「こんにちは。天然石お好きなんですか?」

痩せて無精ひげの生えた店主の男に声をかけられました。

「い、いえ。正直今まで全く興味もなかったんですけど。この指輪の石って何という石なんですか?」

「あー、これ?ルビーですよ。天然石でこんな赤い色のって、結構珍しいかもね」

「へえ、そうなんですか。ルビー…」

男は頷きながら、真ん中に置かれていたその赤い指輪を手に取ると、私に「どうぞ」という意味合いを含めた視線を送って、そのルビーの指輪を差し出しました。

私は、その指輪を手に取るとおかしな事に目の前に見たこともないような映像の断片がフラッシュバックのように駆け巡ったのです。
その映像は、男性が血眼になって何かを探しているような映像でした。
びっくりして指輪を落としてしまいそうになりました。
私は、この指輪を私が持っていなくては、という気持ちになりました。
こんな気持ちは初めてでした。

次の瞬間、値段も聞かずに

「これ、ください」

と言っていました。

お店の男は

「出会ったんですね。お幸せに!」

と言ってジュエリーケースと言うには安っぽい箱にいれてくれました。


―――お幸せに?


一瞬、その言葉が引っかかりましたが、私はその指輪を買って自分のものにすると、他の物には急に興味がなくなり、すぐに出口へと向かっていました。


 そんな事があったのは先週の週末のことで、今日は先週のようないいお天気ではないのでPCの前に、そのルビーの指輪を置いて眺めながらあの日のことを思い出していました。

私は、訳あって恋人と別れ、ここの所ずっと気分が塞ぎがちで、日々のルチンワークをなんとか済まして、週末は自宅でゴロゴロ過ごすというパターンでした。
やる気が全く出なくて、いつも一人で、でもその方が気楽で、なのに寂しくて…時々自分の感情もコントロールすることが難しくて…。
どこか矛盾だらけの自分に嫌気が差していました。

先週は、本当に天気が良くて、久しぶりにボサボサの髪も綺麗に整えて、パンツばっかりだったボトムを何故かスカートを履きたくなり、ペッタンコシューズを愛用のはずが、奥にしまってあった5cmのパンプスを引き出して履いて出かけたのです。

人にも物にも一目ぼれなんてしない質なのですが、あの日の私はこの指輪に一目惚れしてしまったようです。

土台はゴールドなのですが、アンティークな雰囲気でシンプルなデザインです。
何と言っても、この赤いルビーが素敵なのです。
透明度が宝石とはやはり言えませんが、この大きさを宝石で買ったらきっと高いのだろうなぁ…と思うのです。

指輪を見ていたら、なんだかまた出かけたくなってきました。

私は思い立ったように身支度を始めました。
やはりボトムはスカートです。
パステルイエローの花柄のフレアスカートに、オフホワイトのシャツに水色のカーディガンを羽織り、ヌードベージュのパンプスを履いて、右の薬指に指輪をはめて外に出ました。
ふと、薬指でいいのかしら?などと思いました。
洋服も去年のものばかりなので、今日は洋服を新調しようと思い繁華街へ出かけることにしました。

 地下街から地上に出ると、今にも雨が降り出しそうなのに街は人で活気づいていました。
こんなに多くの人が行き来しているのに、誰ひとり知った人に出くわさない事が心地よく感じます。
大通りには百貨店が数店舗、ファッションビルなども並んでいます。
この細い道を入っていくと商店街になっていて、6階建ての質屋さんが目立っています。
その細い道に入ったところで男性が必死になって何かを探していました。


―――あ!この光景見たことある!


指輪を手にした時に見えた映像と同じ光景でした。
デジャブっていうのでしょうか?
私はなんだかとても気になってしまって、普段だったらスルーするところ、その男性に声をかけました。

「なにか落とされたんですか?」

ポールスミスのボディバックをかけた男性は私に声を掛けられても、下を向いて何かを必死に探しています。

「ええ、ダイヤを落としてしまったんです」

「えええ?!ダイヤですか????」

「はい、リフォームしてもらって石だけにしてもらったのですが。あぁ…なんてついてないんだろう」

「それは大変!一緒に探しましょう」

「あ、ありがとうございます」

顔も上げずにブツブツ言いながら男性は地面にへばりつく様に落としてしまったダイヤを探しています。
まさに血眼な様子です。
ふと、私の足元をみるとキラキラと光るものが…。
その小さなキラキラ光る欠片を手に取ってみると、美しくカットされたダイヤのような?
小さく美しいその結晶を親指と人差し指で優しくつまみ、曇った空にかざしてみました。
空は曇っていましたが、その小さな粒は自らの光を放ちキラキラと輝いて綺麗でした。

「も、もしかして、これですか?」

必死に探している男性の顔の前にそれを差し出すと、両手でグッと私の手を強く掴まれ、私は驚いてしまいました。

「これです!!!!」

私が驚いたことに気づいたその男性は、はっとし、ぱっと手を離しました。
そしてゆっくりと顔を私の方に向けました。
とても優しそうな…お顔。

あれ?

何故だか鼓動が…高鳴ってきます。
私は人にも物にも一目惚れなんて…しない質なんですけど。

「ありがとうございます。僕ここで1時間くらいずっと探してたんですよ。あ、お礼にお茶でも行きませんか?おごります。ケーキセットとかなんでも言ってください」

赤面した顔で照れ笑いしながら男性は私に言いました。
私は右の薬指にはめたルビーの指輪を触りながら「はい」と返事をしました。

開けっ放しのオーディオ専門店から、先週車のFMで流れてきた曲名も知らないあの曲が良い音で流れてきました。

「えっと…僕の名前は…」

そんな自己紹介をしながら私達は行き先が決まってない道を、歩いて行きました。
なんだか私の心はこんな曇り空と反比例してぽかぽかなお天気のようでした。


―――お幸せに!


と、どこかから声が聞こえてきたような気がしました。











おまけ


宝石の女王とも呼ばれる程鮮烈な華やかさを持つルビー…
ルビーの性質は情熱的であり、官能的なあでやかさがあります。
古くから勝利を呼ぶ石、カリスマ性を高める石として、権力の象徴として扱われてきたのですが、やはり女性が活力を持ってアクティブに生きていく為に、これほど頼りになる石もあまりないかと思います。
非常にエネルギー的活性作用の強いルビーですが、身に着ける人にとっては強壮剤的な働きをし、根源的な生命力を高める事もあり、恋愛や仕事に対するアクティブなエネルギーだけではなく、性的な高揚感や魅力を高める力もあります。


天然石意味辞典より引用



ルビーは7月の誕生石です。サファイアとは親戚の石です。

7月にルビーを着けて、リオン・ウェアのWhat's Your Nameをかけながら海までドライブとか、いいですね!
まじで妄想しましたwwwww


この話の設定は春で、続きがあるなら7月には二人は付き合っていて、彼の車でドライブに行く時に、彼がこの曲を流して、彼女が(あ!あの曲が流れてきました!)「この曲大好きです。なんて言う曲なんですか?」と聞いて終わりにします。

止まりませんねw