昨日の夜、あんなにもゆいを求めたのに、あんなにも体は反応したのに小百合の心は満たされなかった。
小百合がいるのにゆいの心には別の人がいた。それが一瞬でも。
それが小百合の勘違いでも、事実じゃなくても、一旦湧き上がった感情は拭えない。
それでも、今ゆいが一緒にいるのは自分だと心に言い聞かせ、眠れるまでずっと目を閉じた。
朝、目覚ましのことでブツブツ言っていた小百合はアラームが鳴る前に目を覚ました。
ゆいよりも早く起きたと思い、目を開け時計を掴むとゆいはもう起きて小百合を見ていた。
「あっ、ゆい。起きてたの?おはよ」
「おはよ。小百合、昨日付けた印、見せて」
開口一番何を言うかと思ったら。小百合はシャツをたくし上げ、ゆいに見せた。
てっきり確認だけかと思ったら、突然その上にもう一度付け始めた。
「ゆい?」
「・・・これで取れないよね。小百合昨日の夜から何だか変だったから」
「何が?私が積極的だったから?私だってそう思うことはあるよ。理由がなきゃダメ?」
「ううん、そんなことない。ないけど」
小百合はゆいのシャツを捲り、同じ場所に印をつけた。
早めにセットした目覚まし。まだ起きるまでに時間がある。
少しだけならと、小百合は先へ進んだ。
二人が夢中になりかけた時、我に帰った小百合はギリギリの時間に気付く。
「ゆい、もう起きなきゃ。途中でごめんね。手紙書く時間もなくなっちゃった」
「ううん。ねぇ?この続き、今日もしてくれる?」
「しない。続きはしない。するなら最初っからね」
「もぉ~~!」
小百合のイジワルな返事に、ゆいは小百合を胸に寄せ、一瞬だけ強く抱きしめた。
「もぉ・・・」
「ゆい、起きよう。お腹空いた」
二人して大きく伸びをして、やっとベッドから降りた。
いつも時間はギリギリだが、今日はいつもに増して時間がない。
自分がけし掛けたせいだと思ったゆいは、ごめんねと何度も謝り、一緒に台所に立った。
「ゆい、謝るのっておかしいよ。したいからそうしただけなのに。
私は・・・嬉しかった❤ゆい、この話は終わり。お弁当、手伝って」
謝られると却って傷つく。もう聞きたくない小百合は話を止めた。
「ゆい、冷蔵庫にキャベツの千切りが入ってるから、それも入れて。
今日はね、焼売も揚げてみたんだ。前にねネット検索したら作ってる人何人もいてさ。
お弁当にピッタリじゃん。おかずに困ったら入れようかなって。
玉子焼き作るから、ボウルに入れてくれる?」
小百合の話を聞きながら、ゆいは無言で用意をした。
返事のないゆいに小百合は腰で軽くぶつかり、ゆいの反応を見た。
「ゆい?今日はそのままで仕事に行くつもり?
みんなに聞かれたら何て答えんの?もぉ!しっかりしろ!」
小百合はゆいのお尻を叩き、そしてギュっと摘まんだ。
「いた~い。分かったよ」
「分かればよろしい。揚がった、揚がった。後は玉子焼き。ゆい、私今日コーンスープがいい」
「うん。んじゃ後は小百合にお願いするね」
背中を向いたゆいを小百合は呼び、軽く、触れる程度のチューをした。
やっと笑顔になったゆいは、朝ご飯の支度を始めた。
今日のお弁当は、揚げ物多め。
ポテトコロッケとカレーコロッケ、焼売のフライに玉子焼き。
隙間にキャベツの千切りを押しこんで出来上がり。
ただ問題が。
ゆいには言ってあるが、今日は手紙が書けない。
一言こっそりも出来ない。
「そうだ!あれだ」
小百合は引き出しに入っている野菜の抜き型を思い出し、ちょうどいい❤の型を出した。
「これこれ♪ご飯の上に、ゆかりをパラパラ・・・っと」
「小百合?何してんの?」
「内緒。間違えないようにしないと❤」
ゆいに見られないようにフタをし、やっと出来上がり❤
ゆいの反応が見たいが、そこはお昼のLINEを楽しみと言うことで。
「小百合、終わった?」
「うん!あっ、美味しそう♪」
「サンドイッチだから、満腹感はないけど」
「いいよ・・・っていうか、これだけあればじゅ~ぶん。食べていい?」
やっとやっとこれから朝ご飯。
目の前の美味しそうなサンドイッチに、小百合は思わず喉を鳴らした。