「罪なる沈黙」 - ル・モンド紙 など2本 | 福島原発に関するフランスメディアの記事の要約、日本語訳

福島原発に関するフランスメディアの記事の要約、日本語訳

双方とも原発大国でありながら、福島の原発事故に対して日本メディアと論調が違うフランスメディア。その中から毎日いくつか記事をピックアップして、日本語での要約を掲載。

おはようございます!

約束どおりASNの26日の公式声明をアップしようと思ったのですが、今日は珍しく声明の発表がなかったようです。明日27日にもし発表されたら、そちらをアップしたいと思います。

今回はかわりに2本要約します。

1本目にはフランスを代表する高級紙(フランス一の発行数)、ル・モンド紙の記事を紹介したいと思います。先日23日の別紙の記事に続き、再び日本の原子力ロビー活動を危惧するものです。最近この論調の記事や批評の数がとても多くなってきています。

2本目はASNの声明の代わりに、IRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所)の福島に関する声明です。



LE MONDE
3月26日付

Fukushima, silences coupables

オリジナルの記事はこちら


福島原発に関するフランスメディアの記事の要約、日本語訳



<要約>
・政府の不十分な説明、事態の深刻さ、そして先行きの見えない状況に日本国民は恐怖を感じている。またテレビやメディアに登場する原発の専門家の背景に、原子力のロビー活動の影が潜んでいることを自覚しつつある日本人も増え、それがなおさら心配を増長させている。

・そのロビー活動の核は、
電気事業連合会や原子力安全・保安院や原子力産業に関わる企業(日立や東芝など)を統括する経済産業省にある。

・同省の官僚や上級公務員等が電力会社などへの天下りを繰り返し、大金を投じて原子力エネルギーを賛美する広告などを繰り返し、反対意見を封じてきた。

・2009年に起きた民主党への政権交代も、この流れを変えることはなかった。民主党は日本労働組合総連合会に強く影響を受けており、この連合会には原子力産業に関わる多くのエネルギー企業が参加しているのが理由だ。

・このように官民一体となった強いロビー活動は、反対派の意見を抹殺するどころか、国民間で原発の是非を問う議論が起こりすらしないようにコントロールしてきた。

2002年に
東電が原子力発電所における過去の点検記録を改したり、不祥事が相次いでいたという事実も日本人の目を覚ますことなかった。

・東電などの電力会社が目先の利益を優先し、長期的なビジョンを持った安全策を怠り、地震や津波などのリスクを軽視してきたことを告発する者も増えている。

・福島第一原発は、1956年に起きたチリ沖地震の数値を基準に、5.5メートルの津波に耐えうるように設計されたが、それは不十分であった。福島第一の建設に関わった二人の元東芝の原子力エンジニアは、東京新聞に対して「設計の際、地震などの影響を最小限に見積もった計算に基づいた」と語った。

・海江田経済産業大臣は事態がおさまったら「東電の責任を問う」と述べているが、それまでに伴う被害者の数は計り知れない。

・元東芝の原子力エンジニアが、「今回の事故は天災ではなく完全に人災である」とまで述べている。

・ウォール・ストリート・ジャーナルは、原子力の専門家であり、日本共産党の衆議院議員でもある吉井英勝氏が2010年に発行した著書を大きく取り上げている。この本で吉井議員は、原子力安全・保安員の資料に基づいても、日本の原発の中で福島第一は度重なるトラブルを連発しており(2005年から2009年の間で15回ほど)、作業員の被曝量がもっとも多い原発であると警告を発していた。またメンテナンスや点検を担当しているのは経験が少ない下請け企業の社員が多いとも、注意を促していた。

・また共同通信に対して、高級官僚が「東電は事態の深刻さを自覚するのに大変時間を要した。最初の二日間は国民の安全より、原子炉を廃炉しないで済ませることを優先していた」と伝えた。

・地震発生時福島第一に来ていたAREVA
(仏独原子力産業複合企業)の作業員8人が、真っ先に事態の深刻さに気づいていたようだ。何故なら彼らは真っ先に「逃亡」したのだから。なんという皮肉であろう・・・


以上です。
続いて福島の現状をまとめた
IRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所)の声明です。



IRSN - フランス放射線防護原子力安全研究所
3月26日付 公式声明
Point de situation du 26 mars 2011 à 10h00
http://www.irsn.fr/FR/Actualites_presse/Actualites/Documents/IRSN_Seisme-Japon_Point-situation-26032011-10h.pdf




福島原発に関するフランスメディアの記事の要約、日本語訳



<要約>
第1号機、2号機、3号機は依然とても危険な状態にある。
電線を設置し電機を復旧することには成功したが、冷却システム再開までにはチェック過程が残っている。

・海水に代わり真水の注入を開始したが、海水に含まれていた塩分が冷却を妨げている可能性がある。

・燃料プールに関しては従来の冷却システムが復活し、冷却が続いている。

・第1号機の核燃料はとても大きなダメージを受けている可能性がある。

・第4号機は落ち着きつつある。

・第1号機、2号機、3号機では内部の圧力の増加を防ぐため、放射線物質の放出を伴う開栓が再び実行される可能性がある。

状況は極めて深刻で、沈静化まで数週間から数ヶ月を要するであろう。




以上です。
それではまた後ほど!