ゆいがいない間に | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

少し持て余した時間がなければ知らなかった、ゆいのサプライズ。まさか大ファンのさくちゃんの番組がいっぱい録画されていたとは全く気付かなかった。その流れで見たゆいが出演した番組。なんとなく場慣れしている姿に、もしかしたらゆいも芸能人に・・・と一人妄想する。もしそうなったら小百合はゆいには出会えない。それこそもしかしたら誰かの恋人になっているかもしれない。だってゆいはモテるから。

「ヤダ。ゆいが私以外の人とだなんて」

被害妄想は小百合の得意とするところ。勝手に想像しては勝手に悲しむ。ゆいが知ったら呆れるか、ギュっとしてくれるか。

「早く帰って来ないかな」

なんて思っているところに、チャイムが鳴った。

 

「いらっしゃい♪上がって」

マネージャーの車でやって来た映は、お邪魔するということでお土産を持ってきてくれた。

都内のある場所でひっそりと営業しているお店のカステラ。女優さんが内緒だと言いながら教えてくれた、最高の一品。

「嬉しい♪ありがと!今食べたい。でもゆいが帰って来るまで我慢する」

映がソファーに座ると、隅に置いてある段ボール箱を見つける。箱に印字してある会社名を見て、二人が引っ越すことを知る。小百合は大まかに話し、今月末の日曜日に出ると言った。

「ゆいちゃんが話したいことがあるって言ってたから。このことだったのかな」

「多分。私はゆいについて行くだけ。詳しいことはゆいが話してくれるから。何飲む?コーヒー紅茶、緑茶。アイスもホットもOK。牛乳もあるよ」

「そしたら、甘いカフェオレがいい。あったかいので」

「かしこまりぃ~」

小百合も気になるゆいとの対談。小百合は晩ご飯の仕度をしながら『どうだった?』とだけ聞いた。

「一言で言うと、ゆいちゃんにお願いして良かった。私みたいな人生って変に同情や同調する人がほとんどなんだけど、ゆいちゃん、ちゃんと言葉を返してくれたんだ」

「ゆい、今日の対談すごく緊張してたから。そう言ってくれたらゆい、喜ぶよ。はいっカフェオレ。砂糖ここに置いとくから。あっ!電話だ」

仕事が終わったゆいは、これからいつものスーパーで買い物をすると言った。小百合は映がいることを話すと、良かったとだけ言い、電話を切った。

「ね?小百合ちゃん、今日は何を作ってくれるの?」

「今日はね~」

めちゃめちゃ簡単で、ほぼほったらかしな料理。小百合は映に伝授すると、驚きながら大きなフライパンを覗いた。

そばに来た映に、小百合は気になっていたあのことを聞いた。そう、あの財布のこと。

映もニュージーランドのあの店で財布を買った。小百合は単刀直入に値段を聞いた。

「値段かぁ。私のはあの時で600nzだったかな。奮発しちゃったから。ゆいちゃんが買ったのは400nzくらいだったような。でもゆいちゃん、値段よりもほぼ一目惚れで決めたような感じだった。店主のオバチャンが、一生物だって言った時、これがいい!これにしよう!って」

その時の状況を聞いた小百合は、この財布にもっともっと愛おしさが増す。

 

「教えてくれてありがとう。ゆいには内緒ね。おっ!ゆいが帰って来た」

「ん?そうなの?何で分かったの?」

「車のエンジン音。駐車場の場所は決まってるから、そこから聞こえたら」

 

「ただいまぁ~♪」