そもそも先生の小百合への勘違いから発覚した『ヤバい』話。
小百合がこっそり調べたことで公になってしまった。
先生は慌ててゆいたちに謝り、一人オロオロする。
ゆいは、撮影時間まで少しの間先生と話をした。
「先生。すぐに連絡をせず申し訳ありません。わざわざ東京まで出向いて紹介して頂いたのにって思ったんですが、こんな事情なのでどうしようかと。
まさか小百合が調べるとは思ってなかったので」
「私も、大抵の男性カメラマンの悪行を耳にしてるけど、まさか・・・。後で健斗君に連絡しておくわ。
ゆいさん、小百合ちゃんには見学の話はしなかったの?」
「本田さんにお会いしたことは一切話しませんでした」
「そうだったの。私がイケメンだって言ったから調べたのかしら。ホントに、ゆいさんたちには嫌な思いをさせてしまって。
申し訳ない。私のリサーチ不足だったわ」
ゆいはそこまで先生に謝って欲しくない。そうじゃない。
「先生!止めてください。私たちは先生があのスタジオに連れてってくださって、有り難いと思ってるんです。貴重な時間を頂いたと思ってます」
「そう言ってくれて嬉しいけど、みんなに会わす顔がない」
「もぉ~!先生!」
「トントン・・・失礼します。お約束の方々がいらっしゃいましたけど・・・?どしたの?」
「ううん。あきちゃん、すぐに利恵さんのところに行ってもらって」
「は~い」
「ゆいさん。この話は改めて4人で話しましょう。じゃ、撮影お願い」
「はい。失礼します」
先生はゆいが部屋を出るとすぐに健斗のマネージャーに電話を掛けた。
午前中はオフだと言われ、携帯に電話を掛けた。
『もしもし?健斗君?波良です。昨日はお疲れさま。今いいかな?あの話なんだけど』
『あっ、聞きましたか?名前は言えないんですけど、モデル本人から聞いたんです。
本田さん、若いけど情報通でいろんなこと握ってるみたいなんです。
イケメンで知識も豊富で。お金まで持ってたらモデルたちは近寄りたいですよね。
あの人、ずっとゆいちゃん見てたから。誰かが手を付けられる前に知らせておこうと思ったんです』
『ありがとう。健斗君から聞いたことをゆいさんから聞いて。
本当にありがとう。あっ、今どこ?家?』
『今ですか?彼女と一緒です・・・なんて。今寝起きでまだ布団の中です。もうちょっと寝るんでぇ~』
先生はもう一度お礼を言って電話を切った。
「ふ~。お腹痛い・・・」
小百合は痛い足をかばいながら現場の準備中。
手伝ってあげたい瞳も由紀も、小百合が断るので手が出せない。
それを見たゆいはため息を吐くが、やる気でいるのを止めるのもと思い、重たいものだけ手伝って準備を終えた。
今日の撮影はインタビュー記事に載せるスナップ写真。
先にインタビューは終わっているので今回は写真だけ。
普通はインタビューしながら、語る姿を撮るものだが、今回はテレビ雑誌のように別撮り。
ゆいにとっては有り難い。すぐ終わるから。
あまり見掛けない女性タレントで、一応挨拶はするが、全然会話がない。
ゆいも今はそれどころではないので、小百合にレフ版の指示をして先方の要望通りに撮影をする。
衣装もこの一枚だけなので、撮影時間は1時間半で終わってしまった。
「チェックが済みましたので、これで終了です。お疲れ様でした。
今日中に全てを確認しましてファイルを送らせていただきます」
小百合は、『もっと声を出して~とか、雑談でもしながら~』とか思ってたので、どうしたのかと。
「ゆい?今日は静かだったね。やっぱり気にしてた?」
「うん。小百合の足。どう?踏ん張ると余計に痛めるから気をつけて」
「大丈夫♪折れてるわけじゃないから。ねぇ?健斗さんにLINE教えるって、あれ。
ゆいが私に教えてくれるの?それとも私のIDを健斗さんに教えるの?」
そんなこと頭の中からすっかりどこかに飛んで行った。
「忘れてた。小百合に教えるから・・・やっぱりダメ!私が健斗さんに教える」
「うん」
「ねぇ?健斗さんとLINEが出来るんだよ。嬉しくないの?何か冷めてるけど」
「そんなことないよ。嬉しいよ。嬉しいけど」
小百合は健斗とLINEが出来るようになったらどうしても言いたいことがあった。