極度の空腹を満たそうと糖分そこそこのチョコレート数個を持って小百合を迎えに行ったが、その空腹はチョコじゃなく、小百合との幸せな会話で満たされる。でも心は満たされても空腹は変わらない。何でもいいので早く食べたい。
今日はどんだけ振りかのココイチ。いつだったかロケの帰りに行ったような、ないような。小百合にいたってはゆいのカレー以外は食べないという、ポリシーを持っているので、まさか小百合からここへ行きたいと言うとは思ってもみなかった。
ゆいはメニューを見ながら、もう体重が増えても構わん!と思いトッピングをどれにしようかと決めていた。
「小百合もお腹空いたでしょ?ちょっとガッツリ食べてもいい?」
なぜか小百合に許可をもらうような言い方をして店員を呼んだ。ゆいのオーダーを聞きながらきっと帰ったら胃薬でも飲むんだろうと、小百合も同じようにトッピングあれこれ付け注文した。
カレーを待つ間、ゆいはスマホを出し、たーちゃんに撮ってもらった別の写真を小百合に見せた。
「撮影は決まったの。それまでの間肌質をキープしてほしいって言われて今度はコスメ一式渡された」
「でも毎日つけてたわけじゃないのに。元々肌キレイだからね。でさ、やっぱり佐伯さんが撮ることになるの?」
「うん。でも放送は冬になるから肌の露出はないよ」
ゆいの話を聞きながら、小百合はゆいの写真をずっと見ていた。写真の綺麗な顔と同じ顔が目の前にいて小百合を見て微笑んでいる。小百合は何度も見比べながら『同じだぁ』と。
「当たり前でしょ。でもさ、みんなの前でメイク落としてスッピンは恥ずかしかった」
「やっぱ恥ずかしい?私の前では全然そんな感じしないけど?」
「それはさぁ」
「お待たせしました。ロースかつカレーに野菜とチーズ、玉子サラダにコーンのトッピング」
どっちかっていうとゆいは大柄な方だ。その割にはそこまで大食いではない。でもこれだけ注文したということは相当お腹が空いていたんだろうと、福神漬のフタを開けるところを見ていた。
ちなみに小百合はクリームコロッケとチーズとコーン。そしてポテトサラダ。もちろん、ドリンクはラッシーだ。
空腹が満たされると今度は小百合が話をするが、特にこれと言ったことがない。店もそれなりに入ったが、話題になるようなことがない。
「今日は一歩も出なかったからなぁ。だから課題、予定よりも進んだの・・・って大事なことあった!たけもっちゃん、火曜日から店に入るって。だからとりあえず私は今日まで」
「そんな大事なこと忘れてたの?でもこれで課題に集中できるね。良かった良かった」
込み入った話は家でするのが一番。当たり障りのない話をしながら、ゆいは止まることなく食べ切った。
お会計は食費から。ついでにココイチのレトルトカレーも買い、店を出た。
「小百合、帰ってアイスでも食べよっか」
「うん!カレー美味しかったね」
遅い時間のカレーは背徳感もチラリ。でも美味しかったので二人は大満足。
ゆいは、いつもなら少しのドライブと思うが、さすが今日は疲れた。明日時間を作って回ろうと小百合に約束したが、小百合は喜ぶがきっと明日は無理。
小百合の時計を買いに行き、不動産屋を回る。これだけで一日が過ぎていくから。ドライブに行けなくても小百合は拗ねたりしない。ゆいとずっと一緒にいるんだからそれ以上のことは望むことはわがままだ。
家の中でゆいに甘える時間されあればそれでいい。
「明日、用事が済んだら家でゆっくりしたい。いい?」
小百合はゆいの目を見てお願いをした。
「ん?課題は?うん、いいよ。そうしよう」
せっかくの日曜日、ゆっくりしたい日はあまり予定は詰め込まない方がいい。お互い一緒にいればそれでいい。