「日本のエネルギーの未来予想図」-ル・モンド紙 など2本 | 福島原発に関するフランスメディアの記事の要約、日本語訳

福島原発に関するフランスメディアの記事の要約、日本語訳

双方とも原発大国でありながら、福島の原発事故に対して日本メディアと論調が違うフランスメディア。その中から毎日いくつか記事をピックアップして、日本語での要約を掲載。

おはようございます。

今回は2本の記事を要約します。

1本目はサルコジ大統領の来日の背景に隠された事情を批判する記事、2本目はル・モンド紙の日本のエネルギー事情の未来を予想する記事です。

最初の記事なのですが、Le Postというウェブ新聞がソースです。このウェブ新聞は権威があるものではありませんし、決してル・モンド紙のような高級紙でもありません。言ってみたら日本のスポーツ新聞や週刊誌に値するのでしょうか(とはいえ、Le Postには下品な記事等は一切なく、政治系の記事が多くを占めていますが)。
このような見方をするフランス人も多く見受けられる現状を踏まえ、今回皆さんにご紹介することにしました。


一方二つ目のル・モンドの記事は、日本の現状を冷静に分析すると共にとても前向きで、日本の進むべき未来をしるしているのではないでしょうか。暗い毎日が続くなか光が差し込む、なかなか良く書けた記事だと思います!



LE POST
4月2日21時9分付け

Fukushima, mon amour… mais t’approche pas trop quand même !

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<要約>
・サルコジ大統領は、フランスの地方選等での大敗を繰り返している。フランス国内では最悪なイメージが付きまとっており、今回の「世界の王様」」を気取った来日は、その負のイメージを払拭するには絶好の機会であった。



福島原発に関するフランスメディアの記事の要約、日本語訳




・大惨事に直面している日本に外国の指導者として一番最初に出向き、連帯と支援を強く表明する姿がフランスのニュース番組のメインを飾ることは、彼にとって明白なことであっただろう。

・今回の事から分かるのは、フランスは人権の国などではなく、不透明性が際立つ原発国家と言うことだ。AREVAの専門家を派遣したことが取り上げられているが、プルトニウムとウランを含み、核廃棄物を生み出すMOX燃料を日本に提供しているのも、同じAREVAである。

・フランス国内で68%もの不支持率を誇るサルコジ大統領は、今回の日本への支援をフランスの原発技術を世界へと宣伝し、販売を促進するための「ショーウインドウ」として活用している。

・原子力エネルギーを地球温暖化を防ぐ唯一のクリーンエネルギーと位置づける一方で、新たなクリーンエネルギーを研究するための支出を削減し、オゾン層の破壊を招き、地球温暖化へとつながる生産性至上主義の農業を促進するロビー活動を繰り返す。
このように矛盾しているサルコジ大統領の目的はとても単純かつ明らかである。議論を封じ込め、原子力産業を賛美しようとしているのだ。

・サルコジ大統領がどれだけ原子力産業を愛しているとしても、一つだけはっきりしているのは彼が今後日本、特に福島周辺で休暇を過ごすことは一生無いということ、そして彼の別荘があるCap-Nègre地方に原発が建設されることも決して無いということである。そう、リスクを被るのは彼の訳はない・・・



以上です。





LE MONDE
4月1日付

Quel modèle énergétique pour le Japon de demain ?

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<要約>
・今回の福島原発の事故は、日本のエネルギー生産のシステムに亀裂が生じている事を明らかにした。
経営不振に陥る電力会社、原発を拒絶しだした国民、電力不足に陥る東日本が大きくクローズアップされている。

しかし今回の危機は、日本にとって新たな節電、省エネ技術を開発するとともに、新しい形のクリーンエネルギー産業を創り出す可能性をも秘めている。

・日本では地域ごとに分割された10の電力会社が、電気の85%を生産している。それらは電気の生産、送電、および施設の建設、運営をも兼ねている。一番巨大なのが27%のシェアを誇る東京電力である。

・日本の電力の63%は火力発電所によってもたらされている。しかしそのためには石炭、天然ガスや石油などが必要であり、アメリカのエネルギー省の下部組織であるEIAによると、日本はその原料の16%ほどのみしか国内で採取できず、残りは輸入に頼っている。現に日本の石炭と液状化天然ガスの輸入量は、世界一だ。

・原発により生み出されている電力は27%ほどであり、一方で再利用可能なエネルギーによる発電は2%
ほどである。2%とはいえ、日本は太陽エネルギーによる発電量は世界三位であると共に、海辺における風力発電の莫大的な強化案が、今現在議論されているところだ。

詳しくは下記の図を参照。2008年度の日本の電力生産元を表した図で、ソース元はアメリカのエネルギー省。目次の部分だけ僕が和訳しました。



福島原発に関するフランスメディアの記事の要約、日本語訳

東京などの首都圏を含む本州の北東部分では、現在電力の生産量が20%ほど落下している。この地域では福島第一の6つを含む11個の原発、および約10強の火力発電所が停止されている。エリアごとによる3時間ほどの計画停電や、企業などの節電努力により現状をしのいでいる。

