「東電の対応は適切であったのか」-ル・モンド紙 など2本 | 福島原発に関するフランスメディアの記事の要約、日本語訳

福島原発に関するフランスメディアの記事の要約、日本語訳

双方とも原発大国でありながら、福島の原発事故に対して日本メディアと論調が違うフランスメディア。その中から毎日いくつか記事をピックアップして、日本語での要約を掲載。

おはようございます。

先日福島第一原発の事故のINES尺度が、日本政府によりレベル7へと引き上げられましたが、その対応の遅さをフランスのNGO環境団体CRIIRADが批判しています。最初にその記事を要約しようと思ったのですが、CRIIRAD側が正式に和訳していたので、そちらのリンクを紹介します。
続いてフランスの主要紙ル・モンドの記事で、東電の対応の善し悪しを問う記事を要約します。


CRIIRAD
4月12日付

専門家が計算するあいだ、住民は被害を被る
http://www.criirad.org/actualites/dossier2011/japon_bis/en_japonais/jap_classement_ines.pdf


続いては、ル・モンドの記事を要約します。

LE MONDE
4月15日付

Tepco a-t-il bien réagi à l'accident nucléaire à Fukushima ?

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福島原発に関するフランスメディアの記事の要約、日本語訳



<要約>
・今回この記事を書くにあたって取材した原子力の専門家達は皆、事を大きくしないように注意しているようであった。そして日本の同業者達に「石を投げる」ようなことを拒んでいた。

・CEAフランス原子力庁の長官であるChristophe BEART氏は「当初事態はとても困難なものであった。道路も閉鎖されており、電力も落ちていた。作業員達の心理状況をも考慮しなければならない。津波と地震の影響で、家族の安否が分からないまま活動を余儀なくされた者もいる」と前置きした上で、取材に応じた。また正確な結論を導くためには、事故が完全に沈静化する必要があると語った。


福島原発に関するフランスメディアの記事の要約、日本語訳



事故を防ぐことは可能であったのだろうか。


・揺れが生じた際、原子炉は正常に停止した。しかし続いて到来した津波が冷却システムを破壊した。ASNフランス原子力安全委員会のThomas HOUDRE氏はこれを「想定外の出来事」であったとした。

・とはいえ匿名を条件にとある原子力の専門家は「東電は最初に適切な対処を行わなかった。当初から迅速に放水を行っていたら、1号機、2号機、3号機の炉心が一部融解することを防げた」と批判した。

・多数の専門家が「もっと早くに外国に援助を要請すべきであった」とした。またCEAのBEART長官は、「蒸気によって稼動するターボポンプのバッテリーが準備されていなかった。またフランスの様に、すぐに準備できる予備のディーゼルバッテリーで稼動するポンプがなかったのが残念だ」と続けた。

・先ほどの匿名の専門家は「圧力を解放するためにベントを開栓した判断は間違っていないが、東電は水素の存在を忘れていた」と続けた。その水素が建物の上部にたまり爆発を招いた。

・爆発により屋根の部分などが吹き飛び、放射能が放出されたとともに、ポンプや使用済み核燃料のプール、第2号機(第1号機もそうかもしれない)の作業施設などがダメージを受けた。

・多くの専門家が「水素が建屋内に篭らないために、屋根のタイルを一部剥がし通気溝を作るべきでった」とした。またCEAのBEART長官は「フランスの原発の様に水素の循環システムが整備されていたら、爆発は防げた、あるいは軽減できた」と語った。

・またIRSNフランス放射線防護原子力安全研究所のThierry CHARLES氏は「東電は直ちに冷却に取り掛からなかったことでリスクを犯した。原子炉内の冷却水は沸騰状態にあり、燃料棒が剥き出しになり放射能が漏れ出す事につながった」と指摘した。


海水の注入のタイミングは適切であったのだろうか。

・東電はメディアに海水の注入開始の遅さを批判されている。海水を注入すれば廃炉が余儀なくなるため、躊躇したというわけである。しかしそれに対してASNのHOUDRE氏は「東電は適切な順番で処理を行った」と評価した。原子力専門の学者であるBruno COMBY氏は「私の知っている限りでは、実際に原発内に海水が注入された事例は無かった。それを実行する前に、東電側は原子炉の設計企業などと相談をしたかったのでは」と推測した、

・多くの専門家達が、この海水の注入が事態が更に深刻化するのを防いだと評価した。とはいえIRSNのCHARLES氏は「海水が真水に、3月26日の時点で切り替えられて良かった。海水による冷却が続くと塩が配線、配管内などに詰まり冷却効率が悪化する危険性があったからだ」とも述べた。


