小百合には敵わない | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

二人の初日の出。と言っても元旦のめでたい初日の出ではない。

ゆいと小百合、初めて二人で見る日の出だ。

そんなことは後から気付くが、今日の目的は小百合の手を使って日の出を撮ること。日が昇るまで少しだけ真面目な話をした時、ゆっくりと空が明るくなってきた。ゆいはカメラを構えずっとシャッターを押していた。

水平線から少しずつ見えてきた太陽は、カメラとゆいを照らす。

小百合はその横顔をスマホで何度も撮り、小さく笑みを浮かべると一緒になって昇る朝日を見ていた。

 

「小百合、お願い!」

「ドキドキしてきたぁ!」

ゆいは小百合の後ろに回り、小百合がかざす手に太陽が重なるよう、いろんなポーズをお願いしアングルを考えながら一心不乱に収めた。

その時間は短く、空がだんだん明るくなってきた。二人とも無我夢中で、太陽が眩しくなってきた時、太陽が昇り切り小百合の手は届かなくなった。そしてゆいは終わったとカメラを降ろした。

 

「あっという間だったじゃん。ゆい、どう?」

「ちょっと待っててね」

無言でチェックするゆいに小百合はソワソワ。横から覗き込んではゆいの表情を窺う。

「小百合、ありがとう。お疲れ様♪良い画が撮れたよ。見て。これ!小百合の手にキレイに収まってて、光の反射がいい感じに入ってる」

「お~♪いいね。ね?これだけ撮って、何枚くらいが通るの?」

「そうだね。全部って言いたいんだけど多分2割くらいかな。でも私のお気に入りは全部。ご協力ありがとうございました♪小百合のおかげで大成功です!」

 

一つ任務を終了したゆいは猛烈にお腹が空いた。一旦帰ってもいいが、小百合が昨日もらってきたお下がりのいなり寿司を持ってきたので、このままちょっとドライブをしようと提案。スマホケースを買いに行く約束があるので、あまり遠くへは行けないが、ゆいは少し流すと言って荷物を片付け始めた。

「小百合、眩しくなかった?目、大丈夫?チカチカしない?」

「その辺は目を逸らしたから大丈夫。ゆいだって太陽見っ放しだったじゃん。昨日も撮影で目を酷使してたし」

「ストップ。心配してくれてありがとう。大丈夫。さぁ。ドライブ行くよ」

駐車料金の代金は小百合が払うと言って聞かないので、今日はガソリン代と一緒に甘えることにした。

これから往復3時間ほどのドライブ。その前にスタンドへ。

小百合からガソリン代をもらったがそれでも最低限の量を入れるつもりだった。

ところが、いざ入れようとすると窓を開けた小百合から『満タンで!』と言われてしまう。セルフの給油機、何度も見てる小百合にはお見通しだった。

じっと見ている小百合に、ゆいは苦笑い。言われた通り満タンに入れるが、思いのほか安く済んだ。

「ゆい、お釣りはいらないよ」

「じゃ~1000円返す」

「・・・バカじゃないの!受け取れって!」

3つも年上の人に向かってバカとはなんだ!と怒っていいはずだがゆいは笑う。

「ゴメン。バカって言っちゃった」

「おっ、素直じゃん。そんなことくらいじゃ怒ったりしないよ。ありがとう」

ゆいはスタンドにある自販機でお茶を買い小百合に手渡すと、大きく伸びをして車に乗った。

 

小百合に海を見せてあげたいゆいは、たまにはと茅ケ崎方面に向かう。

お腹が空いた!と半泣きのゆいに、信号で停車したタイミングでウェットティッシュで手を拭かせいなり寿司を一つ手渡した。

「ありがと♪・・・美味しい!いくつ入ってるの?」

「8個。いただきます・・・うん!美味しい。これだったらもう一つもらってくれば良かった。残念」

「これだけでいいよ。また太っちゃうよ」

「うん・・・ん?また?またって?そのまんまがいいって言ったの誰だっけぇ?それはそうとさ、夕日の写真はどこで撮るの?」

写真の出来を見たゆいは場所の変更を考える。