ほぼ、小百合の協力なしでは出来なかった光の写真。
朝日も夕日もキレイに光るお月さまも、小百合の指の隙間からこぼれる表現が上手く撮れたと、カメラのモニター越しからではあるが確認し、これで一つのヤマを越えた。後は担当さんと、今回撮影することになるシークレットの女性芸能人の審査が通れば、大きなプロジェクトに参加できる。
これで先方が選んでくれなくても、本当はそれが目的なので採用となればいいが、そうでなくてもゆいは今回の写真をいつかどこかのプレゼンに出して使ってほしいと思っている。
これからドライブスルーが出来る、つまりマクドナルドを探しながらその思いを小百合に話した。
話を聞いた小百合は、開口一番『応援したい』と言った。
今回の撮影も小百合なりに真剣に頑張った。ゆいがどう表現したいのかは今までゆいの写真を見てきて分かって来たつもり。何とかしてついて行こうと小百合も必死だった。
だからなおのこと、いい方向へ進んでほしいと思う。
「今回のことは小百合が就いてくれてホントに良かった。小百合の手だったから頑張れたのかな」
「そう思ってくれると頑張った甲斐があるけど、ゆいが100%の力を出し切れたならそれでいい」
車はやっと見つけたマクドナルドへ入るが、二人してトイレに行きたいということで駐車場に止め先にトイレを済ませた。
スッキリしたところで注文する時、財布を出そうとした小百合の手を止め、首を振り、ゆいはオーダーした。
「いつものでいい?」
小百合がうなずいたので、定番のセットを注文。
テリヤキバーガーのセットを2つ。ポテトはLLにしてドリンクは今日もコーラ。
番号札を渡されしばし休憩。その間、来ていたLINEを無言で返信していた。
「小百合、明日帰りが遅くなるかもしれない。午後から純さんとこ行ってくる」
「あっ!私連絡してない!明日って現場ってあるの?無かったら休んでテスト勉強したいんだけど」
「明日はないと思うけど。明日の朝、授業前にあきちゃんに電話してくれる?」
「うん、そうする」
こればかりはゆいに頼んではいけない。自分のことは自分で管轄に打診するのがバイトとは言え仕事に責任を持つこと。当然、小百合から連絡が来ることもゆいは言わない。
小百合は袋を受け取り、これから軽くドライブ。
明日は仕事に授業。そんなに遠くまでは行けないが、走れるところまで行こうと、小百合に行先を決めてもらう。
「海とタワー。どっちがいい?」
「うん、ゴメン。やっぱり帰りたい」
「ん?疲れちゃったかな。気付かなくてゴメンね。じゃ、帰ろう」
小百合の横顔はそこまで疲れているようには見えない。しかし今日はずっと気が張ったまま頑張ってくれたので、こんな時間では疲れが出てくることをゆいも気付かなきゃいけなかった。
自分のことしか考えてなかったゆいは気持ちを切り替え、小百合の身を案じた。
「家に着いたら起こしてあげるから寝てていいよ」
「大丈夫。わがまま言ってゴメン」
「お腹空いてるでしょ。ポテトだけでも食べなよ。あっ、コーラちょうだい」
小百合から渡されたコーラ。一気飲みしては、空きっ腹にはきついと吠えた。
「小百合?どうしたの?」
「ホントはドライブしてほしかったの。でも行っちゃうと帰りたくなくなるし、だったら我慢して帰った方がいいのかなって。それに今日はゆい運転しっぱなしだったから疲れてると思って」
「え~!私、全然疲れてないよ。でもありがとう。そっか。もっと時間作ればよかった。来週は?」
ゆいは来週こそは!と思うが来週は物件探しという重大な予定が入っている。思い出したゆいはそれこそ『ゴメン』
「ゆい、予定は詰まってる方がいい。今日は帰ろう。昨日から全然寝てないんだから」
そう。小百合の言う通り今日は帰ろう。