・今回の事故は日本の構造上の欠陥をもあらわにしている。北東では周波数が大半の欧州諸国と同様に50ヘルツであるのに対して、南西ではアメリカのゼネラル・エレクトリック社の影響で60ヘルツとなっている。残念ながら、日本には周波数をコンバートするための変換器はほとんど無い。

・エル・パイス紙(スペインで一番メジャーな新聞)は、これに対して「この矛盾は、日本人をほろ苦い気分にさせている。小国であると共に、最先端の技術王国である日本が地域によって違う周波数を用い、そのための変換機をもほとんど持っていないのは、とても信じがたいことだ」と記している。

・同紙がインタビューした専門家は、これらの周波数を変換することは可能ではあるが、そのためには数ヶ月を要するであろうとしている。

地域によって電力会社を10に分割するという形式は、今後の日本には適しているのであろうか。また今回の福島の事故の様に東電という一つの地域電力会社が、原発の沈静化、冷却のための作業費を捻出するともに、被害者や避難を強いられている人々への賠償金、および影響を受けた農家への補償金の支払いなどを賄う必要があるというのは、構造的問題をあらわしていないだろうか。

・東電を一時国有化するという噂がたったが、4月1日に菅直人首相が「公的支援はあるものの、国有化はありえない」と正式に否定した。海江田産業大臣は、政府がどのような経済的支援ができるか検討する特別委員会を設立すると表明した。とは言え、現在の地域に分散された電力会社の構造的見直しは、行われる模様が無い。


・日本経済、および日本のエネルギー産業の専門家であるEvelyne Dourille-Feer氏は、「3月11日の地震が発生するまでは、輸入に依存している石炭や天然ガスの影響から脱するために、2030年度までに原子力エネルギーによる発電比率を現状の23%から、50%まで引き上げる予定であった」と述べた。しかし今回の地震はこれらの予定の変更を余儀なくするであろう。


・同氏は「原発を保有している日本の電力会社は、それらの性能と安全性を高めるために必要な費用を計算しだしている。結果として原発に対する必要経費が膨れ上がれ、石炭、天然ガスや石油に依存している火力発電に対しての経済的優位性が損なわれるであろう」と続けた。


福島原発の事故と、予想される日本のエネルギー政策の転換は、新たな再利用可能なクリーンエネルギーを発達させる「チャンス」でもある。とはいえ「水力発電はこれ以上の成長は見込めない。太陽光発電と地熱発電はまだ発展する余地はあるものの、限定的である」(Evelyne Dourille-Feer氏)。

・そのため専門家達は、慣行的な火力発電所への依存が高まるのではないかと見ている。しかもそれはCO2の大量発生へと繋がってしまう。3月11日の地震発生以降、市場の石炭のチャートが11%ほど、液状化天然ガスのものが約4%上昇したのは、偶然ではないだろう。


・先ほどのEvelyne Dourille-Feer氏は、「それとは別に今回の事故は、70年代のオイルショックのときと同じ様に、日本人がなおさら節電、省エネ技術の革新に力を注ぐことにつながるであろう」としている。


・保有している一次エネルギー貯蔵量の少なさから、日本は早い段階から国家レベルで省エネ政策を取ってきた。1979年に公定された法律では、産業・工業会社に対して毎年1%ずつエネルギー効率を良くすると共に、その業務に特化した社員を、最低1人は保有することを義務付けてる。


・「トップランナー方式」とも呼ばれている1998年に制定された法律では、「エネルギー多消費機器のうち省エネ法で指定する特定機器の省エネルギー基準を、各々の機器において、基準設定時に商品化されている製品のうち『最も省エネ性能が優れている機器(トップランナー)』の性能以上に設定する制度」(注:和訳するに当たってWikipediaの解説を引用させてもらいました)が求められた。これらの努力が、例えば自動車業界を取ってみても、日本製のハイブリッドカーが世界市場を牽引している事に繋がっているのは、明白である。

・国連の行った調査によると、一人頭あたりの日本人の電力消費量は、アメリカ人のものの半分ほどという結果を生んだ。生活水準が著しく向上しているのにもかかわらず、日本のエネルギーの消費量が40年前と変わらないというのは、日本人の努力の賜物以外にありえない。


・政府予想によると、これから2018年までの間、日本の年間エネルギー使用量は毎年0.7%ずつしか上昇しない。福島問題が落ち着いた暁には、日本人は必ずやその才能と努力が功を奏し、原子力エネルギーや一次エネルギーの輸入への依存を乗り越えるであろう!



以上です。個人的な意見になってしまいますが、この記事にはとても勇気をもらえた気がします。


それでは皆さん、良い日曜日をお過ごしください!!