バカな妄想もそこまで! | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

小百合が午前最後の講義を受けている頃、ゆいは写真のチェックにキリを付けこれから映の事務所へ行く。ボードに行先と帰社予定時間を書き込むと軽くため息を吐いた。

今この事務室には誰もいない。ゆいが出て行くとここはお留守になってしまう。ゆいは現場に入っているあきに出掛ける旨を伝え、スタジオを出た。

車に乗り、今のうちにと小百合にLINEを送る。

「よしっ!行こう」

車はもちろん社用車。少々遠出なので例によってFMラジオを流した。今日はJUJUの特集ということでドラマの主題歌など馴染みのある曲が流れる。

曲を聴きながら、ゆいはあることを思い出す。

それは何かの話の流れで誰のライブに行きたいのかと聞いたことだった。ゆいと行くならと考え、そこで小百合はJUJUの名前を出した。

お互い好きな曲名も同じで、小百合はいつか一緒に行きたいと言った。もちろんゆいもそのつもり。でも勤務時間が不規則なため確約が出来ない。小百合の夢が叶えられない思いに不甲斐ない自分が悔しい。

小百合がどこまでファンなのか聞いたことはないが、ゆいが無理ならそれこそ今一番身近な異性、花岡君と一緒に・・・。

さぁ~ここからゆいの妄想劇場が始まる。小百合が聞いたら頭の一つでも叩かれそうなあり得ない、でもリアルな妄想。

顔も知らない相手によくそこまで思いつくなと、誰かが突っ込みそうな物語を延々と頭の中で繰り広げられていた。

「もうバカじゃん、私」

そう気づいた時にはとっくに都内を走っていた。そんな時に使う名言ではないが、よく事故らなかったと『自分で自分を褒めてあげたい』。

外はそこそこの雨。朝のような雨が降りそうな勢い。もしかしたら外での撮影が変更になるかもしれない。

「それでも十分な画は撮れそうな気はするんだけどなぁ」

小百合がお腹が空き過ぎて泣きそうになりながらボードの解説を書いている頃、ゆいは映の事務所に到着する。

例によって、受付のキレイなお姉さんに挨拶。いつだったか来た時と同じ女性。安井さんに繋いでもらい会議室へと押された。

 

小百合は難しい講義のせいでずっと腰のあたりがムズムズ。そしてイライラ。だからノートの文字もより一層汚い。10分ほど早く終わり、小百合は急いで片付け出るとトイレに直行。昼休み前のトイレは漏れそうなくらいに混んでいるから。

何とか待たずにスッキリした小百合は、ユイたちに会う前にLINEをチェック。

「あっ❤」

『今から映ちゃんの事務所へ行ってきます。何時に上がれるか分からないから晩ご飯先に食べてほしい。でも一緒に食べたい』

『今日のロケの話、ゆっくり話したい。待ってて』

「待ってるに決まってんじゃん❤」

返事を送れば絶対にまた返事を送ってくる。だから小百合はスタンプだけを連打で送り、学食へ行った。

「お待たせ~♪」

今日はお弁当がないので、何か家では作れないような物がいい。

結局選んだのはハヤシライスとシーザーサラダ。

隣で決めかねていた菜々も小百合と同じ食券を買い、やっと席に座った。

夜、ゆいに見せるために食べる前に写真を撮る。

「いただきまぁ~す。あっ、美味しい」

なんちゃらハンバーガーもそうだが、一度ゆいに食べてほしい。でも生協の総菜しか・・・。

『あっ!そうかその手があった!』

今日は楽しい晩ご飯になりそうだ。