それは、ゆいのせいなの! | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

明日の夜バイトが終わった夜道、小百合はちゃんと一人で帰れるからとゆいを安心させたのに、今日になって飲み会のゆいを帰りに駅まで迎えに行くと言いだした。

飲み会は6時の待ち合わせなので、解散は小百合のバイト終わりに間に合うかもしれない。でも向こうで話が弾んで途中退席が出来なければ小百合と待ち合わせることは出来ない。ほぼ小百合のわがままだが、ゆいは別にそれでもよかった。よかったと言うのは迎えに来てくれること。でも。

 

「ゆい、やっぱりいい」

「いいって?」

「終わったらそのまま帰る。横山さんのことは言ってくれたら送ってもらう。ゴメンね、朝の忙しい時にめんどくさいこと言っちゃって」

それこそ小百合のわがままで振り出しに戻る。小百合との夜道をちょっぴり期待したゆいは残念。でもしょうがない。ただ、気が変わった理由は知りたかった。

「いいよ。でも気が変わったら連絡して」

朝の話もここまで。ゆいは小百合の心変わりを期待して朝ご飯を終えた。

小百合自身、つくづく思う。めんどくさいやつだと。よくゆいが呆れないものだ。

「ここは私がする。ゆいは自分のことやって」

「うん、あんがと。あ~今日はね急遽瞳さんに就くことになったんだ。場所はみなとみらいの近くの港。単発だから昼過ぎまでには終了っぽい」

「今日も天気がいいから紫外線気を付けてね」

「うん♪」

 

例によって出掛ける支度はバタバタ。よくぶつからないなと思うくらいに狭い部屋を右往左往する。特に今日はバス通勤。1本乗り遅れたらギリ。2本遅れたら完全に遅刻。ゆいは電話連絡すれば多少は無理が利くが、小百合は教室に入れない。気にしてるのは専らゆいで、小百合は急いでるつもりだが、ゆいにはそうは見えない。

「小百合、間に合いそう?1本遅らす?」

「大丈夫。お待たせ」

 

弁当箱が傾かないようにカバンに納め、ゆっくりとリュックを背負った。

先に玄関で待っているゆいの前で靴を履き、小さく息を吐くと背伸びをしていつものチュー❤

「ゆい、今日は飲み過ぎないようにね」

「うん!小百合も今日も遅くまでのバイト、大変だけど頑張ってね」

二人微笑みあい、やっと家を出た。

何とかいつものバスに間に合いそうなので、ゆっくりと坂道を下りる。

「今日は久しぶりにユイちゃんと慎二君に会える。車だとなかなか会えないからさ」

「そうだね。今日ゆいがいることユイちゃんには話してないんだ。だからビックリすると思うよ」

いつも車なので、たまに乗るバスは新鮮だが、強引に乗ったバスは火曜日に乗った時より混み具合酷く、ゆいはつり革につかまるのがやっと。小百合はゆいにしがみつき揺れるバスに耐えていた。

「小百合、大丈夫?」

ゆいは小百合の顔に近づき小声で話し掛けた。バスの中なのでゆいは普通に遠慮した声で聞いたつもりだった。しかし、そうは取れない小百合は下を向きながら何度も頷くだけだった。顔を上げなかったのは、ゆいが耳元で話すから顔が熱くなりきっと真っ赤だと思ったから。

「小百合、下を向いてたら危ないよ」

「うん、うん」

小百合はそっと顔を上げては上目遣いでゆいを見た。

「なに?・・・っ!さっ・・・!」

ゆいが気付いた時にはバス停に到着。押されるように降りると、ゆいは小百合の体を隠すように仁王立ち。

「どしたの?熱でもあるの?大丈夫?」

「違う!もぉ!ゆいが耳元で喋るからでしょ!」

遠くで小百合を待っているユイたちは、ゆいと小百合が何をやってるのかとじっと見ていた。

「ユイちゃんおはよ~♪慎二君も元気だった?」

「ゆいさん!おはよ!何やってたの?久しぶり♪今日はバスなんだね。会えてうれしいよ。小百合ちゃん、言ってよ~」

「じゃ~私、行くから。またね♪」

今日の小百合は手を振るだけで、ゆいを追い掛けることはなかった。