続いての問いは、大気への放射能物質の流出をもっと少なくすることができたかだ。


・IRSNのCHARLES氏は「我々のデータによると、放射性物質の大半が、原子炉内の圧力を軽減するためにベントを開栓した際に漏れ出ている。とはいえ圧力が増加し続けると大規模な爆発が起きる可能性があったので、避けられない対応であった」と理解をしめした。冷却が早い時期に開始されることが、放射性物質の流出を少なく出来たのだ。

・原発一体をシートで囲むという東電側の案は、「良いアイデアだ」とCHARLES氏は続けた。「ただし新たな爆発を防ぐために、水素の抜け道を準備する必要がある」とも警告した。更に「原発周辺の地面への拡散防止の化学物質の散布は、土壌汚染を防ぐのに役立っている」と語った。


海への故意の汚染水の放出は必要であったのだろうか。


・東電は4月4日から10日までの間、故意に低濃度の汚染水を海へと廃棄し、高濃度の物の移動を行ったとした。これに関しては専門家達は「必要悪であった」と賛同し、高濃度汚染水を移すスペースが空くことで、作業員達の活動範囲が広がったとした。


それでは、チェルノブイリの場合の様に、石棺で早期に覆い隠すべきであったのだろうか。


・ASNのHOUDRE氏は「冷却をするためのあらゆる手段が、完全に断たれた場合には考慮しなければならなかったが、そうではなかったので今回は必要なかった。」とした。専門家達は福島第一の事故は、チェルノブイリのように炉心が大気中に丸出しになっているわけではないので、危険度が違うと指摘した。


東電の作業員達は危険にさらされているのか。


・これに関しては情報がとても限定的である。3人の作業員達が長靴をはかずに、高濃度の汚染水に浸ってしまったことが分かっている。「彼らは200mSv被曝したことになるが、一応日本が年間基準として設定している250mSvは下回っている」とASNのCHARLES氏は述べた。

・一方でNGO環境団体のCRIIRADは「生命に影響する重大な害」を招きかねない危険量だと警告している。しかし別の専門家は「国によって、緊急時には500mSvまでの被曝が作業員に許可される所もある。東電の作業員達がリスクを犯しているのは事実ではあるが、すぐに生命を左右する影響がある量ではないので、『犠牲』になっているとは言えない」と反論している。

・一部の作業員が放射能検知メーターをつけずに作業することが求められるなど、必ずしも法による規定が守られていないのも事実だ。

・現在のところ約20人の作業員が被曝の影響を受けたとされているが、チェルノブイリの234人に比べたら、今のところは少ない。また東電が下請けや孫受けの企業の作業員を多く活用している批判に対して、Bruno COMBY氏は「規模の問題で、東電は普段からメンテナンス作業など、多くの活動を外注している。そういった意味では、今回も多くの提携企業の作業員が借り出されるのは、致し方ないと言えるのかもしれない」と発した。


海外諸国からの援助は日本に無視されたのだろうか。


・まず最初に米軍は空中から、核分裂を防ぐ効果があるボウ酸を配布することを求められた。それと同時に、福島第一原発の一部を設計しているアメリカのGeneral Eletric社が、真っ先に支援を表明した。しかし日本側はそれをどこまで受け入れたかは不明である。

・全体的に、日本側は外国諸国による道具・ロボット・専門家などの派遣、提供の申し出に対して、受け入れるまでに長い時間を要した。現にフランス側のロボットの提供が断られている。これに関してBruno COMBY氏は「日本の原子炉の作業スペースがフランスのものに比べて狭すぎて、ロボットが入りきらないので断られたのであろう」と説明した。

・「海外に援助を要請するには、事情を正確に説明し、また回答を待つ必要があり、そう簡単なものでない」と、CEAのBEART長官は答えた。また現在では、フランス側から多くの専門家が日本に派遣されているとも述べた。


最後の問いだが、何故事故が発生してから1ヶ月以上がたつのに、通常の冷却システムが復旧していないのだろうか。

・IRSNのCHARLES氏は「驚くことではない。建屋内の汚染水を除去し、回線などを乾かし、そして配線やシステムに故障や問題がないか点検し、修理するのには数週間から数ヶ月を要する」と答えた。また周辺の土地を完全に除染するには、約20年ほどを要するとも説明した。



まとめとして、専門家達は東電は概ね適切な処置を取ってきたとした。しかしタイミングの遅さ、特に事故直後の対応の遅れを問題視した。




以上です。





また別の記事を要約します。
皆さん良い週末を!