ベッドにたどり着けない夜 | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

疲れすぎて動きたくない時くらいは怠けたっていい。そんな時こそちゃんと口にしなければ。気を遣わない生活の中に二人の決め事として、してはいけないことの中に『遠慮』『我慢』がある。お互いの気持ちを知るには言葉にして気持ちを伝えること。今日ゆいは自分のことで大事な休みなのに小百合を使ってしまったので、疲れたと言いづらかった。

しかし、一睡もしなければ誰がどう見たって疲れてることは容易にして分かること。ゆいは正直に話すと小百合は背中を何度もさすってくれた。

それだけで疲れが取れた気がしたゆいは、これから小百合を連れてコンビニへ行く。

「ちょっと待って、やっぱりお風呂入れてく」

シャワーの方が手っ取り早いが、やっぱり一緒に入りたい。

小百合が風呂場から戻ってくると、ゆいは『そうだね』と言って車のカギを掴んだ。

 

誰も見てやしないからと、ヨレヨレのシャツと短パンを履いて、そそくさと車に乗り出発。

夜も遅い時間。いくら『開いてます、あなたの〇ー〇〇♪』でも品数は薄く、どれにしようかと悩むほどの商品は置いていなかった。

手当たり次第かごに入れるが、その中はチンが出来るおにぎり、カレーパンにメロンぱん。グラニュー糖ベッタリのツイストドーナツ。そして生クリームいっぱいのソフトフランス。小百合がカップの味噌汁もかごに入れると、ゆいはそのかごを取り上げるように掴んでは牛乳と4枚切りの食パンを入れた。

見ていた小百合はそれでまたフレンチトーストを作ってくれるんだと、思わずゆいを見た。

「ついでだから。明後日にでも」

「ありがと♪もういい?」

会計は小百合が済ませ、あっという間のコンビニデートは終わった。

あっという間すぎて、帰ってきてもお風呂はまだ溜まっていない。

「小百合、先に歯磨きしちゃおう」

ずっとつけていたダブルハートのネックレスは外して専用の袋へ。

「小百合、今日は仕舞っておくけど、時々はつけて出掛けよう」

「そうだね。でも私はゆいが選んでくれたネックレスがいい。でさ、今その話して言うのがちょっと矛盾するんだけど」

小百合は歯ブラシを銜えたまま、ゆいに相談をした。それはゆいにもらった白いダイバーズウォッチのこと。夏も終わるし、そろそろ新しいのが欲しいという。これは小百合のお気に入りだが、汗や皮脂で劣化することも考え、大切にしたいからということも念を押した。

それは小百合の好きなようにしたらいいし、もう小百合の手に渡ったんだから。でも大切に思ってくれることは素直に嬉しいと、何の問題もないことをゆいは言った。

「探しに行くならついて行こうか?いつ?」

「今度の日曜日あたり。ゆいが空いてるならちょこっと見に行きたいなって。もちろん、物件探しの後でいいんだけど」

「もう来週の予定?ちょっとぉ~嬉しいじゃん。来週一週間頑張る励みが出来た♪いいよ、今日付き合ってくれたし一緒に探してあげる」

「あんがと。でもゆいに予定が入ったらそっちを優先してよ」

「ダメ。小百合との約束の方が先なんだから」

 

せっかく一緒に入るお風呂なのに、今日はゆっくりしてる時間はない。

少しでも早く済ませ寝たい。だったらシャワーにした方が早く済ませて早く寝れるのに。

「あっ!まだメイク落としてないじゃん。小百合~いつになったら寝れるんだろう」

「もうちょっと頑張ろう。ほらっ、とりあえずシートで拭いてさ」

自分が予定を詰め込みさえしなかったら、今頃はベッドに入って寝てるか、それとも二人で肌を寄せ合ってるか。自分のせいなんだからしょうがない。

ゆいの大きなあくびが小百合にもうつり、鏡越しで目が合うと思いっきり笑った。笑い過ぎて少し目が覚めてきたところでやっと浴室の扉を開けた。

横になりたいベッドはまだ遠い。