緊張がほぐれない時間 | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

小百合はゆい特製のお弁当を食べながら、ゆいからもらった財布の値段が気になっていた。今さら感はあるが、ゆいには理由を聞かずに値段だけ知りたいことを話そうと、ユイたちと話していた。

スタジオでは、これから撮影が始まるが映のインタビューは後半に回し今から映とゆいとのツーショット写真を撮ることになった。

カメラマンは先生。ちなみにインタビュー中の写真も先生が撮ることになっている。

「ゆいさん撮るの久しぶり♪いつ振りかしらね♪」

いつだったのかも、理由も忘れたが、小百合と二人この現場で撮ってもらったことがある。先生は撮るとも言わず、二人が喋っているところをコッソリと。いきなりのことにゆいは驚いたが、その画は二人の笑顔が自然で、自分たちの本当の姿を見られたような気がして少し恥ずかしかったことを思い出した。

 

「じゃ~二人並んで座ってもらおうか。映ちゃんはこっちがいいかな。まずはお澄まし一枚・・・はいっ、もう一枚。映ちゃん、緊張してる?」

「はい・・・」

先生がチェックを始めると、映はゆいに耳打ちした。

「先生って、あの時のこと知ってるの?」

「あの時のこと???」

いきなりあの時のことと言われ、ゆいはどの日のことを言っているのか分からず、『いつ?』と聞いてしまう。映は自分から言っといて黙ってしまう。

あの時のことと言えば、映がいきなりゆいにキスをしたこと。ゆいはビックリしたが映に怒ることはなかった。

「あ~の時のことね。知らないよ。誰にも話してないから。小百合は知ってるけど」

知ってるも何も、映は自分から小百合に話し謝罪したから。今じゃユイたちとのグループラインにも入るほどに仲がいい。世の中どう動くか分からない。

先生のチェックが終わり、あとはエッセイ本のメイン、ゆいとの対談が待っている。お腹が空いた先生は、昼ご飯を挟んでインタビュー撮りをすると言った。

ゆいたちもお昼に入るが、映はちょっと話がしたいのか、ゆいに控室に来てもらった。ゆいはお弁当箱とコーラを持ってドアをノック。

「お邪魔しまぁ~す。あっ、安井さん。今日は私が責任をもって!映ちゃんを家まで送り届けます!」

まるで何かの宣言みたいになっているが、安井さんには安心してもらいたかったから。

「あ~お腹空いた。いただきます」

「お弁当、どっちが作ったの?」

「サツマイモの天ぷら以外は私。で、話って?」

話は、この後の対談のこと。インタビューなので凡その質問は決まっていて、それに対して映が答えることになっているが、ある程度の形式はあるにせよ、ほぼ自由な対談になる。ただ、映の生い立ちの話は別。もしかしたらドン引きされるかもしれないと、事前に少し話したいと言った。

「何で引くの?話は聞くけど引いたりしないよ。全部受け止める気持ちでいるから」

こんな大事な話、お弁当を食べながら聞くことじゃない。でもここで止めたら映はゆいに遠慮して話を止めてしまう。

「最近、私のツイッターのDMに知らない人からメッセージが来てて。可奈ちゃんにすぐ伝えたんだけど」

話を聞いた安井さんは、目だけを合わせ頷いた。

映から聞いた話はゆいの想像を絶することだった。ただ映が話したかった本題はこのことではない。ゆいは今日家に帰ってから小百合と一緒に話を聞くと言い、とりあえずお弁当を食べ終えた。