玉響 ひとときの空想Time -11ページ目

玉響 ひとときの空想Time

未熟で拙い文章ですが、読んでくださった方、何らかのコメントを頂けると嬉しく思います。

指輪   質屋にて(1)



 

 今日一番のお客様は30代後半から40代半ばの、いわゆるアラフォー世代の奥様のようでした。
すこしぽっちゃり気味でしたが、小奇麗になさっていて、魅力的なお方で、恥ずかしながら私は年甲斐もなくときめいてしまいました。めっちゃ好みやで!朝からラッキー♪などと不謹慎ながらも思ってしまったことをここで告白しておきます。

 私は繁華街の片隅で質屋を商っておりまして、んまー本当にいろいろな方々がいろいろなものを売りにやってきて下さいます。
バブルの頃は高価なブランドバックのお持ち込みが、それはそれは多かったです。
水商売のお方ではなく、普通のOLさんがですよ?
いったいどこのアホな男が、このアホな女に貢いだのさ、などと当時はにこやかに接客をしながら妄想したものでした。
そのブランドバッグは、やはりアホな男が買い、アホな女が売りに来る、というサイクルでグルグル回っておりまして、それを静観しているのは、とてもとても滑稽なものでしたよ。

そんな話はどうでもいいのです。

そうそう。

その、私が思わずときめいてしまったご婦人のお話を。

質屋と言いましても、質屋のドアは裏にありまして、表側は6階建てのビルで商店街の通路に接しているのです。
10時の開店とともに、スッと質屋の入口の自動ドアが開いたのです。
ははん、外で待っておられたのですね。
私はそう思いました。
そのご婦人は、どうしたらいいのかわからない感じで、少しおどどされていました。
初めて来られたのでしょう。
なので、私から声をかけました。

「どうぞ、こちらへおかけ下さい」

「あ、はい。こういう所は初めてでして…」

少し照れながら仰った姿が、また擦れていない感じでキュンキュンしてしまったことも告白しておきます。

椅子にゆっくり腰掛けられると、グッチのトートバッグからジュエリーケース2つを差し出しました。

「これを売りたいのですけど、こういうものって売れるのでしょうか?」

私はピンときました。
これは婚約指輪と結婚指輪でしょう。
なんと!バツイチなのですね!

「私と再婚してください!お子さんがいても構いません!」

と、言いそうになったことも告白しておきます。
私もバツイチ独身でございます…。
痛みはよくわかりますよ…。

「では、見てみましょう」

ジュエリーケースを開けると思った通りでした。
高級ブランドのものではありませんでしたが、ぱっと見て1カラットのダイヤ、グレードもよいもので100万は下らない婚約指輪だと予測できました。
ここの所は平均30万と言われる婚約指輪で、なかなか奮発されたほうだと思います。

あ、でも、そんな事どーでもいいんですよね。
シングルなんですものね!

もう片方はシンプルなデザインのプラチナの結婚指輪でした。
思わずご婦人の左薬指をチラ見してしまいました。

「捨てる事も考えたのですが、なんだか、捨てるのもどうかと思ってしまって…」

「ええ、ええ、大丈夫ですよ。こういったものをお売りに来るお客様も大勢おられます」

私はそこでにっこり営業スマイルです。

「そうですか。それを聞いてなんだかホッとしました。もう、こんなもの持っている気もしなくて」

あら、今「こんなもの」って言っちゃいましたね。
正直な感情は大切です。
吐いていきましょう!ここで、さあ、どうぞ!
お悩み抜いたのでしょうから!

鑑定書と、実物を一応鑑定しまして、値段が出たところで電卓を弾いてご婦人の目の前に差し出しました。

こういったものは、いくら良いものであっても叩かれます。

「売れるんですね」

あっさり提示したお値段で買い取ることになりました。

ご婦人はとても晴れやかな表情になり、また私は「ほ、惚れてまうやろー!」と言いそうになりました。



と、言うお客様が午前のお客様の中では一番印象に残っておりました。

まあ、私のただのタイプだった、って事だけですね。はっはっは。



あ、こんなしょうもないことを考えながら真顔で接客しているのってすごくないです?

あ、次はこの世の終わりのような顔をした男が入ってきましたよ。


さて、仕事に戻りますね。


また機会があれば、お話致しましょう。





※イメージ 高田純次さんですwいや、とっても好きですけどねw