なにから話そうか | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

バイト終わりに車のドアを開けた小百合は助手席のコンビニ袋を見て、ゆいがカレーを作ってくれたことを知った。嬉しかった小百合はその礼を言うが、逆にその言葉が嬉しかったゆいは、このまま帰らないで・・・と思ってしまう。でもそんなわけにもいかず、真っすぐ家に帰りご飯の仕度をした。

「小百合、今日は遅くまで頑張ったから疲れたでしょ。少しだけ飲む?」

「飲む~♪」

今日の晩ご飯はゆい特製カレーライスとコンビニサラダ。そしてグラス半分の酎ハイで乾杯。

小百合は、いただきますもそこそこにスプーンに山盛りすくい、小さな口を大きく開け頬張った。

「美味しい♪明日の夜もこれ食べるね。で、今日の撮影はどうだった?」

「それがね。今日は・・・ううん。順調に進んだよ。早く食べて課題やらなきゃ」

「んっ!なに?途中で止めてさ。私には言いたくないの?」

「そうじゃないけどさ」

「食べてる時くらい聞きたいよ。話してよ」

ゆいは今日あった輪湖さんの話を掻い摘んで話した。話を聞いた小百合もゆいの意見に同調する。

「更年期のことはそうかもだけど・・・あっ!忘れてた」

小百合はカバンから今日買った雑誌を出し、ゆいに渡した。

「後で読んで。それで今日の撮影のこと。飼い犬のことも気付かえないくらいに気を病むことでもあったんじゃない?何か分かんないけど」

「そこなのよ。何か分かんないのよね。それからさ」

今日現場の帰りにたまたま近くを通ったからちょっと素通りしてみたラブホの緒こともカレーをいじりながら話した。

ゆいの手元を見ながら食べていた小百合は『行きたい?』と聞いた。もちろんゆいの返事はNO。

「ホントは?」

「行きたい。でも今は時間がないから。小百合の課題も引っ越し先も。どっちも削れない。それでね、次のアパートのこと、ちょっと考えたんだ」

 

ゆいは今日あった出来事を言わないつもりだった。たくさんあり過ぎて長くなるから。案の定、まだ話は終わらない。小百合のお皿はもう空。皿をチラ見したゆいは、今度こそ話を止め皿を片付けた。

まだ話を聞きたい小百合は、ここじゃなくても風呂がある♪と思い、さっさと入る支度をした。

「ゆい、続きはお風呂で聞く。良いでしょ?」

「うん。でも今日から始めなくていいの?」

「いいの。明日から頑張るから。だから早く入ろうよ」

 

ゆいのこと、知りたがりの小百合だが今日はやたらと聞いてくる。興味を持ってくれて嬉しいが、ゆいだって小百合の話が聞きたい。促しても無駄っぽいと、ゆいは服を脱ぎながらその続きを話した。

「ラブホの前を通った時に思ったんだけどね」

引っ越し先がどうなってるか分からないが、声とか聞こえたらマズい。防音策とか考えないといけない。

「たーちゃんとこみたいに壁に何か貼るとかさ。後は2階以上に住むなら床にも敷かなきゃいけないと思って。小百合、先に洗って」

「ありがと、じゃお先に。そうだね。エッチとか抜きにしても欲しいね。そこも考えなきゃ」

ゆいの話はまだまだ尽きない。今すぐのことでもないので、今度は小百合に話してもらった。

小百合はどっちのことを話そうかシャンプーを濯ぎながら決める。

「卓人が写真集を出すことはファンは知ってたの。で、カメラマンが女性だってことも。多分それを売りにしたんじゃない?それがゆいってことは知らないし言ってない。それでね、そのカメラマンいっそのことブサイクだったらいいって。そしたら卓人もその気にならないからってさ。本当にそうなっちゃうのかな。噂でも嫌だな。ゆい美人だもん」

さっきまで楽しそうにゆいの話を聞いていたのに、自分が言い出したことで小百合はふさぎ込んでしまう。

今までそんなこと一度もなかったこと。今回も当然あるわけがない。ゆいはそこは声を大にして言いたかった。